表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/76

退屈な日常 ① (画像あり)

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい。


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。


*画像に合わせて髪色と鎧の色に修正をかけました。


あれから、何の変哲もない日々が続いた。


日常はのほほんとしていて、刺激もない。朝起きて、訓練に向かい、昼食をとり、また授業を受ける。

ただそれだけの繰り返しだった。

新しい冒険もなく、危険に晒されることもなく、まるでどこにでもある高校生の学校生活のようだった。


「こんなの、何の意味があるんだか……」


俺は訓練場の隅で、木剣を片手にぼやく。

初心者向けの基礎訓練。

すでに何度も繰り返してきた動きばかりで、特に新しい学びもなかった。

俺のような実戦経験者にとっては、まるで子供の遊びのように感じる。


「もっと実践的な訓練をさせろよ……」


独り言をつぶやきながら、適当に木剣を振る。

その動きはもう体に染みついている。

考えなくても体が勝手に動く。

俺の中で、戦いに対する感覚はすでに完成していた。


そんな退屈な日々の中、ただ一つだけ、俺の平穏を乱す存在がいた。


「獅子堂健二‼ 私はあなたを認めません‼」


鋭い声が響き渡る。

俺がため息をつく間もなく、その人物は俺の目の前に立ちはだかった。


ノヴァリア神聖王国のアリア・ベルモント


ノヴァリア神聖王国は、かつてフランスやイギリス、スペインなどがあった西ヨーロッパに位置する宗教国家だ。

ノヴェリアという女神を信仰し、厳格な戒律と騎士道精神を重んじる。


アリアはその王国の名門、ベルモント家の令嬢であり、聖騎士だという。


正直、どうでもいい。


俺は深いため息をつきながら、目の前の彼女を眺めた。


青色の豪華な騎士鎧。

ドレスアーマで無駄にゴテゴテと装飾されており、実用性と言うよりは見栄えを重視した儀礼用鎧だ。

銀髪の長い髪をなびかせ、美しい顔立ちを持つその姿は、まさに西洋の貴族令嬢といった感じだ。



挿絵(By みてみん)




だが——

コイツは何かと俺に突っかかってくる……


性格が気に入らないとか、態度がなっていないとか、騎士道に反しているとか……

理由は様々だが、とにかく絡んでくる。


「今度はなんだ? 顔でも気に入らなかったか?」


俺は呆れたようにアリアに問いかけた。


「違います‼ いえ……それもありますわね……って違います‼」


「あるのかよ……」


俺は頭を抱えた。


「それでなんだよ?」


俺が尋ねると、アリアは「そうだった」と言わんばかりの表情で答えた。


「やる気が無いなら帰りなさい! 他の方達に迷惑です。目障りです。」


俺はそう言われ、はぁ〜っと大きなため息を吐いた。

そして、片手を振って立ち去る。


「分かったよ……じゃあな。」


そう言いながら背を向けた瞬間、アリアがすかさず立ちふさがった。


「待ちなさい‼」


「なんだよ?」


俺は呆れたようにアリアを見た。


「逃げるのですか? あなたに騎士道精神は無いのですか⁉」


言いがかりも甚だしい。

帰れって言ったのはお前だろに……


「俺は騎士様でもなければ、ご立派な騎士道精神とやらは持ち合わせておりませぬ。」


俺は、一礼しながら皮肉たっぷりにそう言い返す。


「なっ‼ またそうやって私を馬鹿にして‼」


アリアは顔を真っ赤にし、怒りを露わにすると、「私と勝負なさい‼」と喧嘩を吹っ掛けてきた。


俺はいつものことだと思い、大きなため息をわざとらしく吐きながらアリアの方へ向き直る。


アリアは「いきますわよ!」と言いながら剣を構え、正面から真っ直ぐに俺に向かって突き進み、馬鹿正直に真っすぐ剣を振り下ろしてくる。


俺は体をひねって剣を避けると、アリアの手首を掴み、前に引っ張る。

さらに足をかけて彼女を前に転ばせた。


突っ込んで来た勢いのまま、アリアは「ズサァァァ」と音を立てながら前方に滑るように転がる。


俺はそのまま無言でアリアの首筋に剣を添えた。


首筋に剣を感じたアリアは、くやしそうに小さく声を漏らしながら、地面の土を強く握りしめ、悔しげに震えていた。


「閣下は相変わらずアリアには手厳しいですね。」


その声と共に、黒い軍服を着た女性がこちらに近づいてくる。


彼女の名前はイザベリア・フォン・インペラトル。


ドイツとロシアが合併して生まれた様な超巨大軍事国家、インペラトル帝国の第三皇女である。


インペラトル帝国は軍事国家であり、「強さこそが全て」という信念のもとに成り立っている。

すべては強さで決まり、弱き者は容赦なく排除される。

力こそが絶対なる正義とされる国だ。


豪華な装飾が施された軍服をまとった彼女は、長い銀髪をなびかせ、鋭いつり目をしている。

その目には、自分よりも弱い者を見下す傾向がはっきりと表れている。



挿絵(By みてみん)




事実、彼女——イザベリア・フォン・インペラトルは、アリア・ベルモントを見下していた。


イザベリアは優雅な足取りでアリアに近づくと、軽くしゃがみ込み、慈悲すら感じさせるような口調で話しかけた。


「みじめなものですわね。ノヴァリアの騎士様は。」


そう言いながら、彼女はクスクスと笑い、その冷笑はまるで勝者が敗者を嘲るかのような余裕に満ちていた。


アリアはその言葉に、瞬時に怒りの炎を燃やした。

その美しい顔立ちは怒りによって歪み、鋭い目つきでイザベリアを睨みつける。


「黙りなさい‼ この野蛮な異端者め‼」


怒声と共に、彼女の銀色の髪が揺れた。

しかし、イザベリアは怯むことなく、むしろ楽しげに肩をすくめて言った。


「おぉ……怖い怖い。」


彼女は余裕の笑みを浮かべながら優雅に立ち上がり、未だ地べたに膝をついているアリアを見下ろした。

その目には、軽蔑と嘲笑が入り混じっている。


「その異端者に無様に敗北し、地面に這いつくばっているのはどちら様でしょうか?」


ノヴァリア神聖王国——それはノヴェリアという女神を信仰する宗教国家。

彼らは自らの信仰こそが唯一絶対の正義と信じ、ノヴァリア教以外を異端と見なしている。

俺たちのような異教徒を「異端者」と呼び、忌み嫌っている。


アリアは、イザベリアの挑発的な言葉に対し、唇を噛みしめながら耐えていた。

悔しさを滲ませつつも、拳を握りしめ、何かを押し殺すようにして立ち上がる。

その姿は怒りに満ち、彼女の肩は小刻みに震えていた。


彼女は悔しさを噛みしめながらも、何も言わず、ただ鋭い視線をイザベリアに向けると、そのまま踵を返し、静かに立ち去った。


イザベリアは、その様子を満足そうに眺めながら、クスリと笑う。


「これだからノヴァリアの騎士様は面白いのですわ。」


イザベリア・フォン・インペラトルは、どこか楽しげに口元を歪めながら、涼しい顔で軍服の襟を直した。

その仕草は貴族の優雅さと、彼女特有の気品を感じさせる。


彼女はゆっくりと俺の方へ視線を向け、愉快そうに微笑む。

その表情には、何か企みでもあるかのような含み笑いが浮かんでいる。


俺はそんな彼女の様子を見て、深くため息をついた。


「……あまりアリアをからかってやるな。」


俺がそう言うと、イザベリアは微笑を崩さずに、クスクスと笑いながら答える。


「閣下はお優しいのですね。」


その言葉にはどこか挑発的な響きがあった。

俺は眉をひそめ、呆れたように肩をすくめる。


「閣下はやめろ。」


俺がそう言うと、イザベリアは目を細め、まるで待っていたかのように楽しげな笑みを浮かべた。


「では、次期皇帝陛下とお呼びすれば宜しいですか?」


彼女はクスクスと笑いながら言う。

その目には、からかいの色が浮かんでいた。


イザベリアは、自分よりも強い俺を敬い、「閣下」と呼んでいる。

そして、ことあるごとに俺を皇帝の座へ押し上げようと画策している。

彼女にとって、俺がインペラトル帝国の皇帝になることが望ましいのだろう。


だが、俺にその気はまったくない。


「冗談はよせ。」


俺は冷めた口調で言い放つ。


イザベリアはそれでも楽しげな表情を崩さず、俺の反応を楽しんでいるかのようだった。


「冗談ではありませんわよ、閣下。」


彼女はあくまでも本気でそう言ってのける。

俺は再び深いため息をつくと、訓練所を後にすることにした。


こんな一癖も二癖もある存在ばかりに囲まれて、正直、この先が思いやられる。


俺はゆっくりと歩きながら、今後のことを考えずにはいられなかった。



画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい。


いいね!・コメント・ブックマークの登録をよろしくお願いします。

レビューや感想も気軽に書き込んで下さい。

やる気の活力になります。


X(旧Twitter)の方もよろしくお願いします。

拡散・宣伝して貰えれば嬉しいです。

https://x.com/Dx8cHRpuIBKk7SW

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ