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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園
46/61

相席

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

黒野と御剣が席に着くのを確認した俺は、やや呆れ気味に口を開いた。


「それで、何しにきたんだよ?」


俺の問いに、黒野はいつもの無表情のまま答えた。


「飯を食いにな。それから…自己紹介だな。」


そう言いながら黒野は、俺の方に軽く手を向けて紹介を始めた。


「こいつは獅子堂 健二。二組の男子だ。そして…」


「御剣 葵だろ。」


俺は黒野の言葉を遮りながら、隣の御剣を一瞥する。


「まぁ…知ってるわな。」


「ふむ、有名で俺の嫌いなタイプだからな。」


わざとぶっきらぼうに言ってみると、御剣は苦笑いを浮かべながら軽く頭を下げた。


「よろしくね、獅子堂君。」


なんとも柔らかい挨拶だが、俺は特に気にも留めず席にもたれ込むと、天井を見上げながら次の質問を投げた。


「それで、お供はどうしたんだよ?」


俺のぶっきらぼうな問いに、黒野は短く答える。


「全て断った。」


御剣も少し肩をすくめながら苦笑いで言った。


「僕も同じかな。」


「お前らだったら選びたい放題だろうに。」


俺がそう言うと、御剣がすかさず返してくる。


「それは獅子堂君も同じじゃないかな。」


「はぁ? 俺がか?」


言い返そうとしたその時、不意に女性の声が割り込んできた。


「あの…ご注文をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


視線を声の方に向けると、苦笑いを浮かべた店員が立っていた。

どうやら黒野と御剣を案内して、そのまま俺たちの様子を見守ってくれていたらしい。


「わりぃ…とりあえず生三つでいいか?」


俺は二人に目を向けて確認する。


黒野は軽く頷いて、「それでいい。」と答える。


御剣も柔らかい口調で、「僕もそれでいいよ。」と同意した。


「じゃ―生三つで。」


俺がそう注文を告げると、店員は「かしこまりました。」と丁寧に一礼して席を離れていった。


「それで、獅子堂はなんでこんな所に一人でいるんだ?」


黒野が問いかけてきた。俺はため息をつきながら、その経緯を淡々と語った。


「寮と言われた屋敷をもらったんだけどさ、中は完全にもぬけの殻でさ。家具も何もない。準備や手配に追われていたら、こんな時間になっちまった。それで、もう何もやる気が出なくなって、とりあえず飯だけでも食おうと思ってフラフラしてたら、目についたここに入ったんだ。」


話を聞いた黒野は肩をすくめ、苦笑いを浮かべながらポケットからタバコを取り出した。

そして、火をつけて一口吸い込むと、深い吐息をついた。


「みんな似たようなもんだな……。」


それを聞いた俺たち三人は、ほぼ同時に「はぁ〜」と大きなため息をつき、肩を落とした。


「一本くれないか?」


俺が頼むと、黒野は無言でタバコの箱を差し出してきた。

それを一本取り、指先に炎を灯して火をつけ、一服する。

肺に煙が広がり、少しだけ気持ちが軽くなるような気がした。


「それにしても、お前と御剣が一緒にいるなんて珍しいな。」


俺はそう言いながら黒野を見やった。

その問いに、黒野は怪訝そうな顔をして聞き返してきた。


「どういうことだ?」


「お前らって、真逆の性格だろ。腹黒と正義感。どう考えても相容れないだろうが。」


俺の言葉に黒野は一瞬黙り、やがて苦笑しながら肯定した。


「確かにな。」


そう言うと、黒野はポケットに手を突っ込み、少し体を反らせながら話し始めた。


「商業区に来た時のことだ。妙に人だかりができててな、何事かと思ったら……こいつが女子に囲まれてた。」


そう言いながら、黒野は隣にいる御剣を親指で指さした。


「俺は無視してその場を通り過ぎようとしたんだが、こいつが『黒野君、助けてぇぇ!』って飛びついてきやがったんだ。」


黒野は険しい目で御剣を睨みつける。


一方、御剣は少し慌てた様子で俺に向き直り、何かを訴えるような表情を浮かべた。


「酷くないかい? 僕だって必死だったのに、気づいてたのに助けてくれないんだよ!」


その声に、俺は呆れたように肩をすくめ、冷たく言い放った。


「それはしょうがない。御剣が悪い。」


「酷ッ!」


御剣はショックを受けたように叫び声を上げるが、俺は意に介さずタバコを吸い続けた。

隣では黒野が小さく笑い、再び煙を吐き出している。


「女子に囲まれるなんて、御剣らしいって言えばらしいけどな。それで、どうやって切り抜けたんだ?」


「そりゃもう必死だよ! 黒野君が全然助けてくれないから、自力で何とか脱出したんだ。」


御剣は憤慨しながら答える。

その姿に、俺も黒野も思わず笑ってしまう。


「それで、結局ここにたどり着いたってわけか。」


「そういうことだ。」


会話が途切れると、一瞬の静寂が場を包む。

店内には他の客の話し声や料理を運ぶ音が聞こえるだけだった。

それぞれが思い思いの考えにふけりながら、タバコの煙が静かに漂う。


「お待たせしました〜。」


俺たち三人が物思いにふけっていると、注文していたビールが運ばれてきた。

テーブルの上に並べられた冷たいジョッキを見て、俺は手を伸ばした。


「とりあえず乾杯するか。」


そう言ってジョッキを持ち上げた俺は、二人を見回して一言付け加えた。


「とりあえず……入学おめでとう。乾杯。」


ジョッキを掲げたまま、黒野と御剣に軽く目配せをする。

黒野も御剣も「乾杯。」と声を揃え、ジョッキを持ち上げた。

ぶつけることなく、軽く傾けてそれぞれが口をつける。


冷えたビールが喉を通り抜ける感覚に、思わず微笑みがこぼれる。


「あぁぁぁ、うめぇぇぇ……癒されるぅぅぅ!」


ビールを飲むと、さっきまでの疲れが一気に吹き飛んだ気分になり、思わず声に出してしまう。


「オヤジか。」


それを見ていた黒野が俺を茶化すように言う。


「うるせぇぇぇ。いろいろとまいってるんだよ!」


俺はすかさず返す。

その言葉に黒野は肩をすくめ、苦笑しながら再びジョッキに口をつけた。


俺たちはその後、愚痴を言い合いながらビールを飲み続けた。

そして、適当にメニューを眺めながら料理を注文する。

次々と運ばれてくる料理をつまみつつ、軽口を叩き合いながら時間は過ぎていく。


「こういうのも、たまには悪くないな。」


黒野がぽつりと漏らした言葉に、俺も御剣も無言で頷いた。




しばらく飲み食いした後、黒野がふと口を開いた。


「お前たちはこれからどうするんだ?」


その問いに、俺はジョッキを片手に持ちながら適当に答えた。


「特に予定は無い。」


御剣も同様に、特に決まっている予定は無いらしく、軽く首を振って同意した。

それを聞いた黒野は、どこか思わせぶりな笑みを浮かべながら言葉を続けた。


「なら少し俺に付き合ってくれないか?」


その言葉に、俺は思わずニヤリと笑い、鉄板ネタで返す。


「だが断る!この俺様の最も好きな事の一つは、自分より強い奴に『NO』っと断ってやることだ!」


ドヤ顔で言い放つと、黒野は少し驚いたような顔をした後、ニヤッと笑って返した。


「獅子堂は無理か。」


そう言って今度は御剣に視線を向ける。

御剣は特に気にする様子もなく、軽い調子で答えた。


「特に予定も無いし暇だから、いいよ。」


黒野に付き合うことをあっさりと了承する御剣。

それを聞いた俺は驚愕し、思わず声を上げた。


「なにぃぃぃ!! スルーだと!?」


俺の抗議を無視するように、黒野は薄く笑いを浮かべながら言った。


「俺が最も好きな事の一つは、自分が有利だと思ってる奴に『NO』っと嘲笑ってやることだ。」


ニヤニヤしながら挑発する黒野に、俺は悔しそうな表情を浮かべるしかなかった。


「こいつら……!」


俺はジョッキを持ちながら二人を見回し、何か反撃しようと考えた。


「さて、冗談はさておき本題だ。少しダンジョン攻略を手伝ってくれないか?」


黒野はそう言いながらタバコを吹かしていた。


「それはお前の部下になれってことか?」


俺が真剣な表情で黒野に聞くと、黒野は首を振って否定した。


「別にそんな意味はない。ただ、周辺地域にダンジョンが増えたのと、開拓が進んでいないから、協会からの協力依頼だ。」


黒野はそう言って言葉を濁した。


俺は目を細め黒野を見つめた。


「獅子堂、ここから先は俺に協力するか否かだ。」


黒野は肘をついて俺の顔をニヤついた顔で見た。


「わっかったよ…ただし、気に入らないと思ったら全力でぶっ潰すからな。」


俺は舌打ちして答えた。


「あぁ。それで構わない。もとよりそうならない様に動いてるつもりだからな。」


黒野はそう言って笑った。


「御剣はどうなんだ?」


俺が聞くと、御剣は口いっぱいにパスタをほおばりながら答えた。


「ぼおぼはんん。」


「食ってからしゃべれ‼」


俺は思わずツッコんでしまった。


御剣はパスタを飲み込むと「僕は暇だから良いよ。」っと答えた。


「なら暇な時でいい。俺からの依頼で来たっと協会の受付に言えば依頼を紹介して貰える。」


黒野はそう言って俺たちを見た。


「で、俺たちは具体的には何をすればいいんだ?」


俺が聞くと黒野は答えた。


「簡単に言えばダンジョンの殲滅。ダンジョン内をくまなく探索して素材や資源を回収し、可能ならダンジョンコアの回収、無理なら完全破壊だな。」


黒野はそう言いながらビールを飲んだ。


「コアの回収ってどうやるの?」


御剣が黒野に聞いた。


「コアに触れて一定量魔力を注ぐと活動が停止する。だが、触れると拒絶反応を起こすから無理そうなら破壊だな。」


黒野が答えると、御剣は「へぇ〜。」っと感心したように聞いていた。




「さて獅子堂。一つ聞きたい事がある。」


黒野は普段の軽い調子とは打って変わって、真剣な表情で口を開いた。


「最近、上位のダンジョンで人型の悪魔や、知性を持った魔人が出ているって話を知ってるか?」


その質問に、俺は眉をひそめた。


「いや……聞いたことが無いな。」


正直に答えると、黒野は腕を組み、難しい顔で考え込む。

その様子は、普段の冷静さに加え、少し焦りが混ざっているように見えた。


「心当たりは無いか……。」


そう呟きながら、黒野はゆっくりと視線を天井に向ける。

まるで何か見えないものを探しているようだ。


俺はその様子をじっと見つめた後、ふと考えを巡らせ、口を開いた。


「お前の意見を参考にするなら、思い当たる節が無いわけでもない。」


俺の言葉に、黒野は視線だけを動かしてこちらを見る。

目は探るように鋭いが、どこか期待するような色も含まれていた。


「アニメやゲームで、後半になって登場するやつらを思い出してみろよ。」


そう続けると、黒野は一瞬だけ目を細め、すぐに小さく頷いた。


「あぁ……なるほど。そういうことか。」


その納得したような呟きは、自分の中で何かを結びつけた証拠だろう。


「で、その辺りの説明はしてくれるんだろうな?」


俺は念を押すように問いかけた。

何か企んでいるのなら、まずは詳細を聞かせてもらわないと協力するにも協力出来ないからな。


「そうだな……。」


黒野は口元に手をやり、一瞬考え込む素振りを見せた後、俺に向き直った。


「なら、俺はそいつらの素性を調べればいいんだな。」


そう確信するように言葉を続けると、黒野は軽く笑みを浮かべながら頷いた。


「頼む。」


その一言には、信頼と期待が込められているようだった。


その時、横を見ると御剣が口いっぱいにパスタを頬張りながら、首を傾げている。

疑問の表情を浮かべているものの、口の中がいっぱいで何も言えない様子だ。


「お前は黙って飯を食ってろ。」


俺は呆れながらそう言い放った。

それでも御剣は気にする様子もなく、もぐもぐとパスタを飲み込むと、再びフォークを持ち上げた。

何とも言えないこの空気に、俺は小さくため息をつくしかなかった。



とはいえ、上位のダンジョンに悪魔や魔人か……

いろいろと面白くなってきたな。


俺は顔をニヤつかせながら、少しばかり期待していた。

ダンジョンに住まう単調な魔物たちには正直、飽き飽きしていた。

それが少しばかり、いや……かなり危険なダンジョンに変わろうとしている。

どう考えても命の危険は増すだろうが、その分だけ楽しみもある。


「楽しみだな……。」


そう考えながらビールを飲んでいると、黒野が席を立った。


「俺の用も済んだから行くな。」


簡潔にそう言い残して、黒野はさっさと店を出ていく。

その直後、御剣もパスタを食べ終えたらしく、フォークを置いて小さく一礼した。


「ご馳走様でした。」


それだけを残して、あっさりと店を後にした。


俺は残されたテーブルを見回し、ぼんやりと物思いにふける。

ダンジョンの新しい展開に期待を膨らませながら、しばらく考え込んでいたその時だった。


「お会計をお願いします。」


店員の一言が現実に引き戻す。


「……は?」


状況を把握するのに数秒かかったが、俺はすぐに理解した。

黒野も御剣も、きれいに俺を置いて行きやがった。


「あいつらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


俺の叫び声は、店内に響き渡った。



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