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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

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1年2組

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

「そうですね、獅子堂様から意見が無いなら私から幾つか。」


御影摩耶がそう切り出した


「まず、首塚ダンジョンが崩壊に至った原因は何なのでしょうか?」


「その話か……。」


黒野は少し考える素振りを見せた後、語り始めた。


「あの、『奈落の底なし穴』は昔から有名な場所だったんだろ?」


黒野が御影摩耶に尋ねると、彼女は頷いて答えた。


「知る人は知る有名な場所ですね。」


そのやり取りを聞きながら、俺は全く知らなかった。


「なんなんだ、その奈落の底なし穴ってのは。」


俺が尋ねると、黒野は説明を始めた。


「奈落の底なし穴ってのは、昔、あの処刑場で使われてた廃棄場だ。処刑場の山の中腹にある洞窟に底の見えない大穴があったそうだ。そこに処刑された罪人達の遺体を投げ捨てていたらしい。」


その話に、俺は思わず眉を寄せた。


「首塚ダンジョンはその奈落の底なし穴がダンジョン化した場所なんだ。」


「ウゲッ……最悪にヤバい場所じゃないか。」


俺は思わず声を上げた。


「それで、原因ってのは何だったんだ?」


俺が尋ねると、黒野は少し考えた後に言った。


「聞いた話になるが、良いか?」


「あぁ。」


黒野の話を要約するとこうだった。


奈落の底なし穴は昔から畏れられ、祟り場として畏怖の念を集めていた。

そのため、昔の人々は生贄や御子を人柱として捧げ、祈りや儀式として供養していた。


ダンジョンが出現したその際、供養のための祈りや儀式が”結界”として具現化し、当時のスタンピードを防ぎ、今日に至るまで首塚ダンジョンを封印していたという。

また、橘家の祈祷も結界を維持し続けた要因ではないかということだった。


「つまり、溢れるはずだった魔力が結界によって蓋をされ、ダンジョン内に滞留し続けた結果、オーバーフローを起こしてしまったわけだ。」


黒野はそう言って話をまとめた。その説明を聞いて、御影摩耶が口を開く。


「つまり、結界で封印されているダンジョンには、同じような現象が起こる可能性がある、ということでしょうか?」


その問いに、黒野はすぐさま首を横に振った。


「いや、それはないと思う。」


黒野はそう前置きし、さらに説明を加えた。


「強力な結界で最初のスタンピードから封印し続けている場合なら別だが、通常の結界程度ではむしろ結界の方が壊れるだろう。魔力の蓄積が限界を超える前に、結界自体が耐えきれなくなるからな。」


黒野の話を聞きながら、俺は頭の中でその光景を思い浮かべた。

ダンジョン内に溜まり続ける魔力、それを抑え込む結界、そして蓄積が限界を超えた時の破壊的な結果――。


「なるほどな……。」


俺はそう呟きながら、首塚ダンジョンが抱える異常性を改めて理解した。


「さてと、いろいろと話したいことはあるだろうが、時間がなさそうだな。」


黒野はそう言って、話を締めくくろうとした。

時計を見ると、昼を過ぎており、式も終わり解散の時間だった。


「寮の割り振りと案内の時間だな。」


俺は立ち上がりながら言った。

その時、どうしても聞いておきたいことがあり、黒野に問いかけた。


「最後に聞きたいことがある。黒野、お前の目的は何だ?」


黒野は一瞬思案するように考え込み、そして答えた。


「また、曖昧な質問だな。」


「聞き方が悪かったか……ダンジョンマスターとしてどうしていくつもりだ?」


「領域の拡大だな。」


黒野は即答した。

その答えに俺は納得するような、しないような気分だった。


「まぁ、そうだな。そうなるわな……。」


しかし、それでは俺が本当に聞きたかった答えではなかった。


「獅子堂が聞きたいのは、そんな話じゃないんだろ?」


黒野は俺の考えを見越したように言った。


「あぁ。」


「獅子堂。お前はこの世界がどう見える?」


「物語でよくある貞操逆転世界のダンジョンものって感じかな。」


「そうだな。簡潔に言えばそんな感じだな。」


「つまり、そんなことが聞きたいわけじゃないと……。」


「あぁ。」


俺は少し考え込んでから答えた。


「酷く偏った世界かな……。」


「理由は?」


「女性しか産まれない世界。1000分の1は異常すぎる。その理由が男子の金〇ときた。ありえないだろ?俺はそう思ってる。」


「なるほどな……。なら原因は何だと思ってる?」


「さぁ〜な。」


「考えたことがないと?」


「あぁ……その辺は、国の偉いさんの仕事だろ?」


「なるほどな……。」


「黒野は理由を知ってるのか?」


「一応はな。」


「だったら……。」


俺が教えてくれと言う前に、黒野は手で制して止めた。


「少しは自分で考えて探してみるといい。」




俺は黒野と話を終え、部屋を出た。


「正直、疲れた……。」


あれだけ衝撃的な話を次々と聞かされたのだから無理もない。

頭の中は情報で溢れかえり、整理しようにもどこから手をつければいいのか分からない。

俺は溜め息をつきながら廊下を歩き、教室へと向かった。


黒野の話は衝撃的だった。

俺の話を笑うことなく受け止め、さらには自分も同じ転生者だと言った。

ただ、その生い立ちは俺よりもはるかに過酷で、衝撃的な内容だった。


「正直、俺なら折れてたな……。」


黒野はその過酷な生い立ちを経て、ダンジョンマスターとなった。

おそらく、この世界の真実に一番近い場所にいて、中心的な存在となるのは明らかだ。


「あいつは俺の敵にはならないと言ったが…。」


その言葉をどう受け取るべきか。

真実味があるように思えたが、完全に信用するのは早計だ。

何が目的なのか、いまだ分からない。

考えれば考えるほど、疑念と苛立ちが募ってくる。


「あぁぁぁぁぁ、イライラする……。」


思わず髪をかきむしりながら考え込む。

いや、待てよ……。


黒野は自分の生い立ちを語っただけで、肝心なことは何も話していないのではないのか?

この世界が女性だらけになった理由を知っていると言ったが、その理由を俺に教えてはくれなかった。


「やられたか……はぐらかされたのか……。」


疑念が確信に変わるような気がして、俺の中の苛立ちはさらに膨れ上がった。


「あぁぁぁぁ、ちくしょぉぉぉぉ!」


思わず叫び声をあげてしまった。

廊下に響くその声に、少しだけスッキリした気がしたが、それでもこのもやもやは完全には消えない。


「くそ……何が目的なんだよ……。」


俺はそう呟きながら、再び教室に向かって歩き出した。


俺は教室に着き、無駄に豪華な装飾が施された扉の前に立った。

高級ホテルの入り口か何かかと思うほどだが、ここは確かに教室のはずだ。


教室の後ろから静かに入ろうとした俺は、開いた扉を一旦扉を閉め、プレートを確認した。


「1-2って書いてるな……。」


間違いない。

ここは俺の教室だ。


恐る恐るもう一度ドアを開けると、目の前に広がる光景に思わず叫んでしまった。


「……おかしいだろうが!」


教室の中には豪華なソファーとテーブルが並んでいる。

いや、それは百歩譲って許容するとしても、ベッドはおかしいだろうが!

しかもキングサイズで無駄に豪華なやつだ。


「机は……あるな……。」


周囲を見回すと、確かに机は並んでいた。

しかし、それもまた場違いなほど高級感漂うデスク机だ。


教室は広い。

しかし、その三分の一が仕切られて、まるで個室のように変えられている。

パーテーションまで設置されていて、教室本来の目的が完全に無視されている。


「教室に仕切りなんて不要だろうが!」


ツッコミどころが多すぎて、どこから手をつけていいのか分からない。


「もー、ツッコミどころ満載過ぎだろ……。」


教室の入り口で呆然と立ち尽くしていると、どこか柔らかな声が俺に向けられた。


「獅子堂君、やっと来たのですね。」


その声にハッとし、視線を声のする方に向ける。

教壇の前にスーツをきっちりと着こなした女性が立っていた。

すらりとした体型に、整った顔立ち。

髪は肩にかかるほどの長さで軽く巻かれており、落ち着いた大人の雰囲気を醸し出している。


――おそらく、この人が担任の先生なのだろう。


「……あぁ、悪い。ちょっと道草食ってた。」


俺は適当に言い訳を口にした。

こんな変な教室を目の前にしたせいで、動揺しているのを悟られたくなかったからだ。


「なら、早く席に着いてくださいね。他の皆さんも待っていますから。」


そう言って彼女はニッコリと微笑む。

その笑顔には妙な圧力があって、逆らう気になれなかった。


「あぁ……分かったよ。」


返事をしながら教室の中を見回す。

だが、教室内を見渡しても、空いている席が見当たらない。

豪華なソファーやテーブル、パーテーションで仕切られたスペースばかりが目につく。


「俺の席って、どこなんだ?」


少し困惑気味に担任の先生に尋ねると、彼女は俺のすぐ目の前を指差した。


「獅子堂君の席は、目の前の特別席ですよ。」


――特別席?


担任の言葉に、俺は思わず眉をひそめた。

指差された先を見ると、そこには豪華なデスクとデスクチェアーがドンと据えられている。

まるで社長室に置かれているような黒い本革製の椅子。

机も一般的な学校の机とは程遠い、高級ホテルのラウンジに置かれていそうなガラス天板のL字型のデスクだ。


「……マジかよ。」


思わず口から漏れる呟き。呆れ半分、諦め半分の気持ちで足を動かし、そのソファーに向かう。


ソファーに近づくと、なんとも言えない圧を感じた。

もはや学校の席とはかけ離れた豪華さが、むしろ居心地の悪さを生んでいた。


俺は椅子に腰を下ろしながら、周囲の視線を感じた。

教室中の女生徒たちが一斉にこちらを見ている。

彼女たちの目線には、興味、探るような視線、そして明らかに楽しんでいるような雰囲気が混じっていた。


「ここまで注目されると、さすがに落ち着かないな……。」


そんなことを心の中で呟きながら、視線を落として机の上を見た。

机の上には新しい教科書やノートが並べられており、どれも新品のままだ。


「では、皆さん静かにしてください。」


担任が教壇に立ち、軽く手を叩く。

その声と仕草で教室が静まり返った。


「本日は入学式です。改めて、ご入学おめでとう御座います。まずは簡単に自己紹介をしていただきますね。そして、獅子堂君に少しだけ時間を取って、皆さんと交流を深めてもらおうと思います。」


――交流を深める?


その言葉に俺は不安を覚えた。

なぜ俺だけ特別にそんな時間を設けられるのか。

担任の意図が全く分からなかった。


「まずは私から自己紹介をいたしますね。」


担任の声が静かな教室内に響き渡る。

彼女は教壇に立ち、軽く一礼すると、落ち着いた口調で話し始めた。


「私はこのクラスの担任を務めます、風見(かざみ)風子(ふうこ)です。皆さんが快適に学べる環境を作るのが私の仕事ですので、困ったことがあれば遠慮なく相談してくださいね。」


風見先生の柔らかな笑顔に、生徒たちは自然と引き込まれていく。

彼女の存在感と気品のある立ち振る舞いは、初対面の緊張感を和らげる効果があった。


「私もかつてAランク冒険者として活動していた経験があります。この学園では皆さんを導く立場となりますが、冒険者としての心得や知識をお伝えできるよう努めます。」


その言葉に教室内が少しざわめいた。

風見先生が冒険者だったという話は、誰もが初耳のようだった。


「特に獅子堂君。」


突然名前を呼ばれた俺は、身構えるようにして彼女を見た。


「あなたのように特殊な立場にある方は、この学園でも重要な存在です。他の皆さんにとっても、多くを学べる機会になるでしょう。」


教室中の視線が一斉に俺に向けられる。

その好奇心と探るような眼差しに、軽く溜め息をつきながらも視線を逸らした。


「それでは簡単に自己紹介をしていただきます。皆さん、名前と何か一言、特技や趣味などを教えてください。」


風見先生が促すと、前列の生徒から順番に立ち上がり、自己紹介が始まった。


次に生徒たちの自己紹介が始まった。

前列から順番に、名前や趣味、特技を話していく。

生徒たちは皆、どこか誇らしげな様子で話し、周囲も楽しそうに聞いていた。


「さて、次は獅子堂君ですね。」


風見先生が俺の名前を呼ぶと、教室の視線が一斉にこちらに集まる。


俺は一度深呼吸をしてから立ち上がり、簡単に言葉を選んだ。


「獅子堂健二だ。」


最低限の挨拶を済ませて席に戻る。

視線が自分に集中するのは落ち着かない。


「素敵な挨拶ですね。」


風見先生のフォローが入るが、正直なところ全く素敵には感じられない。




「では、私からもう少しだけ補足を。」


全員の自己紹介が終わった後、風見先生が再び教壇に立った。


「この学園では、特別な関係を築くことも重要な課題の一つです。特に男性である獅子堂君にとっては、ここでの生活が少し特殊に感じられることもあるかもしれません。」


その言葉に教室内がざわつく。

女生徒たちが互いに目配せをしながら、興味津々な表情で俺を見ているのが分かった。


「ですが、ここにいる皆さんが未来の探索者として、それぞれの役割を全うできるよう支えること。それがこの学園の目的でもあります。」


風見先生の声は穏やかだが、その言葉の裏には何か含みを感じさせた。


「獅子堂君も、どうぞ自分のペースで学園生活に慣れてください。そして、困ったことがあればいつでも相談してくださいね。」


彼女の優しい笑顔に、俺は軽く頷く以外の反応ができなかった。


「それでは、今日はここまでとします。」


風見先生が話を締めくくると、生徒たちは一斉に立ち上がり、各自荷物を片付け始めた。

その中で、俺はふと自分がこれから過ごす学園生活の行方に、不安と期待の入り混じった感情を抱いていた。



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