黒野 時夜
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい
キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。
「さて、どこから話せばいいやら……。」
黒野は額に手を当て、思案するような表情を浮かべた。
その様子を見ながら、俺は思った。
こいつは何か真実に近いものを知っている――そう確信せざるを得ない。
黒野は、俺の話を否定もしなければ、笑い飛ばしもしなかった。
普通なら荒唐無稽だと一蹴されるはずだ。
それをせず、むしろ自分の知る情報と照らし合わせているようだった。
明らかに俺の知らない何かを知っている。
お互いが黙ったまま思考を巡らせている中で、御影摩耶が口を開いた。
「とりあえずは、時夜様のお話をすれば宜しいのでは?」
「俺の?」
「はい、一から全部話そうとすれば情報量が多すぎます。とりあえず「黒野時夜」についてお話すれば宜しいかと。」
そう言うと、御影摩耶はどこから取り出したのか分からないが、コーヒーカップを手に持ち、立ったまま優雅に飲み始めた。
「それもそうだな。」
黒野は御影摩耶に頷き、話し始めた。
俺はコーヒーを飲みながら耳を傾けた。
「まずは、俺の本当の名は、御剣 葵だ。」
その言葉を聞いた瞬間、俺は飲んでいたコーヒーを思わず吹き出してしまった。
「汚ねぇぇぇぇ‼」
黒野がとっさに叫ぶが、その声に、俺はゲホゲホと咳き込みながらも言い返した。
「お前がいきなり変なこと言うからだろうが‼」
俺たちの騒ぎを見て、御影摩耶は微笑を浮かべながら静かにコーヒーを飲み続けていた。
その優雅な態度が、逆に俺を苛立たせた。
絶対知っててやっただろうと。
黒野は軽くため息をつき、少しだけ笑みを浮かべながら言った。
「まぁ、そうなるよな。驚くのも無理はない。」
「驚くも何も、御剣葵は講堂にいただろ。俺の横でのほほんと座ってたじゃないか。」
俺は混乱したまま、黒野に問いかける。黒野は短く頷いた。
「そうだな。」
「じゃあ何か、あいつは影武者か何かか?」
「いや、違うが。」
「なら双子だったのか?」
「似てないだろ?」
「似てないな……別人みたいだし……。」
俺の疑問に対して、黒野はどれも否定しつつ淡々と答える。
その冷静さに逆に苛立ちを覚えつつ、俺はさらに追及しようとしたが、黒野が片手を上げて制止した。
「まー落ち着け。ひとまずは話を最後まで聞け。」
その言葉に、渋々ながらも俺は口を閉じ、話を聞くことにした。
黒野時夜によると、彼は御剣葵としてこの世界に転生してきたらしい。
その際、自分が転生者であることは理解していたが、前世については朧気で何も思い出せなかったという。
「御剣家に転生したといっても、俺の心境はお前と似たようなものだった。ただ、俺がいたのは『御剣家』という豪華な鳥かごだった。それくらいの違いだ。」
黒野は淡々と話していたが、その言葉からはどこか諦めに似た感情が滲み出ていた。
御剣家の名にふさわしい豪華な生活の裏で、彼が受けてきた訓練は拷問と言っても過言ではないほど厳しいものだったらしい。
俺はその話を聞きながら、さすがに同情を禁じ得なかった。
10歳の時、黒野――いや、御剣葵は初めてのダンジョンとして「関東大刑場跡地 首塚ダンジョン」に向かったという。
「なんでそんな危険な場所に向かったんだ?」
俺が尋ねると、黒野は淡々と答えた。
「人殺しの覚悟と人の恐怖を教えるためだ。それと、橘家の依頼で首塚ダンジョンの調査も兼ねていたらしい。もっとも、その時は俺自身は知らなかったがな。」
後で知った話だが、首塚ダンジョンの瘴気が濃くなっていることを調査するため、御剣家当主たちは葵を含む護衛と共に現地に向かったらしい。
その中で、葵たちが入ったのは「首塚ダンジョン」そのものではなく、副次ダンジョンだった。
「副次ダンジョン?」
「首塚ダンジョンから漏れ出た瘴気で生成された小規模なダンジョンだ。元々、俺たちはそこを無難に攻略して、問題がなければ当主たちが本体を調査する予定だったんだが……。」
黒野はそこで少し言葉を切り、深く息をついた。
「予定は狂った。」
そう言って話を続ける。
副次ダンジョンを攻略中、葵は幽鬼に斬られ、呪いを受けてしまった。
本来であれば市販の解呪薬で十分対処できるはずの呪いだったが、葵が受けた呪いは重度のものだった。
「原因は首塚ダンジョンのオーバーフローだろう。」
黒野はそう断言した。
呪いを受けたことで、葵の魂は分裂したという。
本来表層にあった葵の感性――つまり幼いながらも純粋な人格と、奥底に眠っていた前世の魂が切り離されたのだ。
「年相応に感じていた違和感が、呪いを契機に爆発したようなものだ。」
さらに悪いことに、葵の前世の魂は葵たちを襲撃してきた御剣刀祢の手によって攫われてしまった。
「御剣刀祢?」
「御剣家に縁ある存在だが、詳しい話は後だ。」
そう言って黒野は煙草に火をつけ、続ける。
「こうして、葵の魂は常世と幽世の間で分裂してしまったわけだ。」
黒野の話を聞きながら、俺はこの複雑な状況に頭を抱えた。
御剣葵の転生の秘密、そして魂の分裂――話が進むにつれ、俺はこの世界の裏にあるさらなる謎を感じずにはいられなかった。
「正直お腹いっぱいだ。」
俺は天井を見上げながら呟いた。
その言葉には、これ以上の情報を詰め込む余裕がないという疲労感が滲んでいた。
黒野も苦笑いしながら頷く。
「だろうな。俺も整理しながら話してるからな。」
そう言いながら、黒野は御影摩耶に声をかけた。
「摩耶も補足や気になる点があったら遠慮なく言って欲しい。」
「畏まりました。」
御影摩耶は軽く一礼し、黒野が再び話を続ける。
「刀祢によって幽世に攫われた前世の葵の魂は、そこで黄泉と出会った。」
黒野は静かに説明を続けた。
刀祢と黄泉の会話から、首塚ダンジョンが自壊しかかっていることが判明したという。
そして魂だけの存在だった葵を、黄泉は魔力精神霊体――いわゆる"スピリチュアルボディー"を精製したらしい。
「精神霊体?なんだそれは?」
俺の疑問に、黒野は簡潔に答えた。
「要は魔力で出来たアバターのようなものだ。」
なるほど、何となく理解しつつ話を聞き続けた。
ともあれ、前世の姿で葵は目覚めたらしい。
それが40近いオッサンだったとか。
その話を聞いて、御影摩耶はぽつりと漏らした。
「時夜様は私たちと近い年齢なのですね。」
その発言に、場が一瞬凍りついた。
御影摩耶自身も、口に出してから自分が自爆したことに気付いたらしい。
黒野は呆れた表情で摩耶を見て言った。
「摩耶……自分で自爆してるぞ。」
御影摩耶は黒い笑顔を浮かべながら応じる。
「2、3発殴っても良いですか?」
その言葉に、俺と黒野は息を揃えて突っ込んだ。
「勝手に自滅『自爆』しただけだろうが!」
その場の空気は一気に和やかになり、重苦しい話から少しだけ解放された気がした。
黒野は話を続けた。
前世の姿で目覚めた葵は、刀祢に「誰だこのオッサンは」と言われてカチンときたらしい。
その怒りに任せて周囲の魔力を吸収し、見た目を変えようとしたと。
「その時、現世の肉体と一時的に繋がったんだ。」
黒野はそう語った。
しかし、肉体はそれを拒絶し、結果として彼は現世から追い出された。
その先で、膝を抱えて泣きじゃくる幼い自分を見つけたという。
「その子供が、今の葵だ。」
葵(前世の魂)は幼い自分を抱き上げ、現世に帰した。
そしてその瞬間、自分が完全に今の葵と決別したことを理解したという。
「そして、吸収した魔力を使って今の姿に変わったんだ。」
黒野がそう語る言葉に、俺はついていけなくなりつつあった。
いや、話があまりにも荒唐無稽すぎて、理解しようという気が起きなかったのかもしれない。
俺は自分の気持ちを落ち着けるため、コーヒーを一口飲んでから、再び黒野の話に耳を傾けた。
黒野の今の姿は、前世で使っていたゲームのキャラクターをイメージしているらしい。
そのキャラの名前が「クロノス」だった。
そして、この世界観に合わせて「黒野時夜」という名前に変えたのだそうだ。
「この時、俺は自分のことを、葵の残りカスみたいな存在だと思ってた。」
黒野は苦笑いしながら言った。
時夜と黄泉、そして刀祢の三人は、首塚ダンジョンの魔力飽和を何とかするため、ダンジョンコアに向かったらしい。
しかし、扉を開けた瞬間、目の前に広がっていた光景に愕然とした。
「メルトダウン寸前の原子炉の中みたいだった。」
黒野は両手を上げ、当時の自分を再現して見せた。
「俺でもそうするだろうな。」
俺はその場面を想像しながら思わず頷いた。
しかし、その時、黄泉が発破をかけてきたという。
「何とかしろ、とさ。」
その言葉に、時夜はイラっとして、溜まっていた魔力飽和液を全てアイテムBOXに収納したらしい。
その時、黄泉は必死で時夜の魂を守っていたと、後から聞かされたらしい。
「そして、その瞬間だった。俺は前世の、自分の死に際を思い出したんだ。」
黒野の声が少し低くなった。
「前世、俺はゲームクリエイターだった。『ダンジョンズドミニオン』をプログラム開発していた。」
その言葉に、俺は改めて驚きを隠せなかった。
この世界と、黒野の前世が開発したゲームがどう繋がっているのか――その謎がさらに深まった気がした。
「ちょっと待て!ってことはお前がこの世界を創造したのか!?」
俺は慌てて黒野に問いかけた。
しかし、黒野は即座にキッパリと否定した。
「いや。」
「じゃあ、この世界は……」
俺が続きを問おうとした時、黒野ははっきりと答えた。
「この世界は俺の知る『ダンジョンズドミニオン』でもなければ、お前の知る『ダンジョンズドミニオン』でもない。」
その言葉に、俺の頭はますます混乱した。
黒野の話を聞けば聞くほど、理解が追いつかなくなっていく。
そんな俺を横目に、御影摩耶が静かに口を開いた。
「時夜様、話の続きをお願いします。」
彼女の声に促され、俺は「話の腰を折ってすまない」と謝り、再び黒野の話に耳を傾けた。
意識を取り戻した時夜は、ダンジョンコアに触れたという。
しかし、コアは時夜を拒絶し、崩壊シークエンスが起動してしまった。
「タイムリミットは一時間。崩壊範囲は関東圏の消滅と、その周囲に甚大な被害をもたらすと予測されていた。」
「はぁ!?」
俺はその規模に呆然とした。
時夜もお手上げ状態だったらしい。
あらゆる手を尽くして考えたものの、ダンジョンコアからの回答は不可だったという。
「少しでも可能性があったのは、別のダンジョンコアの作成だった。しかし、必要な容量は首塚ダンジョンの2倍以上だ。」
それは不可能に近い話だった。
最後の頼みの綱として黄泉に助けを求めると、彼女はこう答えた。
「これで貸し二つでありんす。」
そして、一本の槍を渡してきた。
「その時、全て理解した。黄泉の正体が、伊邪那美命であることを。」
黄泉の正体に気付いた時夜は、黄泉や刀祢と共に新しいダンジョンコアを作り上げ、魔力の放出を上空に向けて崩壊の規模を縮小させることに全力を注いだ。
その後、時夜が意識を取り戻したのは、真っ暗な空間だった。
黄泉曰く、それは「奈落の底」という場所だったらしい。
「ただ、魔力を使い過ぎた俺たちは、現世で魔力精神霊体を維持するのが限界だった。」
そう語る黒野の声には、どこか遠い記憶を振り返るような響きがあった。
「そして、黄泉に連れられて黄泉国に向かったんだ。」
黒野はそう言って話を切った。そして俺に問いかける。
「何か聞きたいことはあるか?」
正直、聞きたいことは山ほどあった。
しかし、あまりにも情報量が多すぎて、理解と思考が追いつかない。
頭の中がパンクしそうになりながら、俺は言葉を飲み込んだ。
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