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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第三章 国立探索者学園

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交じり合う異なる世界

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい


キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。

黒野は真剣な表情を浮かべ、俺に問いかけてきた。


「それで、俺に聞きたい事があったから声をかけてきたんだろ?」


俺は短く「あぁ」とだけ返事を返した。


さて、どうしたものか――

のこのこと付いてきたはいいが、こちらの情報を明かすわけにはいかない。

俺は少し考えを巡らせながら、慎重に言葉を選んだ。


「黒野……お前が俺の敵になるかどうかを確認ってとこだな。」


無難に、だが核心を突くような答えだ。

これならこちらの情報を明かさずに済むし、聞きたいことは聞ける。


黒野は目を細め、鋭い視線を俺に向けてきた。


「どういう意味だ?」


その問いに俺はさらに踏み込んで尋ねた。


「ダンジョンマスターはお前だろ?」


その瞬間、黒野は大きなため息をつき、無言でテーブルに置かれていたカップを手に取ると、コーヒーを一口飲んだ。

その動作に驚き、俺は自分の手元を見下ろした。


いつの間にか、俺の分のコーヒーもテーブルの上に準備されていた。

さらに視線を巡らせると、そこには見覚えのあるメイドが静かに立っていた。


先ほどまでテーブルの上には何もなかったはずだ。

そして、俺たち二人だけのはずだった。

なのに――


「御影 摩耶……御剣家の影がここにいる……。」


冷や汗が背中を伝い、俺は動揺を隠せないまま彼女を見つめた。

摩耶はこちらに微笑みかけ、静かに口を開いた。


「どうぞ、お飲みください。」


その声は落ち着いていて、どこか柔らかい響きを持っていたが、その場の空気をさらに張り詰めさせた。


「摩耶……いつも言ってるだろ。気配を消して現れるなと……。」


黒野がため息をつきながら、やや呆れたように言った。


「おや、時夜様はお気づきだったので、つい。」


摩耶は小さく微笑む。

その表情はどこか余裕すら感じさせる。


「慣れだ、慣れ……。」


黒野は肩をすくめると、諦めたようにポケットから煙草を取り出し、火を点けた。


一方で、俺の頭の中は情報の渦に巻き込まれた状態だった。

御剣の影、時夜様……煙草?学生で?

次々と飛び出してきた情報の全てを整理する暇もない。


困惑する俺を見た黒野は、煙草の煙をゆっくりと吐き出しながら、笑い混じりに言った。


「ほら見ろ、獅子堂が困惑してるだろ。」


その暢気な態度に俺は堪らず叫んでしまった。


「どこからツッコんだらいいのかわかんねーんだよ‼」


その声が貴賓室に響き渡ると、摩耶は再び穏やかな笑みを浮かべ、黒野は肩を揺らしながら笑った。

俺は、ますます深まる謎に頭を抱えながら、ため息をつくしかなかった。


「おっと、話がそれてしまったな。」


黒野はそう言って苦笑いを浮かべた。

その表情にはどこか余裕がありながらも、真剣な意図が隠されているように感じられた。


「それで、俺が『お前の敵になるかどうか』だったよな?」


そう言いながら、黒野は真剣な眼差しをこちらに向けてきた。

その視線に一瞬たじろぎそうになるが、俺は冷静を装って短く「あぁ」と答えた。

そして、彼の答えを待つ。


「敵も味方も、俺はお前らと争うつもりはないんだがな。」


黒野は肩透かしを食らったような口調で言い放つと、背もたれに深くもたれ込んだ。

その言葉に疑念を抱きながら、俺は問い返した。


「どういうことだ?」


代わりに答えたのは、立ったまま俺を見下ろしていた御影摩耶だった。


「現状で満足している獅子堂様の邪魔をする気はない、という意味です。」


その言葉には棘があり、彼女の態度は明らかに俺を見下している。

それが余計に腹立たしかったが、ここで感情を表に出すわけにはいかない。


「摩耶、そう邪険にするな。」


黒野がやや呆れたように言い、コーヒーカップを軽く指で揺らしながら続ける。


「俺は獅子堂の持つ知識が気になる。それに獅子堂も、その辺りで俺を危険視してるんだろ?」


黒野は視線だけを動かし、俺を見据えた。

その問いかけに対し、俺は短く「あぁ」とだけ答えた。


「なら、答えは簡単だ。NOだ。」


黒野はあっさりと断言し、姿勢を正して話を続けた。


「お前の情報を話してくれるなら、俺も話すさ。ただし、信用に足るかどうかは別だがな。」


その言葉と共に、黒野はコーヒーを一口飲んだ。

その動作が余計に悠然として見え、俺の苛立ちを煽る。


「それはこちらの話が信用できる内容次第ってことか?」


俺は目を細め、睨むように黒野を見つめた。

黒野は肩を軽くすくめながら言った。


「そんな難しい話じゃない。人としての話だ。」


その返答に、お手上げだな、と内心で呟く。

どうやら、向こうは少なからず俺の情報を既に握っているらしい。

御影摩耶が側にいるのだから、それも当然か。


俺は両手を上げて降参のポーズを取り、少し苦笑いを浮かべながら言った。


「わかった……俺の負けだ。」


そうして深く息をつき、話を続ける。


「こちらの情報を話す。だから、そっちも全て話してくれないか?」


俺の言葉に、黒野はコーヒーを飲みながら眉を軽く動かし、こちらを見た。


「全てと来たか……まぁ、良いだろ。」


黒野は小さく頷くと、話を促すように俺を見つめた。

その視線は鋭いが、どこか期待も感じられるものだった。

俺は心を決め、彼に向けて口を開いた。


俺は、自分の過去と真実を黒野に話し始めた。


俺が転生者であること。

この世界が俺にとって、かつて"ダンジョンズドミニオン"というゲームとして存在していたこと。

そして、この世界に転生してきた後の話――

10歳まで隔離施設で監禁され、ただくすぶる日々を過ごしていたこと。

13歳で精通し、Sランク認定を受けたことで生活が一変し、以降、女性を抱く事とLvを上げ、力を得てきたこと。

そして探索者協会で黄泉を見かけた際、黒野時夜の存在を知り、ワールドアナウンスの内容を思い出して黒野がダンジョンマスターだと気づいたこと。


俺の知る限りのすべてを語り終えると、黒野はソファーに大きくもたれ掛かり、無言で煙草に火をつけた。

そして、天井を見上げながら煙をゆっくりと吐き出す。


「なるほどな……うらやまけしからん奴だ。」


その言葉に、俺は思わず「はぁ?」と声を漏らした。

黒野は天井を見つめたまま煙草を吸い続けながら話し始めた。


「俺と同じことを考えて実行しているとは……なんて羨ましい奴だ。」


黒野は苦笑いを浮かべながら煙草を吹かし続けている。

その言葉が本気なのか冗談なのか、俺には判別がつかなかった。


「おや、時夜様は女性に興味おありで?」


傍らに立つ御影摩耶が、からかうように問いかけた。


「今の現状じゃなかったら、俺も『ハーレムだヒャッホーイ!』ってしたかったからな。」


黒野は肩をすくめながら苦笑いを浮かべて答える。

その姿に、御影摩耶は唇に手を当て、何かを思い出すように天井を見上げながら言った。


「その様には見えなかったのですがね。」


その返答に、黒野は苛立ったように視線を御影摩耶に向けた。


「まだガキだっただけだ!」


そう言い放つ黒野の顔には、どこか恥ずかしさと呆れが混じっていた。

御影摩耶はその姿を見て、かすかに微笑む。


俺はそのやり取りを目の当たりにしながら、なんとも言えない気分になっていた。

この二人のやり取りはどこか軽妙で、俺の抱いていた緊張感を一瞬だけ和らげるようだった。


「すまない……また話がそれたな。」


黒野は苦笑いを浮かべながらそう言った。

その表情にはどこか申し訳なさそうな様子が垣間見えた。


「いくつか聞きたいことがあるんだが、良いか?」


黒野にそう問われ、俺は短く「あぁ」と返事をした。


「とりあえず一発殴らせろ。」


突然の発言に、俺はツッコミを入れた。


「何でだよ!」


「いや、俺が苦労しているのに、この世界を謳歌してるお前にムカついたから。」


黒野は淡々と答え、立ち上がり拳をポキポキと鳴らした。


その理不尽な理由に俺は思わず声を荒げた。


「理不尽だろ!お前の才と力があったらできただろう!」


だが、黒野はどこか憂鬱そうな表情を浮かべながら肩をすくめて答える。


「いや……そんな暇が無かったんだよ。」


そう言うと、黒野はソファーに腰を下ろし、再び穏やかな態度に戻った。

そして本題に入るように、静かに煙草に火をつけながら問いを投げかけてきた。


「んで、本題なのだが、この世界はお前の知る『ダンジョンズドミニオン』の世界なのか?」


その問いに、俺は一瞬考えながら返事をした。


「どういう意味だ?んなことより煙草、良いのかよ?20歳からだろ?」


黒野は煙草を咥えたまま一瞬ポカンとした表情を浮かべた。

その時、御影摩耶が軽く咳払いをして答えた。


「煙草や飲酒は15歳で成人すれば認められています。ただし、15歳は学生の身分です。良いか悪いかと言えば良いですが、お勧めはされておりません。」


「知らなかったのか?」


黒野が呆れたような表情を浮かべながら尋ねてきた。


「お前に気づいてからはLv上げに必死だったから……。」


俺は口ごもりながら答えたが、すぐに開き直って話を戻した。


「この世界だったよな!」


その言葉に黒野は「あぁ」と短く返事をした。


「この世界は『ダンジョンズドミニオン』じゃないのか?」


俺が問いかけると、黒野は「それを確かめるために聞いている」と答えた。


「要は、お前がこの世界を『ダンジョンズドミニオン』と感じたことを教えてくれればいい。」


そう言って、黒野は真剣な眼差しを俺に向けた。


「まず初めに思ったのはメニュー画面だな……。」


俺はそう言って、この世界と『ダンジョンズドミニオン』の類似点を語り始めた。

メニュー画面、ステータス表記、九州・関西・関東・北陸エリアが開始位置、ダンジョンの位置や構造、さらには拡張DLCで追加された神域エリアや神々の存在――俺が知る限りの情報を黒野に話した。


黒野は腕を組み、真剣な表情で話を聞いていた。


「エリアに関してはこの世界と概ね同じか……ステータスは……個人差だろうな。ダンジョンの位置や構造は、今と全く同じか?」


黒野が問いかけてきた。


「いや……全てが同じじゃない。俺の知らないダンジョンも多数ある。」


「それは現在確認されているダンジョンか?」


「あぁ、そうだが何故だ?」


「なるほどな……つまり、お前の知ってるダンジョンは未開のダンジョンだったわけだろう?」


「あぁ、そうだが……何故わかる?」


「やはりか……。」


黒野は再び腕を組み、思案を続けながら答えた。


「要は、この世界はまだ変化の最中ってとこだな……。」


その言葉に、俺は思わず怒鳴った。


「おい!答えろ!」


だが黒野はその問いには答えず、ただ深く思索を巡らせている様子だった。

俺は彼の次の言葉を待ちながら、不安と期待が入り混じる中、静かにその場に佇んでいた。



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