入学式(画像あり)
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい
キャラクターの容姿や髪型等は多少違ったりもします。
俺は邪魔くさいと思いながらも護衛に連れられて、国立探索者学園の入学式に出席することになった。
入学式なんて形式的なものだし、本当は気乗りしなかったのだが、逃れることはできなかった。
俺のクラスは二組。
一組には黒野時夜、三組には御剣葵という名前が割り振られていた。
どちらも気になる存在ではあったが、今はそれ以上考える気力も湧かない。
制服は白を基調としたおしゃれなブレザー。
どこかのアイドルがステージ衣装として着ていそうなデザインだ。
俺にはあまり似合っている気がしないが、周りの目を気にする気もない。
学校の敷地に足を踏み入れた瞬間、まず目に入ったのはその規模の大きさだった。
「……でかいな。」
思わずそう呟いてしまった。
広大な敷地には無数の施設や建物が並び、そのどれもが豪華で手入れが行き届いている。
学生が快適に生活できるように、商業施設まで設けられており、一つの小さな街のようになっていた。
この場所で俺はこれから5年間、寮生活を送らなければならない。
「憂鬱だな……。」
自然とため息が漏れた。
正直面倒くさいのとやる気が出なかった。
それでも足を止めることはできず、護衛に促されながら講堂へと向かった。
講堂に着くと、一階の座席にはすでに多くの女子生徒が整然と並んで座っていた。
その人数に圧倒される。
さらに視線を上げると、二階の席も女子で埋め尽くされているではないか。
「どこまで女子が多いんだよ……。」
そんな俺の呟きが聞こえたのか、護衛が小さく咳払いをした。
そしてそのまま三階の貴賓席へと案内された。
そこには男子生徒が4人すでに座っていおり、彼らもまた、俺と同じく今年の新入生のようだ。
三階の席は、これまた無駄に豪華だ。
一人一人に用意された黒い本革のソファーが並び、左から二つ目の席が空いていた。
「ここが俺の席か……。」
俺は溜息交じりにそのソファーに腰を下ろした。
柔らかなクッションが身体を包み込み、思わずその心地よさに身を預けたくなる。
しかし、それ以上に周囲の状況が気になった。
左隣に座っていたのは、黒髪ロングのイケメン。
彼はまるで全てを見透かすような冷静な眼差しをしており、その落ち着きは明らかに普通の新入生とは一線を画している。
右隣には黒髪短髪のイケメンが座っていた。
明るく親しみやすそうな雰囲気で、周囲をリラックスさせるような笑顔を浮かべている。
その姿が、俺の右に座る御剣葵だった。
「これが今年の男子か……。」
俺は視線を前方に向けながらそう呟いた。
講堂の中に漂う空気は張り詰めており、周囲の女子たちの熱い視線が三階の俺たちに集中しているのを感じる。
これから始まる学園生活が、平穏であるはずもない。
俺は再び小さな溜息をつきながら、式が始まるのを静かに待った。
そして、無駄に始まったクソ長い挨拶が続く。
まずは在校生代表、生徒会長のスピーチ。次に登壇したのは学園長のババアだ。
「長い……。」
俺は何度も大きなあくびをしながら、その話を適当に聞き流した。
興味を引かれる内容ではない。
暇を持て余した俺は隣の黒野に声をかけた。
「俺は獅子堂健二。よろしくな、黒野。」
声をかけると、黒野はちらりと俺を一瞥し、「あぁ……」とだけ返事をして、すぐに目を逸らした。
「なんだよそれ……。」
内心で舌打ちをしながら、俺は黒野をじっと見つめる。
彼の制服の上に羽織られた黒い羽織が目に留まった。
一見シンプルなデザインだが、そこに刺繍された模様が妙に目を引く。
三つ並んだ髑髏の刺繍。
一見ファンクなデザインにも思えるが、俺はその意味を知っていた。
「輪廻三相……だったか。」
思わず呟いた俺の声を聞き取ったのか、黒野が鋭い視線をこちらに向けた。
その眼差しには明確な警戒心が宿っている。
それを見た俺はニヤッと笑い、無視するかのように視線を外し、正面を向いて話た。
「輪廻転生。死すとも魂は流れゆき、新たなる生命に宿らん。
浄化されし魂は輪廻の輪に還り、再び世を巡るべし。
されど魂の本質変わることなく、その記憶は刻まれ続ける。
全てを思い出す者あり。その者、覚者と謂うなり。だったか?」
俺は視線だけを黒野に向けながらそう言った。
すると、黒野はギョッとした顔をして大きく目を見開いた。
どうやら興味を引けたようだな。
俺は内心そう思い、クソ微笑んでみせた。
その瞬間、黒野は突然大声で笑い出した。
「アハハハハハハ‼」
その声は静かな講堂に響き渡り、挨拶をしていた学園長のスピーチも止まっていた。
静まり返った講堂に、黒野の低い声が響いた。
「輪廻三相図だ。」
その言葉は、まるで周囲の空気そのものが彼の言葉に吸い寄せられるかのようだった。
黒野はゆっくりと視線を前に向け、朗々と語り始めた。
「輪廻転生。
死する魂は新たに宿りて、再び世を巡る。
浄化せられし後、輪廻の環へと還り、途絶うることなき道を辿らん。
然れども、魂の本性は変わるることなく、
その記憶は幾劫を経るもなお、消滅せず。
或いは、その記憶、全てを悟り顕わす者あり。
斯くの如き者を、覚者と奉り讃う。
覚者こそ、輪廻の理を超え、真の道を示す光と成る。
衆生よ、輪廻の果を見よ。魂の永劫の輪を識るべし。」
黒野の声は静かだが、その言葉一つ一つが妙に心に染み入る。
講堂の全員が息を飲み、彼の口から語られるその内容に耳を傾けていた。
そして、黒野は再び視線を俺に向けた。
その目はまるで何かを確かめるかのように鋭く、けれど同時に深い底知れぬ何かを宿しているようだった。
「これが『輪廻三相三魂の巡り』だ。」
その瞬間、時間が止まったかのような静寂が講堂を支配した。
だが、俺はその空気を無視して口を開いた。
「覚醒者に至る道筋だったか……。」
黒野は俺の言葉に反応し、視線を俺に向けると、低く言葉を返した。
「解釈としては合っているが、本質は違う。」
そのまま彼は話を続けた。
静寂の中、俺たちの声だけが講堂に響き渡る。
「衆生の魂は輪廻を繰り返す。死して記憶を浄化され、転生する。されど記憶は魂の根幹。奥底に刻まれ続けている。要は、目の前にいる奴らは全てが転生者だ。そして前世の記憶を思い出した者を覚者と呼ぶ。俺たちが転生者って呼んでいる奴らのことだ。」
黒野の言葉を聞き、俺は目を細め、眼前の女性たちを見つめた。
「つまり、こいつらも覚者になる可能性があるってことか……?」
黒野は短く「ああ、可能性としてはな」と答えると、近くに控えていたメイドに何かを指示した。
メイドは一礼してその場を去り、どこかへ向かった。
すると、黒野はゆっくりと立ち上がり、俺を見下ろすようにして言った。
「ついて来い。」
俺はため息をつきながら席を立たった。
だが、その瞬間、慌てたような学園長の声が講堂に響いた。
「ちょ、ちょっと黒野君、獅子堂君!どこに行くんですか!」
学園長の焦った声がするが、俺は振り返りもしない。
ただ顔だけを軽く後ろに向け、嫌気が差したように答えた。
「トイレだよ、トイレ。」
片手を振りながら適当にバイバイの仕草をすると、そのまま講堂を後にする。
背後からは学園長の「待ちなさい!」という甲高い声が追ってきたが、俺は煩わしさを感じるばかりだった。
廊下を進む黒野の背中を追いながら、俺は内心で笑みを浮かべる。
これから何が始まるのか、少しだけ興味が湧いてきた。
黒野に連れられ、俺たちは講堂を後にした。
案内された先は貴賓室と呼ばれる部屋だった。
その豪華さに思わず息を呑む。
まるで高級ホテルのスイートルームのように広く、優雅な造りになっている。
天井には精巧なシャンデリアが輝き、壁には美しい絵画が飾られている。
足元にはふかふかのカーペットが敷かれ、歩くたびに柔らかな感触が伝わってくる。
部屋の中央には大きなソファーとテーブルが置かれており、俺と黒野は自然と向かい合う形で腰を下ろした。
「さっきは無視するような真似をしてすまなかったな。」
そう言って黒野は軽く頭を下げた。
その態度に少し驚いた。
先ほどまでの威厳ある雰囲気からは想像もつかない、人間味のある仕草だった。
「この学園で女性の相手を頼まれただけだったから、正直興味がなかったんだよ。」
そう言って黒野は苦笑いを浮かべる。
その顔にはどこか疲れが滲んでいるようだった。
「……あぁ、それは俺も同じだ。」
俺も軽く肩をすくめながら返事をした。
ここに来るまでの事情が似ているのかもしれない、そう思うと少しだけ親近感が湧いてきた。
黒野は少し体を前に傾け、俺の目をじっと見つめて言葉を続けた。
「それで、俺に聞きたいことがあるんだろ?獅子堂健二……いや、覚者……めんどくさいな……転生者でいいか?」
「俺はその方が良いが……良いのか?」
「覚者だの転生者だの、呼び方が違うだけだ。それに俺たちには転生者の方が馴染みがあるだろ?」
黒野は苦笑いを浮かべながら言った。
その言葉に俺も思わず「違いない」と肩をすくめ、軽く笑った。
彼の口調にはどこか不思議な安心感があった。
さっきまでの威圧感とは打って変わって、柔らかな空気を纏っている。
これが黒野という男の本性なのか、それともただの一面に過ぎないのか。
貴賓室の静寂の中、俺たちの笑い声だけがわずかに響いた。
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい。
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