初心者ダンジョン③(画像あり)
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい
ダンジョンでの狩りを終えた僕たちは、夕方には屋敷に戻り、そのまま庭でバーベキューをすることになった。
「葵の初めての戦利品よ!」
母様がそう言って、僕が狩ったホルモンや豚の耳、豚足などを盛大に並べる。
けれど、肉の量は少なく、豪華なバーベキューというより、珍味がメインのメニューだった。
摩耶が慣れた手つきでホルモンを焼いていく。
ぷつぷつと脂が弾ける音が心地よく、炭火の香ばしい匂いが辺りに漂った。
屋敷の使用人たちも加わり、賑やかな雰囲気に包まれる中、僕は隅でホルモンを頬張っていた。
正直、これが自分の初めての戦利品だと思うと、ちょっと複雑な気持ちになる。
「このホルモン、酒に合いますねぇ~!」
一方で、母様と使用人たちは、もうすっかり宴会モードに突入していた。
手にはグラスが握られ、笑い声が庭中に響く。
「これ、もはやバーベキューじゃなくて酒宴だよね……。」
僕は焼き網を眺めながら、思わず呟いてしまった。
視線の先では、使用人たちが盛り上がりながら踊りだしている。
「でも、皆さん楽しそうですよ?」
沙耶が微笑みながら言う。
確かに、皆が笑っている姿を見ていると、不思議と僕の心も温かくなる。
初めてのダンジョン攻略で得た戦利品。
それがこんなにも皆を喜ばせるとは思ってもいなかった。
肉が少ないことなんて、もうどうでもよくなっていた。
今夜は、僕にとって一生忘れられない酒宴になりそうだ。
翌朝、僕たちは4階に降り、ブルを狩るための準備を始めた。
このフロアも森になっており、色とりどりの草花や木の実が広がり、ダンジョンの中とは思えないほどの自然の豊かさを感じる。
しばらく森の中を進むと、母様が静かに手を上げて僕たちを止めた。
「葵、あれがブルよ。」
そう言って、母様は森の奥を指さす。
指さした先には、大きなイノシシのような魔物の姿があった。
その体は3メートルほどもあり、鋭い牙が光っている。
ゆっくりと歩くその姿からは、強い存在感と威圧感が伝わってくる。
「大きい……。」
僕は思わず息を飲んだ。
これまでの魔物とはまったく違う圧力を感じる。
「葵お坊ちゃま、ブルは目標を見定めると、一直線に突進してきます。そして、あの牙で獲物を撥ね飛ばします。毛皮は分厚く、肉質も硬いですが、それ以上に厄介なのがその生命力です。一撃では倒れないことがほとんどですから、慎重に戦ってください。」
摩耶が淡々と説明するその声に、ほんの少しの緊張感が滲んでいる。
僕は息を整え、刀の柄を握りしめた。
「とりあえず、あれを狩ってみなさい。」
母様がそう言うと、摩耶と沙耶が僕を守るように後ろで警戒態勢をとる。
「失敗してもいいわ。まずはやってみなさい。アドバイスはその後よ。」
母様はそう言って、優しく微笑んだ。
僕は、これまでの経験を思い出しながら、深呼吸をして、一歩ずつ慎重にブルに近づいていった。
僕がブルにじりじりと近づいていくと、それに気づいたブルは鼻を大きく鳴らし、前足で地面を激しく搔きながらこちらを睨みつけてきた。その仕草からは、明らかに敵意が滲み出ている。
僕は緊張で喉が渇くのを感じながらも、そっと腰を落とし、刀の柄に手をかけた。
すると、ブルはものすごい勢いで突進してきた。
地面を揺るがすような音とともに、まるで暴走する車のようだ。
僕は瞬間的に横へと身をかわし、すれ違いざまに刀を振り抜く。
だが――。
「硬い……!」
斬りつけた感触はまるで太い丸太を斬るようなもので、ブルの分厚い毛皮と肉が刀を弾くように感じられた。
それでも、わずかな切れ目が入ったブルは、「プギィーッ!」と大きな声で鳴き、怒りをあらわにして立ち止まった。
再びこちらに牙を向けると、ブルはさらに激しい突進を仕掛けてきた。
その巨体が迫ってくるのを前に、僕は一瞬ひるみそうになるが、なんとか冷静を保ちながら観察する。
ブルが目の前まで迫った瞬間、その牙を突き上げるように振りかざしてきた。
僕はすんでのところで横に避けると同時に、力を込めて刀を振り上げ、ブルの首元を斬りつけた。
「やったか……?」
だが、ブルはまだ倒れなかった。
首元を斬られた傷からは黒い霞が滲み出ているものの、鼻息を荒くしながら牙を振り回して僕に襲いかかろうとする。
「くっ……!」
僕は後ろにバックステップして距離を取りつつ、次の一撃に備える。
だが、ブルの体力は限界だったのか、数歩進んだところで膝をつき、そのまま地面に横倒しになると、黒い霞となって消え去った。
静寂が戻り、僕は深く息を吐きながら、刀を鞘に納めた。
ブルが消えた後に残されていたのは、立派な牙だった。
それを拾い上げた僕は、少しほっとしながら母様たちの方を振り返った。
母様は笑みを浮かべながら頷き、摩耶と沙耶も拍手しながら僕を見つめていた。
ブルを倒し終えた僕は、母様たちのもとに戻った。
母様は優しく僕の頭を撫でてくれて、「よくやったわ」と誉めてくれた。
その言葉に少し照れながらも、僕は心の中で小さくガッツポーズをした。
すると、母様が少し真剣な顔をして尋ねてきた。
「葵、一つ聞きたいのだけど、何故魔法を使わないの?」
僕は少し悩んだ後、「使っても良いんですが…」と言いながら辺りを見回し、視線の先にいたブルを指差した。
そして、手を軽く振りかざしながら魔力を込めて呟いた。
「アース・スパイク。」
ブルの真下から数本の土槍が突き出し、その鋭い先端がブルを串刺しにした。
ブルは抵抗する間もなく黒い霞となり、跡形もなく消えていった。
それを見た母様は納得したように頷き、「なるほど。」と呟いた。
「一体ずつ相手ができるのであれば、出来るだけ実践経験を積みたいと思って。魔法に頼るのは簡単ですけど、そればかりに頼ってしまうと、いざという時に困ることもあるかもしれないので。」
僕の答えに、母様は少し考えるように顎に手を当てたあと、「そうね、それも一理あるわ。」
と言ってから微笑み、「じゃあ、次に行きましょう」とすぐに切り替えた。
僕たちは森の中を歩きながら、次々とブルを狩っていった。
相変わらずドロップするのは牙や毛皮ばかりで、肉はほとんど出なかった。
その様子を見ていた沙耶が首をかしげながら呟いた。
「葵様は、レアドロップ率が高いのでしょうか?」
「え?どういうこと?」
僕が不思議そうに聞くと、沙耶が丁寧に説明してくれた。
「このダンジョンは別名『食料ダンジョン』とも呼ばれていて、基本的には肉のドロップが多いんです。でも葵様の場合、なぜか素材や毛皮が多く出ているみたいです。」
「それって……ハズレってことじゃないの?」
僕が半ば呆れたように聞くと、沙耶は微笑みながら頷いた。
「そうですね。世間一般ではハズレ枠とされることが多いですが、考え方によってはレアドロップの確率が高いとも言えます。」
「レアドロップ……?」
沙耶の言葉を反芻していると、母様も腕を組みながら考え込んでいた。
「あぁ、なるほど……確かに、そういう考え方もできるわね。」
「ここでは肉が出にくいことが裏目に出ているかもしれませんが、他のダンジョンや魔物で試せば、違った結果が出るかもしれませんね。」
摩耶も顎に手を当てながらそう言い、何かを思案するような表情をしていた。
「ふぅ……だったら良いけど……」
僕は少し呆れながらも、思わず小さくため息をついた。
僕たちは森の奥を進みながら、次の階層を目指していた。
僕たちは無駄話をしながら進んでいると、突然「ドスン、ドスン」と大地を揺るがすような大きな地響きが聞こえてきた。
母様が手を上げ、僕たちは足を止めた。
森の奥から姿を現したのは、これまでに見たどの魔物よりも圧倒的に巨大なイノシシだった。
その巨体は10メートルにも達し、鋭く湾曲した巨大な牙と、大きな立派な角を持っている。
その圧倒的な威圧感に、僕は思わず息を呑んだ。
「エンペラーボア……」
母様が低い声で呟いた。
その言葉の意味を理解できなかった僕は、摩耶を見上げた。
「エリアボスですね。」
摩耶が淡々と答えた。
その言葉に母様は険しい顔をして言葉を続けた。
「極まれにしか出ないはずなのに……こんな時に限って出てくるなんて。」
「どういうこと?」
僕は母様に尋ねた。
摩耶が代わりに説明してくれた。
「ここは初心者ダンジョンです。本来、エリアボスのような強敵は出現しないのですが、年に1~2回、各階層にランダムでエリアボスが出現することがあるんです。発見された場合、駆け出しの探索者では手に負えないため、直ちに討伐隊が編成されます。」
「今出てきたのは、討伐隊がまだ組まれていないか、出現したばかりの個体なのでしょうね。」
母様は腕を組み、じっとエンペラーボアを睨みつけながら考え込んでいる。
その間にもエンペラーボアは、周囲の木々をなぎ倒しながらゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。その一歩一歩が大地を揺らし、僕の心臓まで震えるようだった。
摩耶が母様に問いかけた。
「見つけてしまった以上、討伐しますか?」
母様は少しの間黙っていたが、やがて僕の方に目を向けた。
そして、決然とした表情で言った。
「いえ、葵にやらせましょう。」
その言葉に、一瞬その場の空気が止まったように感じた。
僕は母様の言葉の意味を理解するのに数秒かかった。
「えっ……?」
僕の言葉を無視するかのように、母様は真剣な眼差しで続ける。
「葵、このエンペラーボアを相手にして、全力で挑みなさい。この先の厳しい世界を生き抜くために、今ここで実力を試しなさい。」
僕の中に湧き上がる恐怖と戸惑いを見透かすように、母様は言葉を重ねる。
「もちろん、摩耶と沙耶がサポートするわ。ただし、彼女たちは命の危険がある場合だけ手を貸す。まずは自分の力でやりなさい。」
僕は緊張で声が出なかった。
足が震えているのを自分でも感じていた。
でも、母様のその目は本気だった。僕は震える手で刀を握りしめ、決意を固めるしかなかった。
「……わかりました。」
言葉を絞り出した僕に、母様は頷いた。
摩耶と沙耶も静かに頷いて準備を始める。
「では、葵。頑張ってきなさい。」
その一言を背中に受け、僕はゆっくりとエンペラーボアに向かって歩き出した。
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