初心者ダンジョン① (画像あり)
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい
翌日、僕たちは初心者用ダンジョンに向かった。
場所は街の外れにある大きな公園。
日差しの中、緑が広がる公園内には、探索者たちの賑わいがあった。
ダンジョンの入り口付近には、多くの露店が軒を連ねている。
タコ焼きに焼きそば、香ばしい匂いが漂い、思わず僕のお腹が鳴りそうになる。
他にも探索者向けの道具を扱う店もあり、下級の回復薬や傷薬などが並べられていた。
それを目にした僕は、キラキラと目を輝かせながら歩いていた。
けれど、僕たちの存在に気付いた周囲の探索者たちの反応は違っていた。
彼女らはギョッとした表情を浮かべると、すぐに道を空けてくれる。
その視線に気付いた僕は、気恥ずかしさを感じながらも、母様たちに続いて歩を進めた。
ダンジョンの入り口に到着すると、そこには芝生の上にぽつりと洞窟の入り口が開いているだけだった。
何の変哲もない景色の中に、不自然なほど整った洞窟の形状だけが異質さを放っていた。
「ここから先は、葵一人にやってもらうわ。」
母様が僕の肩をポンと叩きながらそう告げる。
「一人で…?」
僕は緊張のあまり声が震えてしまったが、母様の真剣な表情を見て小さく頷く。
手にした刀をギュッと握りしめると、隣にいた摩耶が柔らかく微笑みながら声をかけてくれた。
「葵お坊ちゃまなら大丈夫です。ここは比較的安全なダンジョンですから。ご安心ください。」
その言葉に少しだけ気持ちが軽くなった。
摩耶はさらに、このダンジョンの概要を丁寧に説明してくれた。
「このダンジョンは初心者向けで、5階層まであります。一階は洞窟になっていて、スライムしか出てきません。二階以降は草原のようなフィールドになっていて、出現する魔物が少しずつ強くなります。」
「具体的には、二階はホーンラビット、三階はピグーという豚型の魔物、四階はブルというイノシシ型の魔物、そして五階にはウルフが出てきます。」
草原になっている二階以降は比較的広いフィールドになっているらしい。
ただし、道に沿って一直線に進めば次の階へ降りる階段が見つかるとのことだった。
そのため、戦闘を最小限にしたい場合は、道を駆け抜けるのも一つの手段だという。
「最下層の五階を目指しますが、焦らず一歩ずつ進んでいきましょう。」
摩耶の声には安心感があり、その言葉が僕を少しずつ勇気づけてくれた。
「沙耶、摩耶。葵をしっかりとサポートしてね。」
母様が念を押すように二人に指示を出す。
「はい。」
摩耶が静かに頷き、沙耶は元気よく返事をする。
「葵、あなたならできるわ。無理をしないで、しっかりと進むのよ。」
母様の言葉に、僕はもう一度小さく頷いた。
洞窟の入り口に立ち、僕は深呼吸をした。
ひんやりとした空気が肌に触れ、これが僕にとっての本格的な初挑戦となる。
心臓がドキドキと早鐘のように鳴っていた。
「行ってきます。」
小さな声でそう呟き、僕は一歩を踏み出した。
洞窟の中に足を踏み入れると、思ったよりも明るいことに驚いた。
「ダンジョンの中だからもっと薄暗いのかと思ってたけど、意外と見えるんだな…」
そんなことを考えながら周囲を見渡す。
壁のあちこちに淡い光を放つ鉱石のようなものが埋まっていて、それが洞窟全体をほんのりと照らしていた。
ただし、奥の方は薄暗く、どこか不気味な雰囲気が漂っている。
先の様子が見えないのはやはり不安を感じる。
洞窟の幅は2人が並んで歩けるほどの広さだ。
十分に余裕はあるけれど、刀を振り回すには注意が必要だと思う。
「狭い場所では不用意に刀を振るうと、壁にぶつかってしまうかもしれないな…気をつけないと。」
そんなことを考えながら、洞窟の壁をペタペタと触り、感触を確かめていた。
壁はざらざらとしていて、どこか湿っぽい。
触るたびに手にひんやりとした冷たさが伝わる。
興味をそそられて洞窟の内装をじっくりと観察していると、後ろから母様の声が飛んできた。
「葵、入り口で立ち止まっていると、他の人たちの邪魔になるわよ。早く先に進みなさい。」
その言葉にハッとして振り返ると、母様が腕を組んでじっと僕を見つめている。
その後ろには、摩耶と沙耶が控えていた。
沙耶は口元に手を当ててくすくすと笑い、摩耶は微笑みながら静かに首を横に振っていた。
「あ、ごめんなさい!」
慌てて母様たちの視線から逃げるように、一歩前へと進む。
どうやら入り口でじっとしていると、後から入ってくる探索者たちの邪魔になるみたいだ。
洞窟の中を慎重に進みながら、ふと思った疑問を母様に投げかけた。
「どうしてこんなに明るいんですか?洞窟の中だからもっと暗いと思っていました。」
「揚羽が言うには、この光石が私たちの魔力に反応して光っているそうよ。」
母様は、壁に埋まっている光石を指さして説明してくれた。
僕は興味津々で壁の光石をじっと見つめた。
確かに、それぞれが淡く光を放ち、洞窟内をほんのりと照らしている。
薄暗さの中にも、どこか神秘的な雰囲気があった。
母様の説明を聞き終えた直後、摩耶がにやりと笑って話し出した。
「そういえば昔、茜様がこの光石を無理やり採ろうとしてましたね。」
「ちょっと摩耶!それを今言う必要ある!?」
母様が声を荒げたが、摩耶は気にせず続けた。
「『これなら魔石いらずじゃない』って言って、剣で壁を破壊しようとしてたんですよ。それを見ていた黒羽様たちが爆笑して…『茜が採掘に目覚めた』なんてからかっていましたね。」
「やめなさいってば!」
母様は顔を真っ赤にして頬を膨らませぷいっと顔を背けた。
その様子に摩耶はくすくすと笑い続けている。
話が一段落すると、摩耶は真剣な顔つきで説明を続けた。
「光石は採掘ポイントでなら手に入ることもありますが、ダンジョン内ではまだ解明されていない部分も多いです。無理をすると、予想外の事態が起こることもあるので注意してください。」
僕は光石を見ながら「なるほど」と頷いた。
ダンジョンの壁は破壊不可能なのは有名で、当時それを知らずに無理やり光石を採ろうとした母様を、黒羽様たちがからかったのも、そういう背景があったからなんだろう。
母様が剣で壁を叩いている姿を想像すると、少しおかしくなってくすりと笑ってしまった。
そんなことを考えながら進んでいると、洞窟の先が少し開けた場所に出た。
そこには小さなフロアが広がり、その中心にスライムが三匹、じっと待機しているのが見えた。
僕は刀の柄を握りしめながら、自分の心臓の音が大きくなるのを感じた。
その時、母様が僕の腰をポンと叩いて声をかけてきた。
「頑張ってね、葵。」
背中を押された僕は、小さく頷くと腰を落として構えをとった。
刀の鍔に指をかけ、目の前のスライムたちに集中する。
ゆっくりと息を整え、そのまま一気に駆け出した。
スライムたちがこちらに気づく間もなく、僕は刀を横薙ぎに振り抜いた。
一振りで三匹をまとめて斬りつけ、そのままバックステップで距離を取る。
刀を正眼に構え直し、次の動きに備えた。
だが、その必要はなかった。
斬られたスライムたちはシューっと黒い霞のようなものを残して消えていったのだ。
「え…?」
思わず声が漏れた。
戦闘は、あまりにもあっけなく終わってしまった。
自分の刀が確かにスライムたちに触れた感覚がまだ手に残っている。
だが、それ以上に拍子抜けするほど簡単だったのだ。
スライムたちが消えた跡にしばらく立ち尽くしていると、背後から母様の拍手が聞こえた。
「よくやったわ、葵。初戦にしては上出来よ。」
振り返ると、母様や摩耶、沙耶が優しい表情で僕を見ていた。
けれど、その優しさの中には確かに期待の色も見えた。
「ありがとう…。」
僕は小さく返事をしながら、改めて刀を鞘に納めた。
それから先は単調な進行が続いた。
洞窟内に出現するスライムは、一撃で倒せるほど弱く、僕は少し拍子抜けしながら進んでいった。
「次のフロアは草原です。ホーンラビットという魔物が出てきます。」
摩耶が淡々と説明を始める。
「見た目は可愛いですが、額の角で突進してくるので、気をつけてください。」
「葵様、突進してくる際は横に躱すのが基本です。」
沙耶が落ち着いた声で補足してくれる。
僕はその話を聞きながら、小さく頷きつつ刀の柄を握り直した。
「見た目に惑わされないようにしないと…」と、自分に言い聞かせながら次のフロアへと足を進める。
洞窟を抜けると、目の前には広がる草原が現れた。
想像していた以上に明るく、地面には緑の草が広がり、空には青空を思わせるような光景が広がっている。
「ダンジョンの中なのに、こんな場所があるなんて…。」
僕は思わず感嘆の声を漏らした。
「これがダンジョン内のフィールドエリアね。この環境もダンジョンが魔力で作り出しているのよ。」
母様が穏やかな声で教えてくれる。
その視線の先には、ちらほらと狩りをしている探索者のパーティーが見えた。
遠くで聞こえる武器の音や魔法の爆発音が、この場所が平和なだけではないことを教えてくれる。
「さあ、葵。葵の狩猟しだいで今夜のご飯が決まるわよ。」
母様がニコニコと微笑みながらそう言った。
「えっ?」
僕は思わず母様を見返すと、横で摩耶が補足してくれた。
「ここから先はドロップ品が出ます。ホーンラビットの場合、角、毛皮、肉が基本ですね。葵お坊ちゃまの狩猟結果しだいで、皆様の夕食が決まりますので、どうぞ頑張ってください。」
「…それって、もしかして…」
不安げに尋ねる僕に、摩耶はさらりと答える。
「ええ、もちろん屋敷の使用人たちの分も含まれています。」
摩耶はニッコリと笑ってそう言ったが、目は全く笑っていなかった。
背筋が寒くなるのを感じながら、僕は思わず拳を握りしめた。
「チックショオォォォォ!」
僕は叫びながら草原を駆け回り、目についたホーンラビットを次々と狩っていった。
角、毛皮、毛皮、毛皮、角…。肉がやっと一つ出た…。
僕は心の中で嘆きながらも、狩りを続けた。
角、角、角、毛皮、角、毛皮…。
ようやく肉がまた一つ。
それでも期待とは程遠い結果だ。
他の探索者たちの邪魔にならないよう気をつけながらも、僕は気づけば30匹近くのホーンラビットを倒していた。
それでも肉はたったの5つしか手に入らなかった。
その結果を見ていた沙耶が笑いながら言った。
「葵様の物欲センサーがビンビンに反応しているようですね。」
「もう、勘弁して…。」
僕は疲れ切った体でしゃがみ込みながら、心の中で何度も叫んだ。
画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい。
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