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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第二章 分水嶺 

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分かち合う二つの魂 (画像あり)

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい

挿絵(By みてみん)


摩耶たち一行は、茜の後を慎重に追いながら山の中腹に位置する古びた神社へとたどり着いた。

そこには戦闘を終わらせた茜が、炎剣アグニを肩に担ぎ、苛立ちを隠そうともせず待ち構えていた。


「なんであなたたちはもっと早く来ないのよ!」


茜は怒り心頭といった様子で、立ち止まった一行に詰め寄る。

その姿は怒りの炎がそのまま形になったかのようで、一瞬周囲の温度が上がったようにさえ感じられる。


「摩耶!サポートしなさいって言ったでしょ!」


彼女は特に摩耶を指差して非難するが、摩耶はまったく動じた様子もなく、冷静な表情を保ったままだ。


「お疲れ様です、茜様。」


摩耶は柔らかな口調で、何事もなかったかのように声をかける。

そして、そのままの調子で軽く一礼しながら続けた。


「これで終わりではありません。次が最後です。」


茜はその冷淡な反応に、さらに怒りを募らせた。


「無視!?スルーなの!?本当にあなたってそういうところが腹立つのよ!」


彼女は手元のアグニを地面に突き刺しながら苛立ちを露わにする。


しかし摩耶は相変わらず微動だにせず、軽く肩をすくめると、あっさりと話を切り替えた。


「茜様、進まれるのでしたら、こちらの鳥居をお通りください。」


指し示された先には、古びた鳥居がそびえていた。

苔むしたその表面には、かつて刻まれていたであろう文字が消えかけており、不気味な雰囲気を漂わせている。


茜は深くため息をつくと、気を取り直したようにアグニを手に取り直し、一同に背を向けた。


「まったく……次で最後なんだから、ちゃんとついてきなさいよ。」


そう言いながら、茜は鳥居をくぐり抜け、さらなる戦いに挑む覚悟を決めた。

その後ろ姿には、炎帝としての気高さと責任感がにじみ出ている。


一方、摩耶や他の仲間たちは、少し距離をとりながらその後を慎重に追い始めた。

彼女たちの目には、それぞれの思惑がうかがえるものの、どこか一抹の緊張感が漂っていた。


鳥居をくぐり抜けた一同は、その先に広がる異様な光景に息を呑んだ。

目の前には広大な広場が広がり、その中に無数の鳥居が不規則に並んでいる。

それらは朽ち果てた木材や錆びついた鉄でできており、長い年月を経て傷んでいる様子が伺えた。

そして、その奥には巨大な門が鎮座していた。

門は不気味な威圧感を放ち、ただ存在するだけで一同の心に重圧を与えるようだった。


挿絵(By みてみん)


「ここは……どこじゃ……」


静流婆さんが低く呟いた。

その声には戸惑いと緊張が滲み出ている。


「静流さんも知らないのですか?」


茜が慎重に問いかける。


「あぁ……このダンジョンは、かつて村や町の住人たちの魂を鎮めるための祠がダンジョン化した場所じゃ。村や町で起きた飢饉、流行り病、飢餓、一揆など……負の歴史が凝縮され、再現されておると伝えられとる。野党や野武士の略奪も、その一つじゃな……」


静流婆さんの声が広場に低く響く。


「なら、これは……」


茜が視線を巡らせ、無数の鳥居と巨大な門を見据える。


「分からん。ただ、確かなことは……」


静流婆さんは、険しい表情を浮かべ、一同に向き直る。


「ここに潜む穢れは常軌を逸しておる。御館様……気を引き締めよ。」


一同は静かに頷き、警戒を強めながら進み始めた。しかし、その瞬間――。


前方の鳥居群が不気味な音を立てて震え出した。

そして、鳥居の間から黒い影が次々と現れる。

人影のように見えるそれらは、かつての村人、侍、野党、野武士たちの霊魂が幽鬼と化したものであった。

幽鬼たちは腐敗した鎧や武器を身につけ、虚ろな目で一同を見据えると、低い呻き声を上げながらこちらに向かってゆっくりと歩み寄ってくる。


「な、なんじゃと……!」


静流婆さんは目を見開き、苦い表情を浮かべる。


「どうやら、私達をやすやすと逃がす気は無いみたいですね……」


摩耶が冷静に観察しながら言葉を呟く。


「みんな、構えて!敵が来るわよ!」


茜が鋭い声で指示を出し、愛剣アグニを抜き放つ。

その刃には炎が宿り、戦場を照らし出すように燃え盛る。


幽鬼たちの低い唸り声と共に、広場は戦いの幕が上がる気配に包まれていった。

一同は緊張感を高め、戦いに備える。

それは、広場の穢れと彼らの決意がぶつかる瞬間だった。





一方、その頃の葵――。


彼は自分の意識がどこか暗い深淵へと引きずり込まれるのを感じていた。

気づけば足元は赤黒い血の海に覆われ、冷たく湿った感触が肌を刺していた。

視界には何一つ光がなく、ただ暗闇だけが広がっている。


「ここは……どこ……?」


震える声で呟くも、返答はない。

周囲には誰の気配も感じられず、静寂が支配していた。

葵は足を取られるようにふらつきながらも歩き出そうとしたが、何かに絡みつかれる感覚がして立ち止まる。

血の海の中から黒い手のようなものが伸び、彼の足を掴んでいた。


「……ッ!」


驚きと恐怖に息を呑む葵。

その黒い手は増え続け、葵の体を絡め取るようにして引きずり始める。

彼は必死に抵抗しようとするが、力が入らず、全身が徐々に深い闇の底へと沈んでいく。


暗闇は重く、冷たく、そして何よりも絶望的だった。

意識がどこまで沈み込んでいくのか、見当もつかない。

やがて、彼の周囲に囁くような声が響き始める。

それは怒り、嫉妬、憎しみ――怨念そのものが凝縮されたような不気味な声だった。


「……お前は……何故、生きている……」

「……消えろ……消えろ……」

「お前だけが助かるのか……?」


無数の声が混ざり合い、彼の心に重くのしかかる。

葵は耳を塞ぎたくても、黒い手に押さえつけられて動けない。

全身から力が抜け、視界がますます暗くなっていく。


「……助けて……」


弱々しく呟いたその声も、闇に吸い込まれていった。


葵は闇の中で膝を抱え、ただ蹲るしかなかった。

冷たく湿った感覚と重い空気に包まれながら、彼は自分がこのまま消えてしまうのではないかという恐怖に苛まれる。

周囲に響く怨念の声は途絶えることなく、彼の心を蝕み続けていた。


「……誰か……」


葵のかすかな声は、広がる闇に溶け、消えていった。






茜たちは防戦一方の状態に陥っていた。

幽鬼たちが次々と湧き出し、攻撃の手を緩めることなく襲い掛かってくる。

茜はその圧倒的な数に、徐々に苛立ちを募らせていた。


「あぁぁぁ!うじゃうじゃとうっとおしい‼」


茜の叫び声が空間に響き渡る。

感情が爆発し、彼女は炎剣アグニを振り上げ、周囲に襲い来る幽鬼を無慈悲に斬り払った。

炎の刃が空気を切り裂き、ヒュッと音を立てて幽鬼の体を貫通し、火花とともに燃え尽きていく。

炎の爆発とともに周囲が一時的に照らされ、茜の顔は怒りに満ちていた。


しかし、その反動で疲れが蓄積していくのも感じていた。

無尽蔵に湧き出る敵を前に、苛立ちと共に戦い続けることに限界が近づいていることは自分でも理解していた。


「イライラして巻き込まないでくださいよ。」


淡々とした声が茜の耳に届く。

振り返ると、摩耶が冷静な表情で幽鬼を次々と斬り伏せていた。

彼女の二刀の小太刀はまるで舞うように滑らかに、確実に敵を仕留めていく。

その動きは無駄がなく、機械的にすら見える。


「そんなことより、どうしますか?このままではじり貧ですよ。」


摩耶の言葉は、茜が感じていた不安を指摘するように響いた。

戦いのペースを落とさずに維持し続けることの難しさを、摩耶は知っている。

そのため、手を休めることなく戦いながらも、周囲の状況を冷静に見極めていた。


茜はしばらく無言で立ちすくんでいたが、やがて頷くと、再び炎剣アグニを高く掲げた。

その周囲に、炎が渦を巻きながら激しく燃え上がり、燃えるような熱気を放った。


「戦況が悪化する前に私が前に出て道を切り開くは。あなたは皆を連れてあの門に行きなさい。」


茜の言葉に、摩耶は一瞬だけ黙って頷いた。

その目には、茜の覚悟がしっかりと映っているのを感じ取り、すぐにその決意を理解した。


「わかりました。」


摩耶の言葉は冷静で、しかしその裏には確かな信頼と覚悟が込められていた。

茜はその一言を胸に、目の前の戦場に目を向ける。


茜がアグニを握りしめ、その剣から放たれる炎の魔力が周囲を照らし出す。

燃えるような熱気と共に、戦場が一層激しさを増す中、茜は全身を炎に包み込み、全力の力を発揮する覚悟を決めた。


「皆も準備して。これから一気に行くわよ!」


その言葉に、周囲の者たちは一斉に動き出した。

摩耶も背後でしっかりと支え、茜が進む先に道を開ける準備を整える。


茜の魔剣アグニが大きく振り上げられ、瞬く間に無数の幽鬼が炎に包まれ、次々に消し炭となって消えていく。

彼女の力を前に、敵はただ押しつぶされるように感じた。

茜が前進するたび、進行方向にある幽鬼たちはただ倒され、焼き尽くされていく。


その光景を見守る摩耶は、冷静に周囲の状況を見極めながら、一歩ずつ茜の後ろをついていく。

その間にも、彼女は必要な者たちを守るため、攻撃の隙間をついて、静かに敵を倒し続けた。


茜が炎の力を全開にして、道を切り開いて進む中、一同はその後を追いながら必死に戦い続けていた。

茜の炎剣アグニが繰り出す一撃一撃で、敵の幽鬼たちは焼き尽くされていく。


茜が門へと駆け抜けていくその瞬間、「ドン‼」と大きな音が響き、茜の体が前から吹き飛ばされて一同の間を通り過ぎていった。

茜の体はまるで弾かれたかのように、地面を滑るように転がり飛び、遠くの障害物に激突して止まる。


その異常な光景を目にした一同は驚愕し、思わず立ちすくんだ。

茜が吹き飛ばされるのを横目で見た摩耶は。「ハッ‼」と何かに気づいたその瞬間、前方から迫る強大な力に反応し、すかさず小太刀を抜いて防御の構えを取った。


「ギャイーン‼」金属がぶつかり合う大きな音が響き渡り、摩耶もその衝撃で弾き飛ばされる。

そのまま、摩耶は刹那達一同の間を通り過ぎていき、さらに後方へと飛ばされた。


一同は呆然としたまま、摩耶が吹き飛ばされる様子を見ていた。

だが、その目線が次第に前方へと引き寄せられ、恐怖と驚きの表情を浮かべながら、前を見つめる。


前方には、黒い長髪に豪華な礼装の軍服をまとった男が立っていた。

彼の手には、鋭く輝く軍刀が握られており、先ほど茜を吹き飛ばしたその一撃から、彼の力を感じ取ることができる。

男は冷徹な眼差しで、一同を見据えていた。


「一体、何者…?」


刹那の嘆きが虚しく響く。


その男の姿は、まるで戦場に舞い降りた死神のようで、重圧感が一同を包み込んだ。


挿絵(By みてみん)


一同が警戒して武器を構えたその瞬間、男は一瞬で刹那の前に詰め寄り、強烈な一撃を繰り出した。

刹那は腹部を直撃され、血を吐きながら宙を舞い、背中に背負っていた葵も一緒に宙へと投げ出されていった。

驚愕する間もなく、男は葵が空中でふらつく様子に気を取られている。


その隙をついて、千鶴と沙耶が男の両脇から攻めかかる。

しかし、男はその勢いを逆手に取るように、駆け寄ってきた二人の腕を掴み、そのまま力強く一回転させて二人を投げ飛ばした。

激しい衝撃で二人は地面に叩きつけられ、男はそのまま空中を舞って落ちてくる葵を受け止めた。


葵の傷口にそっと手を触れる男。

その姿を見た静流婆さんは怒りを込めて叫んだ。


「何故‼ 貴様が此処におる‼」


その時、茜が空から男に斬りつける。


「刀祢あぁぁぁぁぁぁ‼」


茜の激しい一撃が振り下ろされるが、男は葵を肩に担ぎなおし、軍刀で茜の攻撃を受け流す。

次の瞬間、摩耶は地面を這うようにして高速で駆け抜け、気配を消して男の胸に小太刀を突きつけた。


男は身を捻ってその攻撃を躱すと、摩耶はすかさず体術を交えた連撃を繰り出した。

男は全てを躱しきれず、いくつかのかすり傷を負い、その傷口から微かな黒い霞が滲み出た。

連撃を終えた摩耶が身を屈め、その後ろから茜が全力で両手剣を横に振り抜いた。


男は軍刀で防御するが、その衝撃で弾き飛ばされ、葵を落として後方へ飛んでいく。

すかさず摩耶が葵を確保し、茜は前に立って剣を突き出し、男に問いただした。


「刀祢‼ どうしてあなたが此処にいるの!」


だが、吹き飛ばされた男は茜の問いに応えることなく、左手に光る小さな白い玉を確認すると、倒れたまま腕を振って幽鬼たちに攻撃を指示した。

幽鬼たちは一斉に動き出し、茜たちに向かって襲いかかる。


その様子を見て、静流婆さんは慌てて叫んだ。


「御館様‼奴は、若から何かを抜き取り追った‼」


茜はすぐに男に詰め寄ろうとしたが、無数の幽鬼たちが道を塞ぎ、先へ進むことができない。


男はゆっくりと立ち上がり、茜たちを一瞥すると、冷徹な表情を浮かべてゆっくりと背を向け、手を上げてまるで「バイバイ」とでも言うかのように振い、幽鬼たちの群れの中へ姿を消していった。


「刀祢‼ 待ちなさい‼ それを返しなさい‼」


茜の悲痛な叫びが、戦場の静けさを破って響き渡る。




茜たちが男と争ってる頃、葵は暗闇の中で囚われていた――。


葵は膝を抱えたまま、暗闇の中でじっとしていた。

周りの冷たい空気を感じながら、動くこともなく座り込んでいた。


「はぁ~これは俺が持っていく…後は自由に生きろよ、俺…」


その言葉が耳に届いた瞬間、

葵の周りを取り巻いていた黒い靄が、まるで何かにかき消されたように、ふっと消え去った。


そして、黒い靄が消え去ったその瞬間、葵はふと周囲の静寂に気づく。

暗闇の中で、どこか遠くから風の音が微かに聞こえてきた。

しかし、それでも葵の視界に変わるものは何もない。


少しずつ、体に力が戻り始める。

膝を抱えていた手をゆっくりと解くと、体が固まっていたことを感じた。

葵は静かに立ち上がり、目を凝らしながら周りを見回す。

しかし、黒い靄が消えた今でも、依然として暗闇は深く、どこか不安な気配を漂わせていた。


「…あれ?」


葵はふとその場に目を向ける。

何かが変わったのだろうか。

静寂の中にわずかに感じる喪失感。

葵は自分の両手を見つめ、涙を流していた。


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