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転生した世界の現実は甘くなかった  作者: 蓮華
第二章 分水嶺 
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初めての外出 (画像あり)

画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい

あれから5年が経ち、俺は相変わらず甘々な生活と、ボコボコと称する訓練を続けてきた。

昨日は10歳の誕生日を迎え、家族や分家の皆さんだけでなく、皇家、黒羽家、そしてその分家の方々まで来てくれて盛大に祝ってもらった。

正直、すごく嬉しかったのだが、来賓の皆さんへの挨拶だけで俺の精神はゴリゴリとすり減り、中盤あたりからの記憶が薄れてしまっている…


挿絵(By みてみん)



それはさておき、今日は10歳になって初めて外出が許された記念すべき日だ。

…とはいえ行き先はダンジョンなのだが。

今、家族みんなでダンジョンに向けて出発の準備をしているところだ。

俺はリビングで沙耶が入れてくれたココアを飲み、ほっこりとくつろいでいる。


沙耶ももう15歳になり、幼さの残っていた面影は薄れ、綺麗なお姉さんに成長している。

もともとスタイルが良かったが、年を重ねるごとにさらにメリハリが出て、今では抜群のプロポーションを持つセクシーな巨乳の女性に成長していた。

俺も10歳になり、時折そんな沙耶を見ていると…

何というか、息子が反応してしまうこともあって、悟られないようにするのが大変だ。


そんなことを考えながらココアを飲んでいると、準備ができたのか摩耶がリビングに入ってきて俺を呼びにきた。


「葵お坊ちゃま、準備が整いました。」


そう言って軽く頭を下げると、何事もなかったかのように俺を抱きかかえ、玄関ホールへと向かって歩き出した。

成長するにつれて何度か「歩けるから、もう大丈夫」と言ったことがあるが、そのたびに摩耶は悲しそうな顔をして絶望しているような様子を見せるので、今では諦めて大人しく抱きかかえられることにしている。


一度、「摩耶や沙耶を引き連れて自分で歩いてみたい」とお願いしたことがあったが、その時は「ダメです」と全力で拒否されたこともある。

やはり俺の安全を第一に考えてくれているようだ。

うん、そうだ、そうだと信じたい。


摩耶に抱えられながら玄関ホールに着くと、そっと床に下ろしてくれる。

両脇に綺麗に並んだメイド達と、その中心に立つ母様と姉様たちに向かって俺は挨拶をした。


「お早うございます、母様、刹那姉様、千鶴姉様。」


俺の挨拶に対し、母様や姉様たちは微笑みながら挨拶を返してくれる。

次に、摩耶と沙耶、そして並んでいるメイド達に向かっても挨拶をする。


「お早う、摩耶、沙耶。ここまで運んでくれてありがとう。そしてメイドの皆もお早う。」


すると、メイド達が一斉に頭を下げ、声を揃えて挨拶を返してくれる。


「「「お早うございます、葵様」」」


挿絵(By みてみん)




うん、今日もいつも通りの朝だ。


「葵、ダンジョンに行く前に探索協会で探索者登録をしましょう。」


母様が優しく微笑みながら言う。

俺たちは屋敷を出て、準備を整えるために探索者協会へ向かうことになった。


探索者協会。

そこは探索者や冒険者たちにとって、なくてはならない場所だ。

探索者や冒険者達が仕事の斡旋を受けたり、各種サポートを受けたりするのはもちろん、新規の探索者登録、訓練、さらには講習までを網羅している巨大組織である。

協会は政府や各国の探索者ギルドと密接に連携し、ダンジョン関連のすべてを取り仕切る役割を担っている。


それだけではない。

探索者や冒険者たちがダンジョンから持ち帰ったモンスターの素材や財宝などを、探索協会が直接買い取る仕組みも整備されている。

これにより、素材や財宝が市場に出回りやすくなり、ダンジョン攻略が経済全体を支える一大産業となっているのだ。


そして、探索協会の施設はただの事務的な施設ではない。

その中には数多くの企業が出店し、装備品や薬品、武器、防具、魔法のアイテムなど、探索者が必要とするあらゆる物を取り揃えている。

中には試作装備を試験的に販売する店もあり、新たな発見や掘り出し物が見つかることもあるらしい。


さらに、協会のビル周辺にも商業施設が立ち並び、探索者や冒険者が持ち帰った素材や財宝が販売されている市場が広がっている。

それらを目当てに一般の人々も多く訪れ、街全体が活気に溢れている。

まさに、ダンジョンと探索者たちの活動が街の経済の中心となっているのだ。


俺はそんな探索協会の巨大なビルに行けるのだと、先日から心を弾ませていた。

テレビや雑誌で見たあの荘厳なビル。

そして、探索者や冒険者たちの活気が満ち溢れた市場の様子。

俺の心は期待で膨らみ、いろんな想像をしながら今日を楽しみにしていたのだ。


屋敷の玄関を出ると、母様が先導してくれる。

俺は母様と一緒に探索協会へ向かうため、しっかりと歩調を合わせた。

母様は俺に優しく話しかけながら、道すがら探索協会について改めて説明してくれる。


「葵、探索協会はね、ただの登録や手続きの場所じゃないのよ。あそこでは多くの人たちが働いていて、ダンジョンの攻略や安全管理のために尽力しているの。特に、これから探索者になるあなたにとって、協会は大切な場所になるわ。」


母様の言葉を聞きながら、俺の期待はますます高まっていく。

協会に行けば大勢の探索者たちの姿を見れるんだ。

色んな店や商品等を母様や姉様達に案内して貰おう。

そんな事を考えながら、俺は屋敷の外、初めて屋敷の敷地外へと出たのだった。


「初めて外に出た気分はどう?」


母様が優しく、けれど心配そうに聞いてくる。


「特に問題ないよ。大丈夫。」


俺は自信を持って答えた。

実際、外の空気を吸ったり、魔力が微かに漂う環境に触れたことで気分が悪くなることもない。

多少、敷地内より魔力が濃く感じる程度だ。


この世界で男性が外に出ることは一大事だ。

男性は生まれた瞬間から「魔力隔離結界」と呼ばれる特殊な結界の中で生活を余儀なくされる。

この結界は、特に外的魔力に弱い男性の身体を保護するために張られている。

特に、生殖器、つまり金〇は魔力の影響を受けやすいとされており、慎重な管理が必要だ。


幼い頃からこの環境で育てられることで、男性の身体は徐々に魔力に対する耐性を形成していく。それでも、この耐性が十分に備わるのはおよそ10歳頃。それまでの間、男性は結界外の世界に出ることを禁じられている。


そして、今日――10歳の誕生日を迎えた俺は、ついにその結界を出て、外の世界を体験する許可を得たのだ。


母様は俺の表情や態度を見て、少し安心したように微笑んだ。


「そう、それなら良かったわ。何か気分が悪くなったりしたらすぐに教えてね。無理は禁物よ。」


「分かったよ、母様。」


母様の言葉には優しさと慎重さが滲んでいた。

俺が健康に育ったことが、母様や姉様たちにとってどれだけ重要なことか、そしてそれがどれほど大切にされているのか、改めて感じた瞬間だった。


「では、行きましょう。」


母様がそう言いながら歩き出した先は、屋敷の前の道を挟んでぽつんと立っている一軒のプレハブ小屋だった。


俺は一瞬、頭に疑問符が浮かんだ。

家の前にこんな小屋、昨日までは無かったよな?


そんなことを考えながら、道を渡ってそのプレハブ小屋の前に着くと、母様が笑顔で振り返って言った。


「着いたわよ。」


俺は小屋をじっと見つめながら、ますます疑問を深めて母様を見上げる。

母様は微笑みながら、プレハブ小屋の入り口横に立てかけてある木の看板を指さした。


指を差された方向を見ると、そこには木製の手作り感満載の看板があった。

俺は看板に近づき、そこに書かれた文字を読み上げる。


「探索協会臨時出張支部……御剣家前?」


読み終わった瞬間、心の中で「あ、これはヤバいやつだ」と思わざるを得なかった。


まず、この看板の見た目からして怪しい。

木の板はどこかから適当に持ってきたような古びたものだし、そこに張り付けられた白紙の用紙には、ボールペンで無理やり書いたような字が塗りつぶすように描かれている。

さらに、その文字は木の板のデコボコに引っ張られてガタガタで、歪みまくっている。


思わず母様を見上げた俺の表情は完全に困惑そのものだった。


「母様、これ……」


母様は俺の疑問など意に介さず、にこやかな笑みを崩さない。


「もちろんよ。葵、初めての探索者登録には特別な場所が必要でしょ?」


特別どころか、これはどう見ても場違いだろう――

そう心の中で突っ込みつつも、母様の自信満々な態度に圧されて、何も言葉を発せられなかった。


なんとか冷静になろうと深呼吸をしたが、どうしても気になってしまい、慌てて後ろを振り返った。


すると――

後ろに控えていた刹那姉様や千鶴姉様、そして沙耶や摩耶までが、まるで同時に申し合わせたかのように顔を逸らしていた。


「……え?」


心の中が一気に騒がしくなる。

さっきから静かだと思っていたが、これはどうやら彼女たちは最初から知っていたようだ。

俺がこの状況にどう反応するか、内心で面白がりながら様子を見ていたに違いない。


「姉様……」


声をかけようとするも、みんな揃って目を合わせようとせず、ちらっと視線を感じたかと思えば、慌てて逸らされる始末だ。

まるで全員が「私は何も知りませんよ」という雰囲気を醸し出している。


「これ……どうすればいいんだ?」


混乱する頭の中は、さっきまでの期待や希望が見事にかき乱されて、今では完全にぐちゃぐちゃになってしまっている。


そんな俺の心情など露知らず、母様だけは至って平然と微笑んで、プレハブ小屋の扉を開ける。


「ほら、葵。準備はできているわよ。大丈夫、あなたのために特別に整えた場所なのだから、自信を持ちなさい。」


全く自信を持てない状況で、俺は母様に促されるまま、プレハブ小屋の中へと足を踏み入れるしかなかった。


「さあ、入りましょう。葵のために特別に用意してもらったのよ。」


……本当にこれでいいのか?

頭の中の疑問が消えないまま、俺は母様に促されてそのプレハブ小屋に足を踏み入れた。



画像は自動生成AIによるものなので、イメージや雰囲気で楽しんで下さい。


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