帰り道
この作品はフィクションです、実在の人物、地名、名称等とは一切関係ありません。夏のホラー2023投稿作品です。
車を走らせ秘境の宿へと向かう道中。
■現在地 伊尾木~菜平
「……………………」
「……………………」
終始無言の二人を乗せたまま、車は走る。
■現在地 菜平~刺除
「………………………」
「なあ、なんで黙ってんだよ?」
「別に」
■現在地 刺除~瑠璃坂
「……………………」
「この辺、すっごい山道だよな?」
「そうね」
■現在地 瑠璃坂~縣
「……………………」
「もう、何なんだよ! せっかく温泉に行くんだから、もう少し楽しそうにしろよ!」
「そんなの、私の勝手でしょ?」
「こっちまで、気が滅入るって言ってんだよ!」
■現在地 縣~韮岩
「──ッ! ──ッ!!」
「──────ッ!!」
激しい口論が繰り広げられながらも、車は目的地へ向かう。
■現在地 韮岩~生島
「────ッ! ────ッ!!」
「────ッ!」
■現在地 生島~葦ノ沢
「──ッ! ──ッ! ──ッ!」
「────ッ!」
■現在地 葦ノ沢~絶景の湯
「ヒック……ヒック……」
「わ、悪かったよ……もうすぐ温泉着くし、そこでちゃんと説明するよ」
しゃくり上げるように泣く彼女を宥めつつ
引き続き、目的地へ向かう。
■現在地 絶景の湯到着
「予約した樺沢です」
「ようこそいらっしゃいました、樺沢さま。お部屋にご案内いたします」
「……………………」
──そして翌日の帰り道。
「葦ノ沢の直前で検問? チッ、えーっと……『田畠』まで迂回すれば躱せるか?」
検問をすり抜け、車を快適に飛ばす。
■ルート変更 葦ノ沢→田畠
「交通事故渋滞? そうすると……この『湯峰』ルートが一番早いか?」
遅れを取り戻すかのように、車を加速させる。
■ルート変更 縣→湯峰
「刺除で落石? クソっ! やけに、足止めが多いな! 『酒井口』まで迂回? あー! めんどくせぇ!」
さらに速度を上げ、車は走る。
■ルート変更 刺除→酒井口
「ようやく伊尾木まで来た。もう少しで帰れる……っ!」
長めのカーブを曲がった先で
車道に赤い服の女性がフラリと飛び出した。
「まさか!? ──っ!! 避けきれない!!」
キキキキーーーーッ!! ドッ! グワッシャン!!
急ブレーキと急ハンドルを切るが
車はカーブを曲がりきれず、ガードレールに衝突
そのままガードレールを突き破り、崖下へと転落していく。
事故現場には、人影などはなく
大きく蛇行し崖下へ向かう、タイヤ痕だけが残っていた……。
なぜ、帰り道に足止めを食う事が多かったのか? 帰り道に辿った、地名の頭の文字を並べてみれば……きっと、分かります。