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月曜日の巫女  作者: 桜居かのん
第一章 月曜日の憂鬱
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8



「目を瞑って。私の手の温度を感じて下さい。

呼吸はゆっくりと。

私が言うまで目は開けないで」



いつもの柔らかな先生の声よりも少し低い声。

私は言われるがまま目を瞑る。

不審がっているのに何かわかるなら試したい自分がいる。

先生と手を重ねるなんていつもの私なら恥ずかしいはずなのに何故か冷静だった。


じわり、と先生の手の温度を感じていたら、何か葛木先生が声を出している。

お経だろうか。

しまった!もしかして私、怪しい団体に誘われていたのかもしれない!

ニュースでもそういうのを見てるのに!


私は急に冷静になり、慌てて目を開け手を離そうとした。

なのに出来ない。

気持ちはとても焦っているのに、身体に熱いものが流れてくる。

そして葛木先生の声が心地いい。

私はその気持ちよさに流されないよう必死に抗った。



『いや・・・・・・。嫌!!!』



バチリ!とスパークしたように手が離れ、

気がつけば一気に目も開いていた。そして目の前には尻餅をついて呆然と私を見上げている葛木先生がいた。

逃げるなら今だ!私はその場を離れようとした。

だがその時、目の端に丘の方から見たこともないオレンジの光が見えた。

さっき見ていた松明の明かりなんかじゃない。

私は思わずそちらを向いた。



「見えますか?」



先生が立ち上がって私の側に来ると声をかけた。



「先生が何かしたんですか?一体何なんですか?」



私は横にいる葛木先生を睨んだ。

間違いなく私に何かしたんだ。



「実はこれを見えるようにしようと思ったのですが、

貴女自身に拒否されてどうも自分で解放してしまったみたいで」



「何言ってるかさっぱりわかんないです」



「貴女には強い霊感があるのですが、

守護されている方々がそれを閉じていらしゃったんです。

それで私からその力を少しでも解放して貰えないかお伺いを立ててたら、

貴女が自力でドアを開けてしまった、という感じでしょうか」



「・・・・・・はぁ」



「信じてないですね?」



「私オカルト大好きですけど、今まで幽霊見えたことも無いですし、

そんな事言われたって」



「うーん、詳しく話すと長くなるかと」



困ったような顔をする先生を私は今だ不審そうな目で見つめる。

そして向こうに見えるオレンジ色の光が一旦強くなったように感じそちらを見た。



「オレンジ色の光の中にいるあの人達なんですか?

何してるんですか?」



「陰陽師って知ってますか?」



「そりゃぁもちろん」



「私たちはその陰陽師なんです」



「・・・・・・は?」



私の呆けたような顔に、

先生は苦笑いを浮かべる。



「こうやってあの邪気を祓うのも私たちの仕事の一つで」



「はぁ、邪気を。って先生も陰陽師なんですか?!

あの五芒星かいたりする?」



「えぇ、まぁ」



葛木先生は頬をかきながら照れくさそうに答えた。

私はそんな先生を間の抜けた顔で見た。

だって正直信用しろと言われても。

いつも世界史を教えてくれている学校の先生が自分は陰陽師だ、なんて言い出して、

はいそうですか、なんて納得できるわけがない。


陰陽師はあの安倍晴明が有名で、

小説でも漫画でも沢山出てきてしらない人の方がいないだろう。

でも目の前にその当人がいると言われても。

そもそも現在にまだいるだなんて。



「小説や漫画とかに出てくるあの陰陽師ですよね?安倍晴明とかの」



「えぇ。安倍晴明の血筋を濃く持つ一族は京都を守護していますが。

ちなみに小説家や漫画家の中には陰陽師の血筋を持つ者も多いんですよ」



「えっ!?」



「陰陽師の家系に生まれたから必ずしも霊力があるわけじゃ無いんです。

低かったり、無いものはそういう仕事で国民に陰陽師の存在をずっと植え付ける仕事をする。

人気のコンテンツに仕上げて広く興味を持たせるのも大切な仕事なんです」



「それは、国民が陰陽師という存在を知っていないと、

実際の陰陽師の人達が困ると言う事ですか?」



「さすが理解が早いですね。

そう、国民が陰陽師という存在を忘れないことが我々の力になるんです。

忘れられたら私たちの存在意義は例え裏方であっても意味も力も持たなくなる」



私の質問に、何だか先生は嬉しそうに答えてくれる。

興味を持ってくれたことが嬉しいのだろうか。



「先生方が本当に陰陽師だったとして、

普通みんな陰陽師が今も存在するなんて知らないですよね?」



「まだ信じて貰えてないのはよくわかりました。

そうですね、国民のほとんどは私たちが実在することを知らない。

でも必要な人達は知っているからそれで良いんです」



「天皇、とかですか?」



「まぁここが私たちの本部がある場所ですから」



私は驚いて先生を見る。

皇居、そうか、都心でこの場所なら一般の人に気づかれる事はほとんど無いだろう。


私はじっと考えていた。

陰陽師には興味がある。むしろ色々聞きたい。

でもそういえばなんで私はここに連れてこられたんだろうか。



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