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日曜日の夜の0時前、寮の薄暗くなった入り口で待っていると一台の黒い車が前に停まり、運転席から葛木先生が出てきた。
「こんばんは。こんな時間にすみません。
外出許可は得ていますから安心して下さい。
眠くはないですか?」
「はい、ちょっと寝たので大丈夫です・・・・・。
それでどこに行くんですか?」
葛木先生が開けてくれた助手席に乗り込みシートベルトをする。
「こんな事を言うのも何なのですが、
私を信頼して任せてはもらえませんか?」
まっすぐに見つめる葛木先生の言葉は、
ようは深く聞かないで欲しいというという意味だとわかった。
「わかりました。でも私には訳がわかりません。
後で全部説明してくれますか?」
「私は出来るだけ話したいと思っています。
でも少しだけ時間を下さい」
私の返答を聞くまでもなく、
先生は前を向いて車を発進させた。
高速を乗り継ぎ、見えてきたのは久しぶりのビル灯りの眩しい都心だった。
そして車は大きな堀に沿って走り、ある門の前に止まった。
そこにいる警官らしき人達が運転席に近づいてくる。
先生は窓を開け、
何か見せた後小さな声で話すと対応していた警察官が合図を送り門が開いた。
そこを車は進む。
少し進んだ先にぽっかりと広がった場所があり、そこに車は停まった。
あぁそうか、ここは皇居の中だ。
普通の人がこんなところに夜入れるものなのだろうか。
「少し歩きますが着いてきて下さい」
私は頷くと車を降りた。
そしてきょろきょろと周囲を見渡す。
車はこの一台だけ、人も誰もいない。
周囲は緑もあって静かだ。
なのになんだろうかこの変な感じは。
妙な顔をしていたのだろうか、
葛木先生が私の顔を見て声をかけた。
「気になりますか?」
「何か、あるんですか?」
「着いたらわかると思います」
いたって静かな葛木先生に私は少し怖くなった。
だが、その何かが気になって先生がつけた懐中電灯を頼りに薄暗い道を進む。
すると少し開けた場所に出て、目の前には小高い丘が見えた。
その小高い丘の上では松明が焚かれ、かなりの人がいるのがわかった。
その明かりがここまで照らしているせいか、自分の足下がわかるくらいに明るい。
「見えますか?」
「はい・・・・・・人が沢山いるみたいですが」
「それだけですか?」
まるで試すかのように聞こえてカチンときた。
何もかもがさっぱり分からないっていうのに。
「他に何があるんですか?というかほんと何なんですか?!
さっぱりわかんないです!」
私はさすがに苛立ってきていた。
質問するな、でもわかるな?なんて身勝手にもほどがある。
こっちはただの高校生で訳も分からず引っ張られてきたのに。
「すみません。東雲さんが怒るのも当然ですよね」
急に謝られてて思わず、いえ、なんて答えてしまった。
「でももう少し私の我が儘に付き合って下さい。
両手を出して貰えませんか?」
そういうと葛木先生が手のひらを上にした状態で両手を出してきた。
不審そうに先生を見れば促すような視線。
私は少し考えた後、おずおずと両手を先生に重ねた。