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ゆめゆめガールRRR(下)

七、感情だけは残る



「おーい? 弓子さん、何してんの」

 声のした方、少し離れた場所に誠がいた。トイレから出てきたところらしい。

「え、や、だって。え?」

 そして私の腕には手ごたえがなくなっている。そこにはもう誰もいない。ただ無為の、虚無の空間があるばかりだった。見回しても公園には私と新しい誠――右腕にはしっかり包帯がある――がいるだけ。

「ああ、紙持ってきてくれてありがとう。いや、こんなこと頼めるの君だけだよねえ」

「どういうこと。さっきまでもう一人、誠が居たんだよ」

 おでこを押さえて、誠は数秒考える。

「ああ、そのうちこういうことも起きると思ってたんだよ。多分、そいつは幻覚オオカミだ」

「いつ私が誠を作ったっていうの」

 さっきまでいた誠が偽者で、もういないなんて。あんなに優しくて、助けに来てくれる……あ。

「その顔は、どうやら思い当たる節があったようだね」

 昼間に椿嬢と話したこと。ガール・ミーツ・ボーイ恋愛とはなんぞやいつかは白馬に乗った素敵な王子様が待ってる私を迎えにきてくれるの彼はいつだって困ったときには助けに来てくれるのもしかして誠が私にとっての……。

 私は、誠に白馬の王子様を見る。そして「白馬の王子様バージョンの誠」という幻覚オオカミを妄想で作り出した。本物の誠は本当にトイレに入っていて、偽者の誠はメールしてきた方。助けに来てくれたのも偽者。私は一人で右往左往していたってわけ……かあ。

「ちょっと誠、この携帯のメール見て」

「……もちろん何もないよ」

 彼は察しているようで、にんまりと笑って言う。私はそれを見てため息しかでない。

「いやビックリするよね、もう一人の僕なんてさ。きっとそいつは君にとってものすごく都合の良いように――君の好みに曲解された僕なんだろうな。ちゃんと君に優しくて、ちゃんと君のそばに居るんだろう。ハハッ笑える」

 大爆笑の彼を殴りながら、私は消えてしまった偽者のことを考える。

「そうよ。ちゃんと危ないときに駆けつけてきてくれたんだから」

「それはそれは。まるで白馬の王子様じゃないか」

 こいつ、知ってるのか。それとも単なる勘か。

「残念ながら僕は白馬の王子様とは程遠い人間でね。トイレで紙がなくて君に持ってきてもらうくらいだし。君が危険なときにも助けにいけない、確実には」誠は無神経に、馬鹿のように、悪魔のように笑い出す。「だけど思うのは、いまだにそんな手垢のついたものが通用し続けてるなんてどうかしてるってことだな。 白馬の王子様なんて、何もせず待ってるだけの女の子の、都合の良いファンタジーだよ」

 私が生み出した存在だし、そういう夢に浸ったことは言われても仕方ない。だけど。

「……彼は確かに偽者でもう消えてしまったけど、それ以上言うと蹴るよ。彼が消えたからって、彼が言ったこともさっきまでの私の気持ちも消えるわけじゃないから」

 誠は真顔に戻って、静かにつぶやく。

「悪かったよ、もう足が踏まれてるけど謝るよ。確かに、感情だけは残る。その彼にとってはそれが救いだったと思う」

 水面を見つめる誠。池にはクリーム色の月が映り始めている。

「それにしても怒って先に帰ったと思ってた」

「男子トイレに長くいられるかっての。なんでトイレに入ってるときに返事しないのよ。それだけでだいぶ考えることが違ってたのに」

「やー、自分がソレをしてるときに人と話せるもんかい?」

 それは、まあ確かに。

「それに君が出て行った後に一度電話をかけたんだよ」

「ああ、出なかったもんね。あの時、怖くて。自分の見てるものが信じられない感覚。底なし沼の上に浮かべた板を辛うじて渡ってるみたい」

 誠が急に私の目を覗き込む。顔が近い。切れ長の瞳がピッと線のようになって笑う。

「よし、お詫びにおごってあげよう。場所は駅前の『浪漫珈琲』でいいかな。あそこはワッフルが旨いんだよ。こういう何かちょっと落ち込むときには、甘いものが一番だ。温かくて甘い、ココアなんかがね。まあ僕は、何と言われようと焼きたてワッフルのバニラアイス乗せを食べるけど」

 誠はもう一人の彼とほとんど同じことを言っている。私にとって都合の良い――好みの男である「彼」が言った台詞のはずなのに。好みの男?

「じゃあ、そうね。トイレットペーパーと迷惑代くらいはゴチになります。ブラックコーヒーを頂こうかな」

「大人だね。たんと食べるがいいさ。ま、食べ過ぎると太るんだけど。そいつが現実ってやつか」

 バニラアイスが好きな誠は、夜空を見上げて嬉しそうにつぶやく。



八、窓の外はブラックホール



 ワッフルの余韻を楽しみながら家に帰る。門は赤いランプが点灯しているから、ドアロックがかかっているようだ。インターフォンを押すと、お父さんが出た。

「門限を過ぎてるぞ。こんな時間まで何をしてた」

 さっき店で確認した時刻は七時だった。

「友達と話していて、遅くなりました」

「本当に友達か」

 少なくとも彼氏ではないな。

「本当です。私がお父様に嘘を吐いたことがありますか」

「……とりあえず、入れ」

 八つの赤ランプが順に緑色になっていき、八重にかけられたドアロックが外れていく。門を過ぎると、再施錠する音が私の心に響く。

 聞く度に思う。

 ――このドアロックはきっと侵入者を拒むためではなく、中の人間を外に出させないようにするためにあるのだろう。

 敷石を渡りながら庭を横目に見る。そこには幹から切られてしまったリンゴの木がある。好きな果物のはず、しかしそれを食べていた記憶はない。ある時、その木を伝ってこの家から脱出しようとしたけれど、結局お父さんに見つかってしまってリンゴの木は切られてしまった。もう実をつけることはないし、もう脱出する方法はない。

「ただい――」

 玄関を開けるなり毛むくじゃらの手が私の頭を掴む。そのまま地面に引きずり倒される。視界の端で、玄関の靴がバラバラと跳ね回った。

「こんな時間まで何をしてた」

「……友達と話していて、遅くなったのです」

 髪を引っ張られてぐいぐいと冷たい地面に押し付けられる。

「門限は何時だ」

「六時です」

 私、普段どんな生活してたんだっけ。思い出せない。いったん自分の意識が変化し始めると、もう元には戻れない。これは虐待か? 躾の範囲か? 私の日常ってこんなだっけ?

「今、何時だ」

「……七時半ですか」

「知るか。誰が悪い?」

「私です」

「もう先に家族は夕飯食べたからな!」

 そこまで言ったところでお父さんは不意に立ち上がり、無言で自室に入っていった。ドアを壊れそうなほど強く閉じる。理不尽なまでに大きな音で。

「……終わり?」

 顔についた小石とホコリを払うと、上がって廊下を歩く。光の漏れる居間に着くと、痩せた母さんが目を煌々とさせてテレビを見ている。

「ただいま帰りました」

 返事はない。ソファに横になって、家庭内暴力ドキュメンタリーの再現ドラマを見て泣いている。いつものことだ。その家庭内暴力がテレビの中のことで、現実にあるってことを――あまつさえ自分たちがそれに類することをしているのに気づいてすらいない。私も忘れていたけど。

 家庭内暴力がただの泣ける話の一要因になっている。彼女の涙を見ていると、胃液が逆流してくる。

「何みてるの、早く勉強して寝なさい」

「すみません。お風呂に入ってからやります」

 浴槽に湯を張りながら、二階に行って荷物を置く。自分の部屋で深呼吸する。右の本棚には自分の好きなものばかりが並んでいる。左には親が薦めた本。学習机には教科書が置いてある。ここだけが私の場所で、ここだけが私の聖域。

 しばらくイスに腰掛けて、目を閉じる。身体がぐんにゃりと曲がり、暗闇で足場が崩れ落ちるように感じてすぐに開ける。さっきまでと何一つ変わらない景色だったけど、心臓の鼓動はまだ残っている。

 窓の外は闇が濃くて何も見えない。敷地が広くて月明かりもないから、まるで世界からこの家以外全てなくなってしまったようだ。

「ここが、現実の、私の――家か」

 階下でタイマーが、湯を張れたことを告げた。

                  ★

 湯船に浸かりながら、小さな頃の記憶が蘇る。ずっと昔、といっても十年も経ってない幼稚園か小学校低学年のとき。

 私はお風呂がどこかに繋がっていると思っていた。湯煙で何もかもの輪郭がぼうっとするとき、浴槽の底が抜けてどこかに繋がるのだと。馬鹿馬鹿しいけれど、幻覚オオカミになりかねない。

 しかし仮にそうなったとして、本当に脱出できるわけじゃない。お風呂の底に頭をぶつけるだけだ。痛い。それが現実。

「逃げ出したときはいつも連れ戻されて殴られてた……気がするし」

 風呂の底が「どこか」に繋がる。ここではない「どこか」に。具体的な外への想像力が全くないところが不思議だが、それはきっとお父さんに絶対に連れ戻されるとわかっていたからじゃないだろうか。どこか人を超越したような、私を連れ戻しに来るお父さん。絶対的支配者。

 小さな私は諦めきったせいで――脱出して、どこそこへ行こうなんて考えなかった。ただ、ここにはいたくないって気持ちだけがあって、家の外には何もないだけの闇。

「どうして気づかなかったんだろう」

 お腹に、煙草を押し付けられた跡があった。傷は探せばもっとある。小学生の私は正視するのを拒否して自我を保っていたのだ。記憶の中では、私は虐待なんか受けていない。私は。「私」は?

「もしかして……でも」

 風呂を上がって急いで着替えていると、暗がりから父さんが覗いていた。背筋が凍りついて手が止まりそうになる。慣れないブラをつけていると、とうとう脱衣所に入ってきた。肩を撫でられる。

「今日は、お父さんにサービスする日だろ」

 心臓が奥深くへキュッと縮こまる。足場が歪み、膝が震える。煙草の臭いに胃が収縮して口の中が乾く。

 今、何て言った?

 聞こえなかった。

 おかしい。耳鳴りがして聞こえない。

 そうだった、思い出した――私、生まれつき耳が聞こえなかったんだ。だから何も聞こえなかった。私は平凡な家庭に住んでいる、生まれつき耳が聞こえない女の子だった。

「おやすみなさい」

 急いで自分の部屋へ行こうと階段を上るが、途中で足首を掴まれた。蹴り飛ばしてなんとかドアを閉じ、もたれて座りこむ。のしのしと上がってくる足音に、ビクンと肩がひきつる。なんとか堪えながら学習机のイスをドアノブに引っ掛ける。

 瞬間、ノブが回ってドアが押される。しかしまだ耐えられる。

「開けろ」

「やめて……ください」

 意識が混濁する……。

 見慣れた部屋が、ピンクと蛍光グリーンのツートンカラーになってビックリハウスのようにガラガラと回転しだした。お父さんが開けろと言ったら開けなければならない。違う。開けたらダメ聞こえてないのだから。

「なあ」

 身体中の関節がおかしな方向に曲がり出して、手首が肘の外側に、背骨が逆方向に曲がる。ドアから黒い煙が現れ、耳から私の脳ミソに入り込んで呪文になって血液になって巡って歯が抜ける。掴まれた足首が腐りだして歩けない。私は床に倒れこむ。

 ドアが叩かれ――殴られる。強烈な振動が私の身体に伝わる。

「ふざけるなよ」

 その度に木製のドアがボコボココッと沸騰する粘液のように膨らむ。もうすぐ弾け飛んでしまいそうだ。窓の外は闇で何もない。世界はこの家しかない。この家を支配するお父さんは世界を支配している。世界を支配する存在。

 神。

「お前はおれのものだろ。学校に行かせてるし飯も食わせてやってるのに、どうして親の言うことを聞かない。お前をこんなに愛しているんだ」

 どうして、こんなに醜い私を愛してくれている神様に反抗している? 私は無駄なことをしてるんじゃないか。いいお父さんじゃないか。

「……今ならまだ許してやるぞ。救いようのない馬鹿女のお前でも、おれがずっと守ってやる。いい女になれるように教育してやる」

 早く開けないと、この家は――世界は怒った神様にグチャグチャにされてしまう。このドアのように。私の部屋のように。これは試練。私の忠誠心を試しているのかもしれない。私はイスに手をかけて言う。

「ずっと守ってくださるのですか」

 ドアが少しだけ開く。その隙間からオーラで光り輝く御顔が見える。

「ああ。ルールが守れれば、だが」

 厳しいけれどとるべき行動を示してくれる神様。世界が従うべき絶対的基準。大きな光の腕が伸びてきて私をこの苦しみから救ってくださろうとしている。

 隙間から、頭を撫でようと光の手がゆっくり来る。私は目を閉じて待つ。救済のときが迫っているのが気配でわかる。あと五十センチ。あと二十センチ。

 ――ああ、喜悦と希望と豊穣とに、私はその身を捧げます。胸が痛いほどに、苦おしいほどにお父様を愛しています。椿嬢が言っていた恋愛がどういうものか、わかった気がします……。

 ぱさん。

 その時、右の棚から本が落ちた。反射でそちらを見ると、私の好きな本だった。両親には秘密の本。小学生が読むのはどうかっていう本。

『アトム・オブ・ザ・リビングデッド』。

 おどろおどろしい表紙にゾンビの絵が描いてある。私はそれを怖いなんて思ったことがない。

 それは蘇りの象徴だ。誠はそう言った。それは崩れてグチャグチャになっても辛うじて残っている、アイデンティティの象徴だと。

 ゾンビのようにぼろぼろな昔の私はどこだ。恐怖を正視できずに記憶を改竄するダメな私は。全身に虐待の跡がある私は。誠とずっと図書館で話しあった私は。

 ――誠。

「間に合った……かな」

 窓から声がした。

「玄関で君のお母さんに締め出されちゃって、大変だったんだよ。塀を登って屋根伝いにここまで来たんだけど、忍者かよ僕はって思ったね。まあ、白馬の王子様だったらもっとかっこよく駆けつけてたところだろうけどさ」

 いつもの気取った様子で、誠が話す。誠、誠、誠が来てくれた。

「どうしたんだい、ねぎらいの言葉一つくれないのか」

「……遅いよ」

 部屋が歪んで見えるのは涙のせい。幻覚のせいじゃない。

 私は立ち上がって、光の手から逃れる。振り返って見たそれは、もうすでに輝きを失って、私がずっと恐れていたあの「黒い腕」になっていた。



九、最後の幻覚オオカミ



「おい、開けろ!」

 黒い人型の何かが大声をだしてドアを殴るから、ガタガタと部屋が揺れる。グチャグチャになった部屋も私も、誠が来てくれたから直った。

「さて、あそこで君のお父さんが喚いてるけど、それはどう見える」

「黒い人型。体育館の床下にいたような」

 彼はフ、と笑って言う。

「いなかったんだけどね、それは。さて、根深いそいつを今から解除しよう。どうやら神を解除するだけじゃあなく、恐怖の対象としての黒い人型も解除しなくちゃならないな。君の目に、父親は父親に見えるようにする。そして恐怖の正体を見極めてこの家を出る。そうだな、椿嬢の家にでも泊めてもらうんだ」

「誠の家じゃダメなの?」

 当惑して、目を閉じる彼。

「僕は肉食系の――オオカミだからね。こんなひどい目にあってる君を襲うかもしれないよ」

 そんなことするわけがないのは、わかっているけれど。

「そして、包み隠さず児童相談所に話すんだ。もちろん記憶から消去してるかもしれないけど、君はこれから色々と思い出すからきっと大丈夫だと思う」

 黒い人型は変形を続け、いよいよ黒い臓物がミックスされた身体になった。そして聞き取れない言葉を大声で叫び出す。

「何の話をしあヴぇらくろろうぐめだん」

「うるさいッ!」

 誠が一喝すると、静かになった。

「問題は心だ。君はここで育って、ここに依存して生きてきた。そんな君が果してここをすんなり出て行けるのか」

「出て行くよ。もうここには居たくない。ずっと前から出たかったのに、いつの間にか忘れてたの。絶対出る」

「いい覚悟だね。それならまず、その学習机の鍵がかかってる引き出しを開くんだ」

 鍵を探していると、誠が机上の貯金箱を指差した。

「ありがと。でもどうして私の秘密の引き出しの鍵の在り処まで知ってるの」

「ハハ……まあ、ずっと君と一緒にいたからね。隠し場所なんか大体わかるもんだ」

 貯金箱の裏蓋を開いて、逆さまにすると小銭がじゃんじゃんばらばらと落ちてきた。それに混じって小さな鍵があった。引き出しを開けると、中には小さな頃に集めた雑誌の付録や香りの良い消しゴムなんかが雑然と散らばっている。

「……どれ」

「日記帳」

 奥を探すと、表紙にリンゴのシールがべたべたと貼られたセンスのかけらもない日記帳があった。

「小学三年生の部分を読んで」

 その当時、何かが起きた?

 内臓にだけ重力が強くかかっているようだ。気づきたくないことが書かれている気がする。ノートをめくる指が汗ばんでくる。汚い小学生の字を目で追っていると、ある事件が目に飛び込んできた。


 三月二日、おじいちゃんのおそう式。


「コレ?」

 誠が黙って頷いた。その目は室内灯で逆光になってみえない。彼はじっと化物をにらんでいるようだ。

 接続語の「そして」を使いすぎて逆にレポートのように何があったかわかりやすい文章だ。読んでいくと今では全く記憶にないが、祖父の火葬の話らしかった。棺を入れて焼き、出したときそこにもう一人分の骨があった。それから、祖母がいないことが問題になったようだった。

「つまり、まだ存命だった君のばあさんは愛しているじいさんの死体と一緒に焼かれて、自殺することを選んだんだ」

 それ自体は私に特に関係なかった。ただ、お父さんにはそのショックは大きかったらしい。それまでの日記では私が叩かれていた描写は少なかったけれど、お父さんは不安定になったようで、それから異常に増えだした。

「どうしてそんなに。ショックだったのかな」

「君はその答えを本当は知っている。でも今は忘れているから僕が答えてあげよう」

 どうして誠が知っているのだろう。しかしそのことを考えまいとしている私がいる。怖い。考えると胸が痛くなる。

「それは虐待の連鎖だよ。虐待されて育った子どもは、自分の子どもにも虐待するようになるケースが多いんだ」

 どういうこと。私も将来、子どもに虐待するようになるかもしれない? 暗い気持ちが鎌首をもたげて、私を丸呑みにしようとじっと見ている。

「これはそのお葬式で君の親戚が言ってたことに推測を加えたものだけど。お父さんは幼少期、じいさんに虐待されていた。お父さんはじいさんに絶対的恐怖を抱いて育った。ちょうど今の君のように。そんなとき、助けてくれるのは母親――つまりばあさんだけだった」

 彼は私の親戚を知っている。お葬式に出席していたのか?

「お父さんは父親が死んだとき、アンビバレントな感情を抱いたんだろうさ。嬉しいような、寂しいような。そしていつもかばってくれていた味方のはずの優しい母親が父親について自殺する。精神的支柱を失った」

 マザコンじゃん。

「それで激しいストレスが発生して、私を……虐待するようになったってこと」

「そう考えられるね。そして君は現実に耐え切れなくなって、記憶の改竄をする――幻覚オオカミを生み出すようになった」

 さらに先を読んでいくと、虐待の描写が多くなるのと同時に「平凡で幸せな家庭」を強調するような描写が増えていく。小学三年生の私は、これを一体どんな気持ちで書いていたのだろう。たった一人で現実の痛みを消そうと夢を重ねて。書かなければどうしようもないような状況に追い詰められて。平凡な家庭を書いて書いて、自分を騙すまで。

 ――ふと悲しくなる。

「キモい顔になってるよ」

 彼が笑って、ぽん私の頭に手を置く。胸をすく寒い風が止んだ。その腕にアヤナミ包帯が巻かれてるのが残念だけど。

「セクハラだよ」

「そろそろ、日記に僕が出てくるだろう。記念すべき、僕らの出会い。ガール・ミーツ・セクハラボーイだ」


 高はしまこと。私と同い年。名のみ町の神どう。哲学的最高相対智……ってよくいみわかんないけど本にのっててカッコイイから使う。歩くウィキペディア。じょうぜつ王ブックイーター。図書かんの本をぜんぶ読んでる。頭がよくて、すごくやさしくて、おもしろい。ヘンな本ばっかり持ってて、私にかしてくれる。私が困ったときにはいつでも助けにきてくれる。

 図書かんであしたはじめて会って、うんめいのであいをする。


「これって、まるでキャラクターの設定考えてるみたいな」

 それからのページには、予定調和のように誠との出会いが書き込まれていた。私の記憶通りに。

「――そうだよ。すぐわかるチープなオチさ。僕は、君が作り出した幻覚オオカミなんだよ」

 こともなげに言う。

「幻覚って何のために」必要に迫られて作り出された存在。もしかして。「誠は、虐待の痛みを肩代わりしてくれてたの?」

「僕は、君が『叩かれてるのは私じゃない誰かだ』って思うために作られた幻覚オオカミだ。それは痛みを消すくらいだから強く願わなくちゃいけない。それこそ詳細な設定と思い込みが必要なほどに」

 誠は右腕の包帯を外す。はらりと床に落ちた白いそれとは対照的に、手首には痛々しい赤い切り傷があった。それは見ていくうちに消え、私の手首に出現した。

「君はつい昨日、手首を切ったばかりなんだよ。もっとも本当に死のうとしてたのか、ヘルプサインを外部の人に出していたのかはわからないけどね。まあ邪気眼な目的じゃないことだけは確かだ」

 傷のことで思い出す。出会った当初の誠は全身に生傷だらけだった。手元にあるノートを見ていくと、彼が出てきてからは一切お父さんの虐待の描写がなくなった。代わりに、誠はありとあらゆる傷を持って登場した。

 日記の中の私は、それらを誠に押し付け、平凡な家庭に生きていた。

「……ごめん」

「どうして謝ることがある? そうするためにいるんだから、そうしただけだよ」誠は無表情に言う。「まあ、もう役目は終わったけど。君は虐待されてたことを認知した。お風呂場で煙草を押し当てられた跡に気づいたとき、僕からはその跡が消えた。痛みは君のものになったんだ」

「覗いてたんだ」

 彼はどっと弾けるように笑った。

「そりゃ仕方ないよね。覗くも何も、僕は君の幻覚――俗に言うイマジナリーフレンド。記憶も視覚も君に由来してるんだからさ」

「ふうん。ああ、だから葬式での親戚の話を知ってたのか」

 彼は腕を組んで得意げに頷く。これが幻覚だっていうのか。幻覚?

  私は誠が幻覚オオカミだと知ってしまった。彼が実際にはいないということを知ってしまった。それって。

「誠は、消えてしまうの?」

「うん、でも心残りはないよ」

 心残りがないなんて、そんな言い方。勝手すぎる。

「どうして日記を読ませたのよ。知らずにいたら、消えずに済んだのに!」

「でも日記を読まなかったら、君は父親の幻覚オオカミを解除することができなかった。神だとか化物のままだったろう?」

 お父さんをみると、ただの人間になっていた。ことあるごとに私が怖がってきた「黒い腕」を持っていない。その内実は何も変わっていないのだろうけど、お父さんを神のように思うことはないだろう。虐待の原因を知って、少しは距離をおいて見ることができるから。

「そして僕はもう必要ない」

「だけど」

「それに、消えるのもいいもんだよ。痛みのあるほうに現実がある――ということはね、僕が消えるのは幾分か、君の痛みになってるってことだ。少しは君に気にしてもらえてるってことかな。悪いけどそういうのを考えると、消えてもいいって気持ちになれる」

 どうしてそんなにあっさり言えるんだろう。もう足元から薄くなってきている。私は彼の腕を掴む。そして顔を見上げる。

「本当にいいの? もう一緒に学校に行くのもできないよ」

「わかってる」

 誠は実写に無理やりアニメを合成したように、空間から存在がぺらぺらに浮き上がっている。

「言わなかったけど私、誠に合わせるためにいつも家出る時間を同じにしてたんだけど」

「知ってる」

「そりゃあ、幻覚相手にしてると思えば馬鹿みたいだけど、それでも私にとっては大切なことだった」

「それも……知ってるよ」

 誠は私の肩を抱いて、小さな声でつぶやく。耳元に低く穏やかな声が流れる。

「……嬉しいよ。君と毎朝話すのは楽しかった。僕のやってきたことが報われたと思う。君の幻覚オオカミは、もう存在しない。君は日記を読んで、現実を知って大人になった。幻覚が生まれることもないだろう。僕が最後の幻覚オオカミだ」

 もう上半身しか残っていない。

 誠、誠、どうしよう。

「そんな顔しないで笑ってよ。僕はもともといなかったんだから、何にも悲しむ必要はない。君はこれまで一人でやってきたんだし、現実ってやつをこれからガンガン楽しむんだ。最後に何か……歩くウィキペディアの僕に聞きたいことはないかい。ま、君の知識なんだけど」

 私を笑わせようとしてくる。笑おうとすると目から力が抜けて、泣きそうになる。声が震えて、にじんでしまう。

「誠、涙の止め方って知ってる?」

「お安い御用。黒柳徹子が言ってたよ。前歯で舌の先を噛むんだ――噛みちぎると死ぬけどね」

 言われたとおりにしながら思い出すのは。

 二人で図書館に入り浸って怒られた記憶。

 ケンカして謝りそびれて、嫌な気分で数日間を過ごした。

 バニラアイスをほお張ってるのを見るのが好きだった。

 君がメチャクチャ回りくどいことを言って、何がなんだかわからなくなるのも好きだったよ。

 結局君はいつも私を助けにきてくれた。

 こんなに思い出がたくさんあるのに、元々いなかったから意味がないなんて言わせない。

「……効くね、これ。涙ホントに止まったよ」私は顔を上げる。誠は微かな感触となって、私の頬に手を当てている。「誠、よく聞いて。ある本にこんな台詞があるの。『僕たちは、時計の短針と長針だ。生きていく時間も空間もずれてる。たまたま僕らは出会ったんだ。もう会えないだろう。さよなら』ってね」

 もうかすれてほとんど見えない。

「それを読んでからずっと考えてた。時計の短針と長針なら、何度だって出会えるんじゃないのって。何だってそうだよ。だから、どんなことがあったって誠にもう会えないとは思わない。大人って何。現実を知ったって、聞き分けのいい大人になんかならないから……」

 誠は最後に困ったような顔で笑って、頷いてくれた。

「それまで、じゃあね」



十、史上最も元気な早退



 それから椿嬢の家――かなり広い!――に居候して、半年が経った。椿嬢は優しかったし、大徳寺家の人たちは部屋が余っているからずっと住んでいいと言ってくれた。ひとまずは家事の手伝いをすることを条件に、その言葉に甘えることにした。

 両親が離婚して、私はまだ一応父方の姓を名乗っている。両親とも会わないし電話もしないが、児童相談所の勧めで三ヶ月が経つ頃から母親とだけ手紙をやりとりするようになった。

「相手を哀れな人間だと思えば、自分が少し優しい人間になった気になれるよ」

 そう言ったのは何のマンガだったろう。でもそんな複雑で嫌な気持ちで、私は母親を――もしかしたら父親も――眺めることができるようになった。

 誠と別れるときにああ言ってしまったけれど、どうすればいいのかわからないまま季節は陽炎のようにうつりかわりうつりかわり、もう冬。あの日学校で書いた遅刻届けの、誠の分を探してみたけれど――当たり前だがそんなものはない。

 以前とは違う通学路から、毎朝椿嬢と学校に行く。

「それで、パンダがため息を吐くのかって」

 話していても気が付くと視線がひとりでに誠を探していて、本について話し合いたくなっている。椿嬢は楽しいけれど、やっぱり誰かが誰かの代わりにはなれない。

 ふと学生服の誠を見かけるが、違う人だ。ますますもうここにいないのを強く感じてしまう。冬のセーラーはスカートのせいで、心の奥から寒くなる。

「ため息はパンダで十分よ、弓ちゃん。いなくなったとかいう例の彼でしょう。話に聞いてただけでも、いい人だっていうのはわかってる。でも半年経つけど、警察に捜索届けは出したの? そんなこともしないで―――」

「そうしたって見つかるわけじゃないんだ。大事なのは、私が彼のことをほんとにいるって信じられるかどうか」

 椿嬢は気まずそうにトレードマークのかんざしをいじりだした。ちょっと、悪いことをしたかもしれない。

「ごめん」

「いいのよ。それだけ彼のことを好きだってことでしょう」

 好き?

「……」

 私は誠が消えてからやっと気づいたってことになるのかな。誠が大好き。結局私は、あれだけ助けてくれた誠にそういうことも言えなかったって……ことだ。

 誠に会いたい。

                 ★

「存在するとは何かという命題に対し、多くの哲学者達が解答を考えてきました」

 学校で授業を受ける。哲学倫理は、面白くない。三十過ぎの女教師が明らかに手抜きだし、受験であまり使わないらしいし。というか既に知っていることをやるから。

「デカルトが提言したのが、コギトエルゴスム(我思うゆえに我あり)。これは有名ですね」

 我思うゆえに我あり。私が考えているから私は存在する。そうか? そもそも「私」というのがよくわからない。半年前までの私とそれ以降の私はもう全然違うし、記憶を改竄したり幻覚オオカミを生み出したり……私はいろんなことが曖昧で、果たして存在しているかどうかなんて怪しすぎる。案外、私も誰かの幻覚オオカミなのかもしれない。

「主観的観念論の立場にも自我の意識が重要だとしているものが多いですね。ソリプシズム(唯我論)では、存在するのは私という個我だけで、それ以外が全て幻想であるとしています」

 あの日はあまりにもたくさん幻覚オオカミが出たから、もう全てが嘘なんじゃないかと思った。全てが嘘。私も含めて全てが嘘だったら、もうそれは嘘じゃないのかもしれない。本物が存在しないんだから。この世の全てが嘘かどうか判別できないもの。この世の全てが幻覚オオカミ。そうなったらどうなんだ。

 誠と私は、同列で存在できる。

 もちろんそんなことはないかもしれない。しかしそうかもしれない。誰もそれを否定できないのだから、どんな風にも考えていい。

 だったら、誠が存在するって考えたっていいよね?

「……誠は、いる。確かにこの世界にいる」

 つぶやいていると、後ろから椿嬢がペンの先で突く。

「小説はもう、書かないの? 弓ちゃん、あれから全然書いてないでしょう」

「だって、そんな気分になれ――」

 瞬間、私は椿嬢に感謝する。タイミングと脳の電気信号と神様に感謝する。先生のつまらない授業とノートに小説を書いていた半年前までの私に感謝する。

 私は笑いがこみあげてハッピーになる。

「先生!」

 カバンに荷物を詰め込みながら、叫ぶ。クラス中の人間がこっちを見た。

「私、体調悪いんで早退します!」

 教室の人間と机をかきわけて、私は走り出す。廊下に出ると授業中だから誰もいない。

「廊下を走るな」

 張り紙が目に入る。でも待ってられない。クラウチングスタートのポーズから、前かがみに一、二、ダッシュ。しばらくしたら靴箱が見えてきて、最速で履き替える。

 もっと速く、もっと速く。

 外は雪が降り出していた。一つ一つが大きなぼたん雪。駆け出すと、白い息が流れていく。腕を振ってはゼッハッゼッハッ。こんな時間に、こんな天気に、こんな場所では誰も全力疾走していない。

 他に誰もいない。

 私だけが。

 私だけがこんなときに君のために走ることができるんだ。

 覚えてろ、誠!

「いって!」

 積もり始めて、滑って転ぶけれど気にしない。関係ない。また走り出して、名呑公園を通り過ぎる。公衆トイレも池も何も変わってない。

 太股とわき腹が痛くなって、足の裏が地面に着くたび骨にジンジン響く。カバンをかけている肩に紐が食い込んで、腕を振ることも疲れてくる。



十一、君に会いたかったからだよ



 スピードを緩めずにいると、やがて「元」私の家が見えてくる。広かったと思っていた私の家は、大徳寺邸宅と比べると貧相な牛小屋。牛のいない牛小屋。

 売ろうかという話もあったらしいけど、保留にされて今は誰も住んでいない。嫌な記憶ばっかりだから私も住まないし。そこに忍び込み、二階のかつて私の部屋だったところに行く。冷えて澱のように積もった空気を感じる。

 本棚も机も全てそのままにしてある。貯金箱から鍵を取り出し、引き出しを開け、リンゴのシールが貼られた日記を取り出す。静かな部屋で私は一気に全て読み返し、誠の細かな設定を思い出す。

 バニラアイスが好きなこと。

 猟奇小説をたくさん持っていること。

 スポーツは球技が好き。

 機械が苦手。

 エトセトラ、エトセトラ。

 一つ一つが誠の断片で、私はそれを拾い集めて脳内で復元していく。まるで発掘現場の壊れた土偶のように。まるで立体パズルのように。

「誠は言ったよね。オオカミ少年は自分で嘘を吐いてるうちに自己暗示にかかって『幻覚オオカミ』を出現させたって。なら私は君のことを書き続ける。君がもう一度帰ってくるまで、どんなことをしても見つけるから」

 目を閉じて集中したら、カバンからペンを出して机に向かった。さっき商店街で買った新しいノート。その記念すべき第一ページ目は真っ白。

 深い海から発泡スチロールの破片が浮かぶように、文字が見えてくる。それを書き写す。次第に文字は積み重なって、もっと速く書きたくて私は身体が面倒だと思う。

 やがて文字はノートからあふれ出して机を浸食する。文字はノートを中心に、あとからあとから波打って広がっていく。机上を満たすと、ぽたりと床に落ちた。私は書いて書いて溺れないように必死だ。

 滝のように机から流れ出し、私の足を濡らす。黒い腕が私を掴もうとするけど、蹴飛ばしてやった。文字がざばざばと部屋の中で津波になり、私は次第に書いているのか遊んでいるのかわからなくなる。

 書いて。

 かいて。

 文章の海を背泳ぎしてクロールして息継ぎしてビーチバレーする。いつの間にか部屋には海の家があり、そこで大して美味しくもないけどなんとなく食べたくなる具のない焼そばを食べる。

 浮き輪をもって駆け出したら、引き潮に捕らわれて漂流してしまう。そこで流れ着いた島には半魚人がたくさんいて、魚をたくさんごちそうしてくれて嬉しい。露骨に嫌な顔をしている人もいれば優しい人もいる。

 もう一度文章の海にいかだで帆を立てて乗り出すと、今度は外国に着いた。どこかはわからないけど、身振り手振りで話して食料をもらう。そこでこんな人を探しているんだが、と私は誠の似顔絵を取り出す。

 みんなが口々に変な顔だという。そういうことを聞きたいんじゃないのに。その中のじいさんが、この星の裏側にいるよと言う。私は嬉しく思ってじいさんとエキゾチックなダンスを踊る。

 地図なんてないから勘で、星の裏側を目指す。途中でイカダが壊れたから仕方なく私は泳いでいくことにする。意外と水中は気持ちよくて、ずっとこうでもいいと思う。

 たまたまこの前の半魚人とまた会えた頃には、私の両足はもうくっついて魚の尾になり、まるで人魚だ。もう文章の海に酔ったり泣いたり辞めたり疲れたりすることはない。

 泳ぐのが速くなって、いつの間にか私は星の裏側に来てしまっている。大きな何かの生き物の骨がいたるところに落ちている洞窟で、焚き火の前で占いばあさんに誠を知らないかと聞く。

 すると文章の宇宙に行ったという。どうすれば行けるのかわからないからコンビニでスペシャル花火セットを買って全部身体に結び付けて火をつけると飛んだ。

 文章宇宙で私はレトロなヘルメットを被って、海の要領で泳ぎ出す。はじめは慣れないけど、いろんな星にいろんな人がいる。私はニコニコして泳ぎ回る。

 とある鉱物と動物の間のような星で、私は誠の話を聞く。彼はどうやらブラックホールに飲み込まれて、永久にスパゲッティー状に引き伸ばされているらしい。

 私はそこまで全力ダッシュ。黒い穴に飛び込んで、彼の名前を呼ぶ。

 誠、誠、どこ?

 誠、誠!

 誠!

 ぽつりと聞こえた何かの音を頼りにそっちを探しても誠はいない。でも声だけは聞こえた。

 ――弓子さん。

 私はこんなときのためにバニラアイスを持ってきている。それをあたりに塗りたくると、誠の身体が勝手に反応して出てきた。彼の腕を持つと、私はブラックホールの外まで一気に泳いだ。

 文章の宇宙が流れ込んできている中を、逆に泳ぐ。痛みを堪えながら完全に外に出る。

 どうしてこんなところまで、と彼が言った。

 私は答える。

 そんなの決まってるでしょ。


 ――君に会いたかったからだよ。

                           おしまい。

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