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Cl/o/ver  作者: 猫寝来緋伽
2枚目 カワル
18/23

3枚目 カワル ①

あれから2時間ほど。集中力の限界だ。

施設をでて、購買に向かう。

(好みを聞くの忘れたな。糖分と、飲み物を数種類買っておこう…)

生徒会を中心とすれば、サジットやヘリオスの取りまとめもうまくいくと思ったが。

(切り替えたいし。外からいくか…)

ひんやりとした空気を全身で感じる。

枯葉も増えてきた。

(そろそろ掃除とかもしたほうがいいんだろうな。風邪ひくわけにはいかないし…)


決まり事を整理もしておこう。

ホールでの模造銃のこと。

あれをみるに、梓に実権をもたせたくない。。

志願者での自警団の練習がどれほどになるかわからないが、無いよりはマシ。

生徒会としては、なるべく補助にまわる。

あー…それだと梓との関わりが…。

頭を強くかきむしる。

それは、香織のことを考えるとあまり選びたくはない。

俺にも限界がくるだろうし。

(今のままいい距離感を保ちながら…。余計な問題を起こさずに…)


「あれ。佐山君だ」

「香織」

「へへ。似合ってる?」

ルクスのケープは、隣にいる菊姉のものだろう。

香織には丈が長く、引きずっていることが気になったが、目くばせを受け取った。

「大人に見える」

「香織は、大人だよ」

…そうだった。

「似合ってる」

改めて口にすると、香織は照れて笑う。

その唇が、青白いのが気になる。

「プライドを簡単に貸せるのね。やっすーい」

梓が嫌味たっぷりに言うが、菊姉は反応せず、商品をとってセルフレジを通す。

「待ちなさいよ」

「何?」

「ケープ、貸せるものじゃないでしょ!?」

「…服なんて、いくら貸してもかまわないよ」

「ただの候補生なら言わないけど。あんたは―」

「ルクスだから?」

「そうよ」

「香織。ちゃんと言うけど、いい?」

「うん…」

「香織は外にいて、体芯まで冷えていたから服を貸しただけ」

枯葉を思い出す。だから顔色が…。

この温度で、あんなに変色するまで、何時間いたんだ…?

「…梓。説明してくれ」

「購買の倉庫が思ったよりも広くて、乱雑だったから、外側から在庫の確認をお願いしただけよ」

「それだけでコートも持たせず外に?」

倉庫前には、作業うようのコートがいくつもかけられている。

「あー、俺からもー。恒元さんを擁護する形になっちゃうけど」

「坂巻…」

「この狭い通路で3人作業するのは、ちょっと無理があってさ。俺がいこうか?っていったんだけど、駒野さんがやってくれることになったんだよ。ね?駒野さん」

「…うん」

どことなく歯切れが悪い。

菊姉も、同じようなことを考えているようにみえた。

梓がいう、倉庫が広いこととと。坂巻がいう、3人での作業に向いていない通路の狭さというズレに、違和感。

しかし、ここで追っても、こじれるだけか。

「今度からは、ちゃんと思いやりを持って動いてくれ」

「わるいわるい。悪かったー」

「菊姉。香織を暖かいところで休ませたい」

「作業は?」

「無理だろ」

「…梓、坂巻君。ここに人手が必要であれば、何人か回すけど」

「いや、俺がいったとおり、人数増えると大変だとおもうから2人でやるよ。ありがとうね」

こっちは、殴りたい気持ちを抑えているのに、温和におわらせたいようだ。

香織の体温のまったくない手を握り。離れないほうがよかったと後悔した。

風邪をひいたとして、薬は足りるだろうか。休むなら教室以外がいい。

医師を目指している人はいたか?

そもそも、健康管理の機械は正常に動いていただろうか。


「ここをつかって。飲み物はそこ。ずっとシステムが体調の記録をとってくれる」

「プラグとかは?」

「必要ない。最先端の医療機器で熱・心拍数・呼吸度合いとかデータとれる。今は軽く―」

「香織。なにがあった?何言われた?」

香織は菊姉をみる。

「私は、出ていこうか?」

「ううん。居て…もらっていい…。助けてもらったし…」

香織は弱くいうと、ゆっくりと深呼吸をした。

「私には、よくわからないの…。ただ2人だけで話をしたいみたいだった」

「香織には知られたくない事みたいなこと?」

「そんな感じかな…」

「佐山。とってあげて」

機械が持ってきたのは、ブランケットに、暖かい飲み物を2人分。

ん?2人分…?

香織は、ゆっくりと飲みだした。頬にも血色がもどってきたようだ。

(よかった)

「香織。佐山をちょっと借りる」

「ん?なんだよ」

「香織のことになると視野が狭くなるのは、直そう」

「…あれは、梓と坂巻が悪いだろ」

「そうだね」

深いため息をついて、厳しい目になる。

「その一言で十分だよ」

あぁ。手の冷たさに自分の冷静なものまで奪われていたみたいだ。

しかし―。

「その癖は直せ」

「何度も言わなくても」

「生徒会を立て直して、そこで意見をまとめたい。そう思ってた。違う?」

「無理だったけど」

「そうだろうね。あの場にいる人間関係の根底にもう絡まってる。一気に解こうとするのは無理だよ」

「部外者だから言えるんだろ」

「違う。部外者だから見える」

「被害うけてるんだ」

「被害をうけたからって、頭に血が上ってたらなんもできない」

その通りではある。頭と体、心はバラバラだ。

「何度でもいう。香織が巻き込まれても、視野を保て」

「約束はできない。努力はする」

「自分が言われたときもちゃんと対応しな」

「そうだな。言ってるだけだったらだめだよな…でも、まだモヤモヤしてる」

「今すぐにどうのこうのは難しいだろうから、一旦佐山も休みな」

「そうする」

「情報のほうには無線いれとく。ここはしばらくカメラ止めるし。鍵もかけとく。出る時はあそこから私を呼び出せばいい」

「俺も端末もらってるから、連絡ははいる…」

「わかった伝えておく」

菊姉は、香織からのお礼も軽く返すと。扉を閉めた。

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