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サクヤが出会った白い猫(ルミ)の飼い主

 ナコ?


 どこかの屋敷の塀の上を通りかかった時だった。


 その後ろ姿が酷似していて、期待して声をかけていた。


 振り向いたその子は、涙を溜めた目で俺を見つめ返した。


 違った。


 似たような歳のようだけど、全くの別人だった。


「アナタも、私と一緒にルミにお別れしてくれる?」


 見ると、その子の腕の中には、小さな白い猫が、眠っているような姿で抱かれていた。


 その猫は息をしていなかったが。


「生まれた時から心臓が弱くて、大きくなるまでは生きられないって言われていたの。今朝、眠るような最期だったんだよ。私の腕の中で……」


 その猫は、幸せそうな顔をしていた。


 主人に抱かれて短い天寿を全うした、幸せそうな猫だった。


 この飼い主の少女も、涙を浮かべているけど、納得のいくお別れができたんだろう。


 穏やかな顔で、死んだ白猫を見つめていた。


「いつか、どこかでまたルミに出会えたらいいな。私の膝の上に座るのが好きな、甘えん坊の女の子だったんだよ。また、たくさん甘えさせてあげたい」


 お互いが強く願えば、会える可能性もあるんじゃないか?


 ちゃんとお別れができたお前達が羨ましいけど、会えるといいな。


 少女は一人で一生懸命に猫のための穴を掘り、そして丁寧に土に埋めてあげていた。


 明るくて、心地よい場所だ。


「猫さん、一緒にいてくれて、ルミを見送ってくれてありがとね。もし良かったら、うちにくる?」


 せっかくだけど、遠慮するよ。


 俺はまだナコを探さなければならないんだ。


「何処かにいかないといけないんだね。あなたの幸せを祈っているよ」


 ああ。ありがとう。名前も知らない、ルミの飼い主。


「じゃあね、猫さん。あなたの元に幸運が訪れますように」


 こうして、長い旅の途中のほんの短い時間を過ごした少女と別れた。


 あの少女とルミが来世で出会えたのかは、俺にはわからない。


 まだまだ俺の旅は続く。











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