プロローグ 逃亡
___戦いたくない。
俺はエルドラード軍後方支援・サポート部隊に所属し、後方支援やサポートをしている。
理由は簡単だ、戦いたくないから、俺の場合後方支援などの方が向いているから、そして…両親と同じ様になりたくないから。
俺がこの部隊に入った時、両親は猛反対した、無理もない、父さんは攻撃・特効部隊の大隊長を任されており、母さんは魔術部隊、こちらも大隊長を任されている。
そして俺には妹がいる、妹は軍に入隊したくないと言うが、妹は両親に脅迫されている、俺は知っている。
また、エルドラード軍含むすべての軍隊は、十歳になると入隊を許される、そして俺の妹は現在九歳、誕生日は明日と言うのも、兄の俺は勿論知ってる。
そして誕生日は明日の夜やるのも知っている、妹から聞いたからだが…。
だから決めたことがある、今日の夜逃亡すると。
手はすでに打った、元帥殿には一週間前に脱退届けの提出と脱退の理由を話した。
元帥殿は優しく、暇なときには元帥殿と話をするような仲であり、妹も懐いていた、元帥殿は俺達兄妹の癒し的存在だったのだ、寂しかったが説明した、元帥殿は承諾しこう言った。
『承諾した、だが妹さんを守るときは命をかけ、死んでも守りなさい!』
気迫のある声に俺は返事一つで返す、そして元帥殿に
『困ったらこれを使いなさい、貴殿を下士兵から将官への昇格を此処に記し、貴殿のこれからの人生を願う。』
大幅な昇格と願いの言葉をもらい、この部屋を後にした。
そして夜…兵も寝静まるような静かな時間帯、俺は動き出す。
必要な物が全て入った革袋を背負い、妹の部屋へ向かう。
(おいナル、起きろ!)
俺はナルを静に起こす。
(お、お兄ちゃん?)
(俺は今からこの軍を抜ける、お前はどうする、このまま軍に入隊するか、俺についていくか…お前が決めろ、入り口で五分待ってやる。)
俺はその一言を残し、外へ出て懐中時計で時間を見て、腕を組み、時間を待つ、そして時間が零時を回る頃だった。
(わ、私も…行く!)
妹が部屋から出てきた。
(ちょうど五分、いくぞ。)
(う、うん!)
普通だったらそのまま出口へ向かう所だが、此処は軍事基地だ、一筋縄では行かない、だから俺は妹を連れてある場所へと向かう。
(げ、元帥さんの部屋?)
「(あぁ、元帥殿に力を借りるぞ)元帥殿、失礼します。」
俺は扉をノックする、すると扉越しで
『入りなさい。』
と、許可がおりたので中へ入ると、月を眺める元帥殿の姿があった。
「元帥殿、挨拶に来ました。」
元帥殿はその言葉に鼻で笑い、こう言う。
「挨拶はもうしたではないか、此処に来たのは抜け道目的なのだろ?」
と言い、元帥殿が机の中から鍵を取り出し、床の絨毯を捲り、そこにあった鍵穴に鍵を差し込み扉を開けると。
「ち、地下…ですか?」
「あぁ、此処は一部の者しか知らない、その中にお前のお兄さんもいるのだがな。」
そう、俺は知っていた、たまたま元帥殿の部屋の絨毯に違和感を感じた俺は捲った所、鍵穴の付いた扉を見つけてしまったことを覚えている。
「さ、行きなさい、この先が君達の新しい人生だ。」
そう言い俺達を中に入れ、扉を閉め、鍵を掛けた音がした。
「さて、行くぞ、ランタンは持ってる。」
ランタンを取り出し、火を着ける、先は暗闇が続く洞窟だ。
「お兄ちゃん」
「なんだ?」
「暗いね…この洞窟」
「そうだなぁ」
「「」」
「おい」
「何?お兄ちゃん」
「……怖くなってきた。」
「………。」
そして現在、この兄妹はと言うと。
「ご、ごめんよ。」
「いえ、お兄ちゃんがビビりなのは私が一番知っています。」
俺は妹に背負われ、洞窟の中を進んでいる。
「ん?おい、あれって…光か?」
「い、行ってみましょう!」
妹は俺を背負いながら走る、そして光が大きくなっていき。
「つ、着いた…着いたよお兄ちゃん!!」
「お…おぉ…」
俺は妹の背中から降り、光を見つめる、太陽が登り始めた、明るく暖かい太陽だ。
「おい」
「なんですか?」
「暖かいな…これは。」
その時妹は初めて見た、兄の笑みを、始めてみた笑みとても嬉しそうであった。