第九十五話 酷い裏切り
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しばらくはほのぼの回が続きそうですね。
それでは、どうぞ!
ニナが俺達のところに来てから、俺は、一つだけ困っていることがあった。それは……。
「ままっ」
「何だ? ニナ?」
どういうわけか、ニナが俺のことを『まま』ライナードのことを『ぱぱ』と呼ぶようになってしまったことだ。
(何か、俺とライナードが夫婦みたいで……)
正直、ものすごく気恥ずかしい。
「ままは、ぱぱに、ちゅーしないの?」
「ちゅっ!?」
おままごとセットを与えられて、大人しく遊んでいたニナのその言葉に、俺はネズミのような鳴き声を上げて固まる。
「まま?」
「ニナ様、そろそろお茶の準備が整いますので、テラスに向かわれますか?」
「っ、いくのっ」
固まったまま返事ができなかった俺をフォローするように、ノーラが声をかけてくれる。
(た、助かった……)
ノーラがニナを連れてテラスへと向かう音を聞きながらホッとしていると、側でそれを聞いていたリュシリーがじーっとこちらを見てくる。
「……ちゅー……」
「っ、リュシリー!?」
ボンッと顔に熱がこもるのを感じながら声を上げれば、リュシリーは見事に俺から視線を逸らす。
(あぁっ、もうっ、こっちは考えないようにしてるってのにっ)
あの魅了事件で、片翼というのが魔族にとっていかに重要な存在なのか、理解したつもりだ。だから、俺はライナードから離れられないだろうくらいには思っている。……思ってはいるが、関係が進むかどうかはまた別問題だ。
(俺、男。ライナードも、男っ)
いや、今、俺の体は女性のものではあるが、やはり、男として生きてきた経験が、進展というものを否定する。しかし……。
(ライナードのこと、嫌いなわけじゃないから、余計に難しいんだよ……)
いっそ、嫌いであれば、こんなに悩むことはなかった。ライクの方であるとはいえ、好きであるからこそ、俺は、ライナードに同じ気持ちを返せないことが辛くて、苦しかった。
「リュシリー、しばらく、一人にしてくれ」
「……かしこまりました。扉の外で待機させていただきます」
悩むにしても何にしても、人が居たら気が散る。悩むならとことん悩むべき事柄なのだから、今、しっかり向き合わなければならないだろう。
リュシリーが障子戸の向こうでこちらに背中を向けて待機した様子を見て、俺はここ最近のことを考えてみる。
『まま、ぱぱのおひざ、のらないの?』
『まま、おててつながないの?』
『まま、たべさせあいっことか、しないの?』
思い浮かんだのは、ここ最近のニナの言動。そして、思い返すことで分かることがある。
(……絶対、おかしいっ)
ニナは、見た目こそ俺と変わらないが、中身は五歳の子供だ。そんな子供がこんな質問をすること自体、何かがおかしい。
(指示をしてるのは、誰だ?)
容疑者として挙げられそうなのは、リュシリーとドム爺辺りだろうか? ノーラは、いつも俺が返答に窮すると助けてくれるため、除外だ。リュシリーとドム爺は、どうにも俺の反応を面白がっている節があるため、可能性は高い。
(……ニナに聞いてみよう)
案外、ニナなら簡単に教えてくれそうだと判断し、俺は立ち上がって、ニナの元へ向かう。すると……。
「良いですか? ニナ様。カイトお嬢様とライナード様が仲良くすることこそが最も大切なことなのです。ですから、どんどん攻めていきますよ?」
「おー、なのっ」
聞こえてきたノーラとニナの声に、思わず脱力する。
(まさかの、犯人はノーラ!?)
「……ノーラ、私で遊ぶのはやめてくれ」
仕方なく、俺はテラスに居るノーラへと声をかける。すると……。
「あら? カイトお嬢様? 遊ぶなど、とんでもございません。私達は、至って真剣です」
「……達?」
複数犯が居る予感に、頬を引きつらせていると、俺をここまで案内してきたリュシリーが胸を張る。
「もちろん、私も執事長も協力しております」
「いやいやいや、やめようよっ。私をからかっても楽しくないだろっ!?」
「「からかっておりません。真剣です」」
なぜか、そう真顔で言われて、頭を抱えたくなる。
(どうして、こうなった……)
原因が分からない俺は、とりあえず、俺と一緒に話題になっているライナードにも話を聞こうと踵を返す。
(ついでに、ライナードに癒されよう)
ニナももちろん癒しではあるのだが、爆弾発言が多くてドキドキすることが多い。まだまだテラスでのんびりすると言ったニナを置いて、俺は、ライナードの元へと向かうのだった。
まさか、信頼していたノーラに裏切られていたなんて(笑)
リュシリーとドム爺はもちろんのこと、でしたけどね。
それでは、また!




