第九十話 カイトお嬢様の元へ(ノーラ視点)
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今回は、ライナードと別れて走り出したノーラのお話……。
それでは、どうぞ!
屋敷に入ってきた執事長とリュシリーを前に、私はすぐに魅了のことを考え、使用人全員を避難させた。実を言うと、この屋敷で戦闘能力が高いのは、ライナード様が一番で、二番目が執事長、三番目が私かリュシリーという順位だったので、もし、二人に襲撃を受けたらひとたまりもないと、最初から避難経路は確保しておいたのだ。
(カイトお嬢様がここに居なくて良かった……)
もしも、カイトお嬢様がこの屋敷に残っていたなら、きっと私は執事長達と戦い……敗れていたことだろう。
運良く、外に出てすぐにライナード様と会うことができて、その場を託して再び走り出す。目的はもちろん、ライナード様の命令を完遂することだ。
(っ、居た!)
できれば、街中を巡回している騎士を見つけられればと思いながら走っていると、ちょうど三人で巡回している騎士達を見つける。
「騎士様!」
大声で彼らを呼び止めれば、驚いた様子でこちらを見てくる。
「貴女は、ライナード様のところの……」
「はっ、はいっ。ライナード様にお仕えする、侍女です。今っ、ライナード様のお屋敷に、魅了された者達がっ。執事長と、リュシリーがっ」
「何? おい、俺とエミルはライナード様のお屋敷に向かうぞっ。ドリーは応援を呼んできてくれ」
「「はっ」」
息を乱しながらどうにか必要なことを告げれば、その意を汲み取って、彼らは行動してくれる。
「貴女は避難してもらいたいが、ドリーをつけた方が良いか?」
「いいえ、お気になさらず。私は、このまま城へと向かおうと思います」
「城? まぁ、あそこは安全か。では、気をつけてくれ」
そうして、私は彼らと別れ、カイトお嬢様とニナ様が居られる城へと急ぐ。今回の襲撃が、執事長とリュシリーのみならばライナード様一人で対処できると思われるが、もし、他の魅了された者達も同時に攻めてきているとすれば、カイトお嬢様達が危ないかもしれない。
そうして、必死に走り続けると、ようやく城の門が見えるところまで来て……。
「ひょーっひょっひょっひょっ! 祭りだ祭りだぁっ! 実験台に事欠かないとは、この上なく嬉しいことよっ」
「あー、所長、手加減してあげてくださいね?」
「ひょ? 何を言うかっ! 実験に手加減などあり得ないっ!」
「うん、まぁ、所長ならそう言うでしょうね……はぁ……」
そこに見えたのは、虚ろな目をしたフィロ様とレティシア様、そして、見覚えのない男女数名を前に、高笑いして、奇天烈な動きを繰り出すカラク所長と、副所長のボック様だった。
「これは……」
虚ろな目をした彼らは、口々にニナ様の名前を呼び、立ちはだかるカラク所長を倒そうと必死に魔法を繰り出すのだか、そのどれもがカラク所長の素早い動きによって避けられてしまう。そして、避けられた攻撃は、あらかじめ城に張ってあった結界が弾いて、何事もなかったかのような状態になっていた。
「ん? あっ、ノーラさんだ!」
「ボック様。これは、いったい何が起こっているのでしょうか?」
いや、説明されずとも、恐らくはこの城も襲撃を受けているのであろうということまでは分かる。しかし、それをなぜ、カラク所長が止めているのかということが分からない。
「あー、何でも『これは実験のために集めた人員であって、反逆行為を犯す者は誰一人居ない』だそうですよ」
「……なるほど」
確かに、彼らは魅了されているとはいえ、城に乗り込もうとしていたのだ。それは、本来ならば許されることではない。ただし、彼らをカラク所長が集めたことにして、無事、鎮圧してみせれば、何の問題もなくなる。カラク所長は、魅了された彼らを救おうとしているのだ。
「助太刀は必要ですか?」
「ん? いやぁ、いらないんじゃないかなぁ? 所長って、アレでも元三魔将の一人だしねぇ」
そう、カラク所長は、元三魔将。具体的に言えば、ライナード様の上司であった魔族なのだ。性格はアレだが、その実力は信頼できる。
「「「ぎゃあぁぁぁぁあっ!!」」」
「あっ、激辛君昇天錠がヒットしたみたいだねぇっ」
(何ですか? その物騒過ぎるネーミングの物体は……)
思わず、呑気に観戦しているボック様へ質問しそうになったものの、世の中には知らなくても良いことはあると思い直し、何も聞かないことにする。
「ひょーっひょっひょっ。久々に良い汗をかいた……さぁっ、彼らは我が実験室へとご招待せねばっ! 行くぞっ、ボック」
「はいはーい。それじゃあ、失礼しますねー」
これから、魅了されていた彼らの診察を行うのであろうカラク所長とボック様を見送り、私は、カイトお嬢様の元へと急ぐのだった。
カラクとライナードのまさかの関係!?(←いや、そこはメインじゃないからっ)
とりあえず、無事に魅了被害者達を鎮圧完了ですっ。
やっと、やっと、平和になりますっ。
それでは、また!




