第八十七話 魔王妃様との対面
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今回は、ようやく夕夏ちゃん登場ですっ。
あっ、お茶会は次回も続く予定ですよ?
それでは、どうぞ!
あの中止になった実験以降、俺達は、それはそれは平和な時を過ごしていた。何でも、実験で分かったことは、ニナが本物の魅了使いであることと、俺とニナは十五メートル離れたら危険ということ、そして、何より重要なのは、闇魔法の耐性を持っていても、強力な耐性持ちでなければニナの魅了にかかってしまうということだった。
(確か、あの十人のうち、六人は強い耐性を持ってたんだよな)
最初から魅了にかけるための生け贄男はともかくとして、その男を取り押さえるために集められた男達まで魅了にかかるのは想定外だったらしく、今は、強力な耐性持ちを集めて、次の実験計画を練っているらしい。
(できれば、ニナを怖がらせない方向でやってもらいたいけど……)
そんなことを考えていた俺は、現在、見事にドレスアップされて、鏡の前に立っていた。ちなみに、ニナもしっかりドレスアップされていて、淡い黄色のドレスがとても似合っている。
「それでは、ユーカお嬢様の元にご案内しますね?」
そう言うのは、ブロンドのパーマがかったショートヘアに、蒼い瞳を持つ侍女、メアリーだった。彼女は、ユーカ様の専属侍女らしく、他の侍女よりも位は上らしい。
「よろしくお願いします」
「おねがいしましゅっ」
そうして、案内されるままに、俺とニナは美しい花が咲き誇る庭へと出る。
「こちらへ」
花のアーチを潜って進んでいくと、そこには、緑のドレスを身に纏った日本人女性にしか見えない黒目黒髪の小柄な少女が、無表情のままこちらを見つめていた。
「ようこそ。私はユーカ・サクラと申します。今日は、私の我が儘に付き合っていただき、ありがとうございます」
「っ、お招きいただき、ありがとうございます。私は、カイト・リクドウ。こちらが、ニナになります」
貴族らしく美しい礼を見せられて、俺はぎこちないながらも名乗って挨拶を乗り切る。ちなみに、ニナは始めての場所で不安なのか、俺に抱きついて離れてくれそうにない。
「そんなに固くならないでください。あの……リリスに聞きました。カイト様は、日本人なのでしょう?」
「そ、そうですっ」
「その名前なのにその姿……色々、大変でした、よね?」
「っ!」
どうやら、俺が元男だということは、この目の前のユーカ様にはバレてしまっているらしい。表情にはほとんど出ていないが、同情的なその言葉に涙が出そうになって、慌てて息を詰める。
「いえ、もう慣れましたので」
「そう、ですか。ですが、何か悩みがあれば、相談に乗るくらいのことはしますよ?」
無表情ながらも、コテンと首をかしげるユーカ様は、きっと、笑えばとても可愛らしいのだと思えた。
「いえ、今は問題ありません」
今、専ら問題になっているニナのことに関しては、もう完全にライナード任せになっているし、アメリアさんのことについても、今はまだ目覚めていないとのことで、対処のしようがない。結果、特に相談するようなことはなかった。
「そうですか……。あぁ、立ち話も何ですし、どうぞ、おかけください」
「ありがとうございます」
お茶会用に用意されていたテーブル席に着けば、メアリーと、他の専属侍女らしい女性がお茶を淹れてくれる。そして、目の前には甘いお菓子と、ニナ用のしょっぱいお菓子が用意されていく。
「ニナ様には、クラッカーやサンドイッチなどをご用意しておりますよ」
「ふわぁっ」
クラッカーの上にはチーズやトマトなどが乗っていて、彩り鮮やかで美味しそうだ。
「カイト様には、こちらを。ベリーのタルトでございます」
「あ、ありがとうございます」
こちらを気遣ってくれたことが良く分かるもてなしを前に、俺は恐縮しながらも、お礼を言う。
(と、とりあえず、無礼がないように頑張ろう)
礼儀作法なんて、そんなに知らない俺としては、こう改まった感じの場は苦手だったが、少しでも失礼がないように必死で振る舞うことになるのだった。
海斗ちゃん、わりと緊張ぎみですが、ニナちゃんの手前、下手なことはできないですねっ。
それでは、また!




