第八十話 判明
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今回は、海斗ちゃんにもニナちゃんの正体が判明する回。
それでは、どうぞ!
リリスさんとローレルさんが魅了使いに関する情報を持ってきたということで、ライナードはさっさと退席をしていく。
「カイトおねえちゃん、これ、おいしーの。あげゆっ」
「うん、ありがとう」
手で掴んだポテチを俺の口に運んでくるニナは、かなり可愛い。だから、こんな可愛い子を虐待した奴の気が知れなかった。
そうして、しばらくポテチを頬張って、ノーラが持ってきたお手拭きでしっかりと手を拭いたあと、ゴロゴロとしていたニナは……いつの間にか、スヤスヤと眠っていた。
「カイトお嬢様、ニナ様をベッドにお運びしましょうか?」
「うん、そうだな。さすがに、女の子一人を抱える力は私にはないからな」
ノーラに運ばれていくニナを見つめていると、ふいに、障子戸が勢い良く開け放たれる。
「っ、ノーラ! 今すぐその子をカイトの側に」
「っ、承知いたしました!」
障子戸を開けたのはライナードで、俺から離れていくノーラとニナを目にした瞬間、血相を変えて叫ぶ。
「ラ、ライナード?」
「んにゅう?」
わけの分からない指示を出したライナードは、俺の側にニナが運ばれたのを見て、ホッと息を漏らす。
「うゆぅ?」
「あっ……起こしちゃいましたね」
「う? カイトおねえちゃんっ!」
ライナードが大声を出したせいで、ニナを起こしてしまったと気付き、俺はライナードを軽く睨もうとするものの、その前にニナに抱きつかれる。
「カイトおねえちゃんっ、カイトおねえちゃんっ」
必死に抱きついてくるニナの様子に、俺は首をかしげながらも、オズオズと頭を撫でてやる。
「えへへ……」
(うん、可愛い)
そんなことを思っていると、バタバタと別の足音が聞こえてくる。
「速いですわよ。ライナードさん」
「はぁっ、何で、いきなり……」
どうやら、こちらに来たのはリリスさんとローレルさんだったらしい。ただし、ローレルさんは俺の方を見た瞬間、なぜか硬直する。
「ニナで、間違いないか?」
「た、しかに……そんな名前でした、ねぇ……」
「ローレル?」
ライナードの問いかけも、ローレルさんの反応も、意味が分からない。ただ、リリスさんもそれは同じらしく、仲間が居た、とちょっと思ってしまう。
「えぇっと、ですね? カイトちゃん? そこのニナちゃんは、魅了使いなんです」
「ふぅん…………え?」
ローレルさんの言葉で、俺とノーラ、そして、リリスさんの視線が一斉にニナへと注がれる。
「うゆ?」
しかし、ニナは自分が魅了使いだという自覚は、どう考えてもなさそうだった。
「どういう、こと?」
そうして、ライナードに事の詳細を尋ねれば、ローレルさんの記憶にあるゲームの内容を聞かされて、絶句することとなる。
「ニナが……処刑……」
「もちろん、そんなことはさせない」
ゲーム内の、あまりにも救いのない結末に、ショックを受けていると、ライナードは力強くそう断言してくれる。
「確か、このイベントがきっかけで、ヒロインが傷ついて、その心の傷を癒していくってストーリーだったと……思います」
自信なさげにそう言うローレルさん。
(いやいやいや、ニナを処刑なんて、絶対にさせないからなっ!?)
未だに会話の内容が分かっていないらしいニナは、まだ眠いのか、グリグリと俺の肩に頭を擦り付けてくる。
「五歳児にはとても見えませんが……成長促進魔法なんて、惨いことをしますわね」
「う? ……ぴっ」
寝惚けた目で、こちらにそっと近寄ってきたリリスさんを見たニナは、奇妙な悲鳴を上げて、モゾモゾと俺の後ろに隠れてしまう。
「「「…………」」」
それを目撃した俺達の間には、痛いほどの沈黙が流れる。
「え、えっと……リリスさん? ニナは、今、ちょっと人間不信になってるというか……」
「え、えぇ、分かっていますわ。不用意に近づいたわたくしが悪かったのですわ」
そう言いながらも、どこか残念そうにするリリスさんは、きっと、ニナと仲良くなりたいのだろう。ただ、俺の後ろで、俺に必死にしがみついて震えているニナに無理はさせられない。
「とりあえず、海斗の側ならその子も安全ですわ。わたくし達は、しばらくライナードと一緒に対策を考えて……あぁ、後、ルティをこちらに寄越して、ニナちゃんのことを診てもらうのも必要ですわね……とにかく、海斗はニナちゃんの側を離れないようにしていてくださいまし。後、警備も厳重にするのですわよ?」
「わ、分かった」
「む」
ハキハキと指示を出すリリスさんに従って、俺は、ニナの側に寄り添い、ライナード達は退出するのだった。
さてさて、とにかくニナちゃんは海斗ちゃんの側なら安全ということに……。
でも、まだ魅了された魔族達の回収が終わっていないところが不穏な部分ですよね。
それでは、また!




