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第七十四話 三魔国会議(ジークフリート視点)

ブックマークや感想をありがとうございます。


今回は、ライナードの上司であるジークフリート視点。


三か国会議、ならずの、三魔国会議ですっ。


それでは、どうぞ!

 魅了使いは、国の災厄とも言える存在だ。初めて魅了使いが確認された時は、国全体がその存在に恐怖し、怒り、そして、多くの魔族達が狂って死んでいった。



「幸い、まだ死者は出ていないと思われるが、これからどうなるのかは分からないな」


「そうだね。僕のところでも警戒はしてるんだけど、全く足取りが掴めない状態だよ」



 そう答えるのは、灰色の短髪にトパーズの瞳、真っ赤な角を持つリアン魔国魔王、ハミルトン・リアン。



「魅了使い……妾の代で、そんな者が現れるなんて……」



 藍色の髪と緑と赤のオッドアイ、藍色の角を持つミステリアスな迫力のある美女は、その見た目に反した幼い声で告げる。彼女は、ヘルジオン魔国魔王、ルーシャ・ヘルジオン。


 現在、俺はこのそれぞれの魔国を預かる二人の魔王と会談を行っていた。話題はもちろん、魅了使いに関してだ。



「現状で、魅了使いに関する情報は女らしいということしか分かっていない。居場所はもちろん、魅了を使っている目的も不明なままだ」



 そんな情報を告げれば、ハミルトンは考え込み、ルーシャは少し緊張したような面持ちになる。



(まだ幼い上、王位に就いて日が浅いせいか、あまり表情を取り繕うことはできていないようだな)



 ルーシャに対してそんな感想を抱きながら、それでもこの国難には全員が力を合わせなければならないと考える。



「魅了使いをこのまま野放しにするわけにはいかない。そして、この問題は本国のみに限ったものではないだろう」


「つまり、ジークは僕達にも力を貸してくれって言いたいんだよね?」


「わ、妾は、賛成です。魅了使いを放置すれば、妾の国とて無事でいられるか分かりません故っ」



 魅了使いの脅威を前に、ルーシャが真っ先に賛同を示す。



「ルーシャ、僕も賛成だけど、こういう時は上の魔王の意見を聞いてから流れを読むことが先だよ」


「ひぃっ、も、申し訳ありませんっ」



 ハミルトンの目が笑っていない笑顔に、ルーシャはビクッと怯える。

 ルーシャは、かつて、俺とハミルトンの二人に愛された両翼、ユーカを拐った国の魔王だ。当時はルーシャはまだ、魔王ではなかったものの、その事件をきっかけにヘルジオン魔国魔王が死に、新たにルーシャが魔王へと即位することとなったのだ。ルーシャの即位には何かと力を貸すこともあったため、ルーシャの立場は俺とハミルトンより下であり、ハミルトンはルーシャを教育する魔王でもある。

 ハミルトンの指導を眺めながら、俺はこれからの策を話す。



「今はまだ、魅了使いの件は闇魔法耐性を持つ騎士の一部にしか伝えていない。だが、このまま事態が長引くようであれば、もう少し伝える範囲を広げることも考えている」


「まぁ、無闇に多くの者に伝えれば、国が機能しなくなっちゃうから仕方ないことではあるけど……」


「国が機能しなくなる? ……はっ、片翼ですねっ」



 しばらく考えて、その答えに行き着いたルーシャは、それなりに優秀ではあるようだ。



「そう、国全体にこの話が伝わってしまえば、魅了の脅威から逃れようと、多くの片翼を持つ者が片翼を守るために囲う姿勢を取るだろう。片翼を守るための片翼休暇の制度が乱用されることになりかねない」



 事実、俺とハミルトンも、今はユーカを閉じ込めている状態だ。ユーカには闇魔法への耐性がないため、厳重な警備体制を敷いている。



「箝口令を敷いて、その上で対策を練るわけですね」



 フムフムとうなずくルーシャは、しかしそこで動きを止める。



「ですが、それでは被害が広がることになりませんか?」



 その指摘は、最もなことだった。



「確かに、片翼を守ろうと意思を固めた魔族は強い。その状態であれば、いかに魅了使いであっても、簡単には手出しできないだろう。しかし、そんな状況であればこそ、魅了使いというのは恐ろしい存在となる」


「それは、どういうことでしょう?」



 眉間にシワを寄せるルーシャに、どうやらこの説明をハミルトンが受け継いでくれるらしかった。俺と視線を交わしたハミルトンは、にっこりと笑いながら、それを話す。



「ねぇ、誰もが家に閉じ籠って、隣の家の現状が分からない状態になった時……もし、魅了使いが隣の家の者を全員魅了していたらどうなるかな?」


「っ、そ、れは……」



 知らないうちに、近くに居る者が魅了使いの餌食になる。そして、魅了された者達が数を増やし、他の者達に牙を剥けば、もう、それは泥沼の戦いとなる。



「実際、初めて魅了使いが確認された時にはそれが起こったとされている。そして、国が滅びかけたともな」



 それほどに、魅了使いは恐ろしい存在なのだ。だから、今、魅了使いと思われる存在が確認できた段階で、何としてでもそいつを捕らえなければならなかった。



「妾にできることなら、いくらでも協力いたしますっ!」


「うん、僕も協力は惜しまないよ」


「あぁ、感謝する」



 ヴァイラン魔国だけの問題ではないこの事態に、二人の魔王の協力を取りつけた俺は、すぐに闇魔法に耐性を持つ者達の派遣を要請するのだった。

魅了使いの脅威がどれほどのものなのか、今一度しっかり書いておかなければっ、と思いながら、今回のお話を書いております。


次回は、海斗ちゃんのお話に戻りますよー。


このお話を読んだ後なら、海斗ちゃんがどれだけ無謀なのかが分かるはずっ。


それでは、また!

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