第六十六話 緊急事態発生(ライナード視点)
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さぁ、今回は久々にあの人が登場っ。
それでは、どうぞ!
「む……カイトは、まだだろうか?」
姉上の身に何があったのか、密偵を放ってから一時間ちょっと。さすがに、遅い。そう思って呟けば、側に控えていたドム爺が困ったような表情をする。
「アメリア様の可愛いものに対する熱意は、恐ろしいものがありますから……まだ、しばらくかかるのではないかと」
「そう、か……ならば、俺は少し出かけてくる」
俺の言葉が予想外だったのか、ドム爺は一瞬目を見開くと、直後、行き先を訪ねてくる。
「どちらへ?」
「リドルのところだ」
カイトが元々男だったという話は、現状では俺しか知らない。しかし、リドルはカイトが男勝りだということを見破っていたし、全てを伝えないまでも、カイトが男に興味を持たないという話を伝えて、協力を仰ぐのは良さそうだと思えた。
「では、馬車を手配して参ります」
「む」
元々、今日会いに行く予定ではあったので、きっとリドルも俺のことを待っていてくれているだろう。
しばらくして、馬車の用意ができたとの言葉に、俺はカイトが戻ったら、俺が出掛けていることを伝えてほしいと伝言を残すと、早速出掛ける。
久々の友人との再会。きっと、お互いに実りのある楽しい日になるだろうと信じて疑わなかった俺は、リドルの屋敷に着いた直後、その考えを改める。
「レティ……」
「リドル?」
相変わらず真っ赤なドレスを身に纏った赤い魔族、リドルは、なぜか、燃え尽きたように玄関口で座り込んでいた。周りには、オロオロとした様子の使用人達が居る。
「どうした? リドル?」
十中八九、何かがあったと分かるリドルの様子に、俺は相談したかったことをそっちのけで、とにかくリドルに駆け寄る。
「ライ、ナード……ワタシ、ワタシ……うあぁぁぁぁっ!!」
駆け寄ると、絶望に心を引き裂かれたかのように大声で泣き出したリドル。ただごとではないとすぐさま察知し、リドルの代わりに使用人達に指示を出し、とにかくリドルを屋敷の中に運び込む。
「リドル、何があった? お前の片翼はどうした?」
『片翼』という言葉に、ビクリと反応を示すリドルに、俺は、その片翼に何かがあったのだと確信する。しかし、リドルは完全に男泣きに移行しており、話にならない。
「何があったか、分かる者は居るかっ?」
このままでは埒が明かないと、俺は使用人達に呼び掛ける。すると、一人の男性使用人が前に進み出て、説明を始める。何でも、外出していたリドルの片翼、レティシアが、帰ってきた途端にリドルに別れを告げて去っていってしまったのだという。
「……痴話喧嘩か?」
「いえ、それが、どうもそうではないらしく……」
痴話喧嘩は、魔族にとって致命的な出来事だ。しかし、それならば和解するための方法を模索すれば良いだけのこと。そう思って、リドルを諭しかけたのだが、それを使用人が遮る。
「ご主人様がレティシア様のご気分を害されるようなことがあれば、私どもも分かります。しかし、今回はそれとは違いまして……その、別に好きな人ができたのだと……」
「何?」
確かに、リドルの片翼は精霊で、リドルに対しての執着心を持っているとは言いがたい。しかし、ここ数百年、その愛が色褪せることなく続いていたことくらい、俺だって理解していた。
「……詳しく状況を聞かせてほしい」
もし、レティシアがリドルの何かに怒っているだけ、つまりは、痴話喧嘩であるだけならば問題はそう深刻ではない。ただ、本当に、レティシアが浮気をしたとなれば、リドルは狂ってしまう。それだけは、避けなければならなかった。
「はい、まず、本日の朝――――」
そうして、使用人から話を聞いた俺は、すぐにリドルを抱え上げて城に向かう。
(緊急事態だな)
カイト宛に、帰りが遅くなる旨を伝えるよう、使者を飛ばした後、俺は、馬車の中でも泣き続けるリドルを宥めるのだった。
いやぁ、シリアスさん達がワラワラと集まって参りましたねぇ。
ボーリングで崩せないかしら?
ん?
無理?
そうか……。
と、いうわけで、ちょみっとシリアスモードが発動します。
そして、『片翼シリーズ番外編』でリリスちゃん達のひな祭りのお話を更新していますので、そちらもよかったら読んでみてください。
それでは、また!




