第六十一話 壊れた栄光の日々(エルヴィス視点)
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本当は、新章に入る予定でしたが……ちょっとここらで、エルヴィス達の状態も出しておかねばっということで、エルヴィス視点のお話です。
それでは、どうぞ!
俺達は、華々しい凱旋とともに、元の地位への復帰、いや、それどころか、国を取り戻すことさえ可能なほどの功績として、全ての人間達に崇め、讃えられる予定だった。
ホーリーを失ったのと、リオンが抜けたのは誤算だったが、ホーリーくらいの女などいくらでも居る。リオンだって、別に居ても居なくてもどうでも良い。今、興味があるのは、俺を虐げた奴らが地を這う様子を見ることのみだ。しかし……。
「エルヴィス、ロッシュ、ダルトの三名を、同盟国における犯罪行為によって捕縛するものとする」
やっと、人里が見えてきた。そう思ったところで囲まれ、俺達は屈強な男達に拘束される。
「離せっ! 俺を誰だと思っている! レイリン王国の王子、いや、国王だぞっ!」
抵抗する間もなく、素早く捕縛された俺達は、地面に倒された状態で喚く。
俺達を拘束している奴らには、見覚えがあった。王族たる俺に雑用を押し付けた愚か者達であり、俺に酷い屈辱を与えた者達だ。
「お前の地位はすでに剥奪されている。そのくらいのこと、その何も入ってなさそうな頭でも理解できていると思っていたんだがな」
「っ、無礼な! 不敬罪だぞっ!」
ロッシュやダルトも、俺に同調して反論してくれるものの、奴らが聞いてくれる様子はない。力ずくで体を起こされて、少し離れた位置に待機していた馬車へと物のように放り込まれる。
「貴様らの処罰は、帝王様が決定なされる。が、甘い処罰で済むとは思わないことだ」
「っ、魔王を倒した俺達に、こんなことをして、ただで済むと思うなよっ!」
冷たく蔑んだ目で見下ろされ、俺は、自身の功績を主張する。すると……。
「愚かな。魔王が敵などと、誰が決めた」
「ふんっ、知らないのか? 魔王はその存在そのものが悪だと決まっているっ」
何を当たり前のことをと思って告げれば、男は大きくため息を吐いた後、そこから離れてしまう。俺達は、しばらくは『ここから出せ』と要求を続けていたものの、馬車が走り出してからは、舌を噛むため、まともに声を出すこともできなくなった。
後ろ手に拘束されて、馬車の中に転がされていた俺達は、馬車の中で何度も体を打ち付け、夜、そこに着いた頃には、もう全身が痛くて仕方がなかった。しかし、それでも男達は俺達を連れて、どこかへと向かう。
「ぐ……ここ、は……」
「牢屋だ。処罰が決まるまでは、ここに入っていてもらう」
「っ、俺は王族だぞっ!」
そこは、薄暗く、すえた臭いのする牢屋で、中にあるのは粗末なベッドくらいのものだった。こんな場所に、冤罪とはいえ、王族を容れることなどあり得ない。そう、訴えるものの、『お前達は平民の身分だ。まぁ、それももう怪しいがな』と言われるだけで、乱暴にそれぞれの牢へと押し込まれる。
「くそっ、くそっ、くそっ! 今に見ていろ! 俺達は、魔王を倒した英雄なんだ! すぐに、あんな奴ら、処刑してやる!」
体中の痛みに耐えながら、俺はそう叫ぶ。何せ、栄光の日々は目前なのだ。同盟国での犯罪行為なんて心当たりが全くない。きっと、すぐに冤罪が晴れて、誰もが俺達の前に膝をつく。俺達は、それを信じて疑わなかった。
だから、俺達は、この後思い知ることとなる。同盟国というのが、どこの国であったのかを。そして、俺達の犯罪行為というのが何を指していたのかを。
俺達は、最後まで自身の主張を曲げることはなかったし、あろうことか、蛮族の象徴たる魔族と同盟を結ぶなど、帝王は錯乱しているとしか思えなかった。しかし、ついぞ、その主張が認められることはなく、俺達は、ヴァイラン魔国に引き渡されることとなるのだった。
次は、次こそはっ、新章ですっ!
それでは、また!




