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第五十四話 繰り返される謝罪

ブックマークや感想をありがとうございます。


今回は、お屋敷に戻ってからのお話です。


それでは、どうぞ!

「カイトっ!」


「ふぎゅっ!?」



 馬車から降りて、屋敷の方を見た瞬間に、俺はかったい胸板に激突する。言わずもがな、ライナードの胸板だ。



(は、鼻、ぶつけた……)



 少し涙目になりながら、どうにか身動ぎをしようとするのだが……ピクリとも動けない。



「カイトっ、すまないっ。怖い思いをさせたっ」


(いやいや、そんなことより、離してほしいんだがっ!?)



 ギュムギュムと抱き締められる俺は、ちょっと酸素が薄くなってきて、わりときつい。



「ライナード様、カイトお嬢様が窒息してしまいます」


「っ!? す、すまないっ」


「ぷはっ、はぁ……いや、大丈夫だ」


「すまないっ、すまないっ、カイトっ」



 どうにか息をして、『大丈夫』と告げるものの、ライナードは壊れたレコードのように、『すまない』という一言を繰り返す。



「すまない、すまないっ」


「え、えっと、とにかく屋敷に入らないか?」



 馬車から降りた直後に抱き締められた俺は、未だ屋敷の中に足を踏み入れていない。



「っ、そう、だな」



 どうにか納得してくれたらしいライナードに安堵したのもつかの間……ちょっと前に体験した視界が回るという経験を、俺は再びすることになる。



「えっ? えっ?」


「とりあえず、俺の部屋に行こう」



 そう言った直後、ライナードは早足で歩き出す。もちろん、俺は足を使うことなく……と、いうか、横抱きにされて、そのまま運ばれている。



(俺、この世界に来てから、横抱きにされること多いよなー)



 もう、諦めるしかないのかもしれないが、こういう時は女の体であることが憎い。

 ほどなくしてライナードの筋トレ用の器具がいくつもある部屋に辿り着き、ベッドの上に下ろされる。



「すまない、カイト」


「いや、ライナードが謝ることじゃないだろう? それに、俺、ちゃんと守ってもらったし」


「すまない」


「ほら、頭を上げて」



 俺の目の前でひたすらうなだれるライナードに、俺はどうにか話を聞いてもらおうと、まずは目を合わせることから始めようとして……その目が、赤く充血していることに気づく。



「すまない、カイト」



 明らかに泣いた後であろうライナードに、俺は、そこまで心配してもらえるのが嬉しくなるのと同時に、隠し事をしていることが心苦しくなる。



「すまない、すまない」


「いや、だから、謝罪は良いから」



 今回の件は、きっと不測の事態というやつだ。しかし、ライナードがリュシリーや護衛をつけてくれていたおかげで、俺は傷一つない。多少、怖い思いはしたものの、今、ライナードが目の前に居てくれるなら、怖いものなどなかった。



「そうじゃ、ない。いや、それもあるが……とにかく、すまない」


「そうじゃないって……?」


「すまない」



 ただ、どうやらライナードは、俺が危険な目に遭ったこと以外にも、何か謝りたいことがあるらしい。しかし、それを尋ねても、ひたすら『すまない』の一言しか返ってこない。きっと、それは今はまだ、言えないことなのだろう。



(俺も、言えないことはあるんだから、お互い様、なんだけどな?)


「何かは分からないけど、もう良いから」


「すまない」



 もう、何度謝罪の言葉を聞いたか分からない。ただ、それだけ、ライナードが後悔していて、そして、許してほしいと願っていることだけは伝わってくる。



「大丈夫だから。何があっても、俺は、ライナードを責めるようなことはしないから」


(そもそも、俺に責める権利なんてないし、な)


「カイト……」



 ようやく、その目の焦点が合ったライナードは、改めて俺を優しく抱き締める。



「約束する。必ず、守る」


「っ」



 『何から』かは分からないが、ライナードが俺を必死に守ろうとしてくれていることだけは分かって、その真剣さに、俺は思わず息を呑む。



「何があろうとも、カイトを守ってみせる」


「……あぁ」



 ようやく返事をした俺に、ライナードは腕の力を緩める。



「今度からは、一緒に観光しよう」


「そ、そうだな」



 真剣な雰囲気から一転、フワリと笑ったライナードに、俺はドキリとしながらも、どうにかうなずくのだった。

ライナードの謝罪が何を意味するのか。


それは、次回、ライナード視点でお送りして参りますねっ。


それでは、また!

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