第五十一話 惨敗(ノーラ視点)
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今回は、予想を裏切る展開かも?
それでは、どうぞ!
カイトお嬢様に、ポーカーをしようと提案された。しかも、賭けるのは互いの情報。これは、リュシリーと協力して、ぜひともライナード様への想いを聞き出さねばならないところっ。そう思い、中々動いてくれない表情筋は諦めて、視線だけでリュシリーに合図を送る。すると、同じく表情筋に難があるリュシリーから、小さなうなずきが返ってきて、リュシリーも同じ思いなのだと確信する。
(さぁ、カイトお嬢様。覚悟はよろしいですか?)
そう、考えていた時期が、私にもありました。
「ライナードに仕えて何年になるんだ?」
「私は、二百年くらいかと」
「私は、二百五十年ほどですね」
とりあえず、初戦は敗退だった。仕方ない。どちらも手札が揃わず、ワンペアすらできなかったのだから。
私、リュシリーの順で答え、次の勝負となる。
「二人が好きなことってなんだ?」
「私は、掃除をしている時が幸せです」
「私は……執事長の寝言を聞くのが楽しいですね」
「え? 執事長って、ドム爺だよね?」
「さようです」
「……よし、次の質問は決めた」
「次も勝てるとは限りませんよ?」
私の答えには深く突っ込まれることなく、カイトお嬢様とリュシリーの会話内容を見守る。今回は、私の方がツーペアが揃ったものの、カイトお嬢様のツーペアの方が上の手札だったため、負けてしまったが、このままというわけにはいかない。しかし、次では、全員がワンペアすら揃わず、エースを持っていたカイトお嬢様が勝ちとなる。
「リュシリーに質問、ドム爺とはどういう関係?」
「か、片翼です」
その答えに、カイトお嬢様は目を見開いて驚いておられる。無理もない。人間からすると、二人の見た目は大きく年齢差があるように見えるのだから。
(実際は、百歳も違わないらしいですけどね)
「じゃあ、ノーラに質問、ノーラは好きな人とか居るの?」
「私にも、片翼がおります。庭師のレナです」
「庭師のレナ……? うーん? ……あぁっ、あの女の人……えっ? 女の人?」
「はい」
どうやら、私の片翼とは面識があったようで、カイトお嬢様は何やら驚いている。
「同性……」
どうやら、驚くポイントはそこだったらしい。しかし……。
(このまま普通にゲームをするのも良いですが……そろそろ、動きましょうか)
そうして、目でリュシリーに合図をすると、彼女も心得たようにうなずく。
(申し訳ありません。これも、ライナード様のためなのです)
今まで、シャッフルは交代でやっていたため、今回、リュシリーがシャッフルをしても違和感はない。そうして、配られた手札を見て、私は恐らく、リュシリーの手札が良いものになっているのだろうと判断する。
「よしっ、それじゃあ、見せ合おうか」
しかし、カイトお嬢様の手札を見た瞬間、私は目を見張る。
「フルハウスっ」
「ワンペア」
「ストレート」
これは、フルハウスのカイトお嬢様の勝ちだ。どうやら、カイトお嬢様は運が良かったらしい。
「うーん、それじゃあ、ライナードの仕事って、どんなの?」
「ライナード様は、三魔将のお一人で、主に魔王陛下をお守りする立場にあります」
「他には、魔王妃様の護衛などもありますね」
「なるほど」
(次、次こそは……)
今度は、私がシャッフルする番だ。今度は、フルハウスでも狙っていく予定だ。
そうして、配り終え、ゲームが終わる。
「フォーカード」
「フルハウス」
「ツーペア」
今回もまた、カイトお嬢様の方が上手だった。その事実に愕然としながら、私達は質問に答える。
「二人は、休みの日は何をしてるの?」
「私は、レナと一緒に過ごしていますね」
「私も、執事長と一緒に過ごしてます」
「そっか」
今度は、カイトお嬢様がシャッフルする番で……当然のように、私達が負ける。
「二人は、私に仕えるのは迷惑じゃなかった?」
「とんでもないっ!」
「そんなこと、あるはずがありませんっ!」
「そ、そう? それなら、良いけど……いつも無表情だから、もしかしたら嫌だったかなって……」
「「この無表情は、デフォルトです」」
「そ、そう」
タジタジとなるカイトお嬢様。しかし、私達がカイトお嬢様を迷惑に思っているなど、本当にありえない。だから、ここは力強く断定させてもらう。
それから、その後もゲームは続いた。しかし、なぜか、どんなにイカサマをしても負ける。カイトお嬢様の手札が悪くなるようにイカサマしたはずなのに、なぜか自分の手札が悪くなっていたり、最終的には、ポーカーで一番強いロイヤルストレートフラッシュを狙ったものの、最後の一枚が違うなんていう展開になった上、カイトお嬢様の方がロイヤルストレートフラッシュを揃えていたり……とにかく、私達は、一度も、カイトお嬢様に勝つことはできなかった。
「私、昔から、運が良い時はとことん良いんだよな」
あんまりにも負けが続いて、打ちのめされた私達に、カイトお嬢様はニコニコ笑いながら告げる。
「でも、ノーラやリュシリーのことが色々と知れて良かった」
そう笑うカイトお嬢様に、私達はやり場のないやるせなさをどうにか飲み込む。
「また、ポーカーしてくれるか?」
「…………承知、いたしました」
承知するまでに間が空いてしまったのは、惨敗した以上、仕方ないことだろう。リュシリーにも許可をもらっているカイトお嬢様を見て、私達は、絶対に、カイトお嬢様と賭け事はしないことを決意するのだった。
いやぁ、ここでやってきました、海斗ちゃんの強運設定。
えっ?
作者、ちょっと前まで忘れてただろって?
……ま、まっさかぁ(目を逸らす)
と、とりあえず、海斗ちゃんの完全勝利ですっ。
それでは、また!




