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第四十七話 性別

ブックマークや感想をありがとうございます。


今回も、コメディさんがウロチョロと徘徊しております(笑)


それでは、どうぞ!

「ところで海斗。本来の性別は、まだ誰にも言っていませんの?」



 一通りゲームのルートの話を聞き終えて、色々な違いを確認した後、俺はリリスにそう問われる。



「本来の性別……なら、やっぱり、カイトさんは元々男なんですね?」



 ローレルからもそう尋ねられ、俺はうなずく。



「あぁ、元は男だ。この世界に来た時にはこの姿だったけどな。それで、性別のことはまだ誰にも言ってない」



 本当は、ライナードにだけなら教えても良いのではないかと思い始めているものの……男が片翼だったと知れば、ライナードはショックを受けるのではないかと思って、言えずにいた。



「では、わたくし達も言わない方が良いですわね?」


「ライナードさんと精神男なカイトさん……BL……じゅるり」


「リリスさん、ちょっと、ローレルさんが怖いんだがっ!?」



 どこか、狂気を宿したその瞳に、俺はとにかく怯える。



「ローレルさんは腐女子でしたのね」


「腐女子……」


「うふふ、うふふふふっ」



 不気味に笑うローレルさんを前に、俺は、とにかく全力で逃げたい衝動に駆られる。頼むから、俺で妄想しないでほしい。



「止めるのは無理そうですので、諦めてくださいまし」


「いや、待って!? 本当に怖いんだけど!?」



 お茶を優雅に飲むリリスさんに抗議してみるものの、どこ吹く風だ。



(だ、誰か……いや、助けてっ! ライナード!)



 リリスさんが頼りにならないと分かり、俺はこの世界で最も頼りにしているライナードに助けを求めようと辺りを見渡すが、元々、このお茶会は女子会の名目で行われている。ライナードが、側に居るはずもなかった。



「そ、そもそも、俺はノーマルだっ!」


「男性からの求婚は後をたちませんでしたけどね」


「ばっ!」



 そんな日本での情報を暴露され、慌ててリリスさんを押し留めようとしたものの、もう、それは遅かった。



「く・わ・し・くっ!」



 キランッと目を光らせて、ローレルさんはリリスさんへと詰め寄る。



「言うなっ!」


「ですが、海斗。協力者は多い方が良いですわよ?」


「何の協力者かは知らないが、それ、俺の何かが減る!」


「良いではないですか。多少減ったところで、そのうち回復しますわ」


「そういう問題じゃないっ!」



 俺は、頑張った。必死に必死に、リリスさんに俺の黒歴史を暴露されないように頑張った。しかし……。



「うるさいですわね。《黙れ》」


「な――――――」



 とうとう、リリスさんは実力行使に出る。何かの魔法によって、俺は、声を発することもできなくなってしまう。



「さて、静かになりましたわね。ローレルさん。答えは簡単ですのよ? ただ、海斗が男の娘だったというだけのことです」


(いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁあっ)



 そう、日本での俺は、まさしく絶世の美少女……に見える男だった。華奢で、撫で肩で、小顔で、パッチリとした目で……髪さえ短くなければ、大和撫子と言われ続けた見た目だ。



「あぁ、もう良いですわよ。《解除》」


「う、うぅ……」


「男の娘……はぁうっ、素敵ですっ」



 そんな見た目だったおかげで、俺は演劇でお姫様役をすることが多かった。女の部員も居るはずなのに、満場一致で俺が推薦されてしまうのだ。だから、ある意味女の演技はそこそこできるということになる。



(でも、でもっ、知られたくなかったぁぁあっ!!)



 なぜ、リリスさんがローレルさんにこの事実を教えたのかは分からないが、今は、とにかく心のダメージが半端ない。唯一の救いは、ここにはリリスさんとローレルさんしか居ないということくらいだろうか。



「元、男の娘だった主人公が、性別を見誤った神様によって、聖女として異世界に送り出された。そこから始まる、異世界恋愛ライフ……あぁあっ! 素敵っ! どうしようっ、妄想が止まらないっ!」



 ただ、ローレルさんに知られたことこそが致命的に思えるのは、俺の気のせいだろうか?



「海斗、これから先、この世界で暮らすのであれば、それなりに味方は必要ですわ。今回のこれは、必要なことでしたの」


(ニヤニヤしながら言われても説得力ないぞっ!?)



 そう思いつつも、もはや反論する気力もない。その後、俺はローレルさんの妄想をただひたすら、放心した状態で聞き流す。……聞き流せたことにしてほしい。



「とりあえずは、本来の性別は隠すという方向でよろしいですわね?」



 話が大幅に逸れてしまったものの、ローレルさんの妄想が一段落ついたところで、俺はリリスさんに、そう確認される。



「あぁ、頼む」



 そう言えば、リリスさんもローレルさんも、理由を聞くことなく了承する。そうして、波乱に満ちたお茶会は終わりを迎えるのだった。

いやぁ、ローレルちゃん、どんどん危険人物になってる気が……。


さて、この隠し事が、今回の章の主題となって参りますので、ここから楽しい楽しいすれ違いをお送りして参りますね。


それでは、また!

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