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第四十四話 本来のルート(一)

ブックマークや感想をありがとうございます。


今回から新しい章です。


ひとまずは、乙女ゲームの内容が明らかに!?


それでは、どうぞ!

 魔本の影響で倒れた俺が目覚めてから一週間。三日も経てば、ほとんど問題なく動けたのだが、念のため、念のためという言葉が繰り返されたことにより、俺は今日、ようやくリリスさん達と会うことができるようになっていた。

 そして、今はリリスさんとローレルさんを

招いて、三人でお茶会だ。ちなみに、それぞれのお相手の魔族は、ライナードを除いて仕事があるらしく、ここへ二人を送った後、渋々と馬車へ乗ってどこかへ去っていった。



「海斗、体調はもう大丈夫ですの?」


「あぁ、問題ないよ。と、いうか、三日後にはもう普通に動けたんだけど、ライナードがまだダメだって許可を出してくれなくて……」



 右斜め向かいに座って、優雅にお茶を飲むリリスさんの言葉にそう濁すと、今度は左斜め向かいでお菓子を頬張っていたローレルさんが口を開く。



「あぁ、それは……魔族と片翼のあるあるですねぇ」



 どこか遠い目をするローレルさん。もしかしたら、過去、ジェドさんと何かがあったのかもしれない。



「まぁ、海斗の体調が戻ったのなら良かったですわ」


「心配してくれて、ありがとう」


「っ、ふんっ」



 素直に言葉をぶつければ、途端にそっぽを向くリリスさん。こういうところは、莉菜ちゃんなんだなぁとしみじみと思ってしまう。



「それでそれでっ! ヒロインたるカイトさんは、どこまで進んだんですかっ!?」



 幼馴染みの影を見て和んでいると、ローレルさんがどこか興奮した様子で身を乗り出してくる。



「ヒロイン? 進むって、何が?」


「ローレル。まずは、ゲームのことから説明しませんと、さっぱりですわよ?」



 呆れたようなリリスさんの言葉に、ローレルさんは『しまった』といった表情になった後、椅子に座り直して姿勢を正す。



「それじゃあっ、説明しますね!」



 そう言って、ローレルさんはまず、この世界が『夢と愛のラビリンスロード』というゲームの世界に酷く似ていることを話始める。



「乙女ゲームかぁ……さすがに、そんなのとは縁がなかったなぁ」


「そうですわよね。海斗はもちろん、海里ちゃんもそんなゲームをするタイプではありませんでしたし」


「なっ! それは、人生の半分以上の損失ですよっ!?」


「いや、それはないだろう」



 ローレルさんに的確な突っ込みを返した俺は、ひとまず続きを促す。



「えー、それでですね、『夢愛』には第二作目がありまして、それに登場するヒロインが、聖女カイリなんです」


「……カイリ?」



 その説明に、俺は何だか嫌なものを感じる。



「そうなんですよね。カイトじゃなくてカイリなはずなんです。ビジュアルは変わってないんですが、名前だけ違うとか……どんなバグが起こったんですかね?」



 そう言われて思い出すのは、この世界に召喚される直前のこと。



(確か、俺は本来海里が行くはずだったお使いのために、寄り道することなく学校から帰っていて……)



 その道の途中で、突如として足元に魔法陣が現れ、この世界に来ることとなったのだ。海里がお使いに行けなくなった理由は、友達の相談に乗りたいから、なんてものだったはずで、それがなければ、あの道を通っていたのは海里だったはずだ。



(本来は、海里が召喚されるはずだった……?)



 それを思った瞬間、ゾワリとした悪寒に襲われる。もしかしたら、俺は、その召喚によって、元の世界で海里を亡くしていたかもしれないのだ。



「じゃあ、やっぱりここに来る予定だったのは海里ちゃんの方だったのですわね」


「だろう、な」



 ローレルさんは俺達の会話に疑問符を浮かべていたものの、俺はそれを説明するだけの気力はなかった。ただただ、海里を失わなくて良かったとしか思えなかった。



「良く分かりませんが、続けますね? それで、聖女カイリは、ヴァイラン魔国によって脅かされているレイリン王国を救うために喚び出されていて、そこで前作の攻略対象者とヒロインとともに、魔王討伐の旅に出るんです」


「待ってください。実際には、ヴァイラン魔国がレイリン王国を脅かしたなんていう事実はありませんし、そもそも、今はレイリン王国そのものが存在していませんわよ?」


「うーん、そこ、なんですよねぇ。何でここまでのバグが起こってるのか、私にも見当がつかないんです」



 リリスさんがローレルさんの言葉に反論するものの、俺は、別のところに意識を取られていた。



(あれが、攻略対象者とヒロイン……?)



 思い出すのは、確かに整った顔をした、俺を容赦なく置き去りにした野郎どもと、ひたすら俺を蔑んできたビッチ。



(ゲーム製作会社は何を考えてるんだっ!?)



 明らかに、あれらは性格が悪過ぎる。あんなのでゲームができるなんて、考えられなかった。



「レイリン王国が滅んだのはわたくしが関わっているからにしても、ヴァイラン魔国が他国を脅かすというのが、どうもしっくりきませんわね」


「そうなんですよねー。そもそも、ゲームで魔王陛下に片翼なんて居ませんでしたし? カイリちゃんか前作ヒロインが攻略する攻略対象者でしたし?」


「……なるほど、解決しましたわ」


「えっ!? 何で!?」


「魔王陛下の片翼の方も、日本出身ですので」


「えぇっ!?」



 そんな会話がなされている間、俺は、もしかしたら今は分からないだけで、ライナードの性格も悪かったりするのだろうかと、戦々恐々とするのだった。

いやぁ、色々と転生者やら転移者やらが介入した結果、本来のルートからは大幅にズレてしまったこの世界。


でも、こっちの方が断然幸せで良いですけどね。


それでは、また!

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