第四十二話 絶望の中で(ホーリー視点)
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今回は、賊に捕まったホーリー視点。
ちょっとばかし悲惨かも?
それでは、どうぞ!
私は、ヒロイン。この世界の。この、『夢と愛のラビリンスロード』の、主人公。それ、なのに……。
私は今、荷馬車で力なく横たわり、ぼんやりと虚空を見つめていた。思い出すのは、前世の平凡な日々。刺激的なものなんて、ゲームくらいしかない、つまらない日々。それなのに、今はそれがあまりにも愛しかった。少し前の私なら、そんなことは絶対に思わなかったはずだが、今はとにかく、前世に戻りたかった。
あの時、賊に拐われた私は、当然、その賊達がヴァイラン魔国からの回し者だと信じて疑わなかった。あるはずのない賊のねぐらに連れ込まれた時だって、まだ、私はこの後に迎えにきてくれるであろう攻略対象者の魔族に思いを馳せていたのだ。
(この展開は、全ルートの共通の展開よね? 誰だろう? 本当は、ジークフリートが良いけど、三魔将の中なら、ジェドかなぁ? だけど、ルティアスも捨てがたいしなぁ。あっ、ライナードだったらちょっと残念かも?)
そう思っていた私は、賊が本物であることを知った時、必死に叫んだ。だって、ヒロインである私が、賊のなぶり者になるなんてあり得ないのだから。
(でも、違った……)
私はヒロイン。だから、何をしても許されるし、どんな危機も攻略対象者が助けに来てくれる。そう思っていたのに、私は、誰にも助けてなんてもらえなかった。どんなに泣いても許してもらえず、ずっと、ずっと痛くて、苦しくて、死んでしまいたいほどの思いをしたところで、私はようやく、ここが現実だと気づいた。
(もう、遅い)
気づいたところで、もう、私は手遅れだった。奴隷の首輪をつけられて、自殺を禁じられた私は、なぶられては魔法で回復されることを繰り返して壊れかけていた。
(何で、私が、こんな目に……)
きっと、リリスの妹であるシェイラが悪役を演じなかったところから、運命は狂っていたのだ。そこで、ここが現実だと気づくことなく、あくまでゲームの中だと思い続けた結果、私は、今、悲惨なバッドエンドの中に居る。
ガタガタと揺れる荷馬車の中、私は絶望に満ちた心で、ただただ、救いを求める。
「助、けて……」
このままでは、奴隷として一生を終える未来しかない。その呟きは酷く掠れて、小さなものだったが、私の心の叫びを体現していた。すると……。
ガタンッと音を立てて、馬車が止まる。その衝撃で軽く頭を打ち付けながら、それでも体の痛みから動けずにいると、次第に外が騒がしくなる。
(な、に?)
外で何が起こっているのかは分からない。ただ、もしかしたら、誰かが助けに来てくれたのかもしれないと、小さな小さな希望が生まれる。
……そして、おもむろに、馬車の扉が開いた。
「久しぶりですね、ホーリー?」
そこに居たのは、かつて、レイリン王国で給仕をしていたはずの男。青い髪に青い瞳を持つ、ラディスという名の男。しかし、レイリン王国に居る時、彼に角はなかったはずだった。
「さて、貴女には私達に着いてきてもらいますよ」
微笑みながらも冷たい視線を寄越す彼の姿に、私は、救われたという安易な考えを持つことができなかった。傷ついた体を起こすこともできなかった私に、ラディスは側に居た何者かに指示を出して、私を抱えさせる。
「さぁ、では参りましょうか?」
「ど、こ……に?」
「それはもちろん、ヴァイラン魔国です」
そうして、私はわけも分からないまま、ヴァイラン魔国へと運ばれる。そこで、さらなる絶望が待っているとも知らずに……。
やっと、ここがゲームではないことに気づいたホーリー。
でも、バッドエンドはまだ終わっていません。
それでは、また!




