第三十六話 崩壊(ライナード視点)
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シリアスさんが、現在猛威をふるっております。
さぁ、海斗ちゃんの運命やいかにっ。
それでは、どうぞ!
お昼頃、カイトが目覚めた瞬間、俺は喜んだ。しかし……。
「カイト?」
「……」
俺の呼び掛けに、カイトはピクリとも反応しない。軽く揺さぶって呼び掛けてもそれは同じで、最悪な考えが心に浮かぶ。
(まさか、心を壊してしまったのでは……?)
嫌な汗が背中を伝い、俺はそっと、カイトの頬に手を添える。
「カイ、ト?」
情けないほどに震える声。そんな声で呼び掛けるものの、カイトは宙に視線を向けたまま、何の反応も示してはくれない。
(ルティアスを、いや、ジェドか? とにかく、これはいけないっ)
昨日呼んだばかりではあるものの、すぐに、俺は二人をもう一度呼ぶ。このままでは、カイトが戻ってこなくなりそうな予感に、俺はじっとしていることなどできなかった。
部屋をウロウロしながら、カイトの様子を気にかけながら、ドム爺からとにかくここで待つようにと言われた言葉を必死に遵守する。ドム爺が遣いを出してくれたため、後は、二人が来てくれるのを待つのみ。
(あぁっ、しかし、もしかしたら二人は来られないかもしれないっ)
そもそも、あの二人は俺と同じ三魔将で、忙しい身の上だ。それぞれに片翼もおり、俺などのために時間を取ってくれるか分からない。
「普通の医師と呪術士も呼ぶべきか……」
そんなことを考えながら、カイトの痛ましい様子を見て、心をズキズキと痛める。
「ライナード!」
と、そんな時、パタパタと駆けてくる足音がしたかと思えば、障子戸が大きく開かれてルティアスが入ってくる。
「ルティアスっ」
「カイトちゃんの様子はあらかた聞いたけど、今も変わりない?」
急いで来てくれたであろうルティアスに、俺は深く感謝しながら、今もカイトの様子に変わりがないことを告げる。
「少し、診るよ?」
「頼む」
カイトの側をヨロヨロと離れて、俺はルティアスにその場所を譲る。
「……」
「……」
長い、長い沈黙が降りて、俺は気が気ではない。しかし、ルティアスが口を開くまで、俺が話しかけるのは躊躇われた。
「……ジェドとも一緒に確認するつもりだけど、僕の診察結果は、カイトちゃんは、魔本に心を壊された状態だと思うよ」
「っ!?」
予想は、していた。しかし、それを他人の口から聞いて、より大きな実感となってしまったがために、動揺は大きい。
「どう、すれば……」
「しっかりと休養させること。バランスの取れた食事を与えて、安心できる場所作りをすること。毎日、優しく話しかけてあげること、かな?」
そんなルティアスの言葉を、俺は十回くらい頭の中で反芻して、それを心に刻み込む。
「そろそろジェドも来るはずだから……あぁ、噂をすれば、来たみたいだね」
すさまじい風を切る音がしたかと思えば、障子が一気に破れ、障子戸が倒れる。
「っ、すまない」
「いや、早く来てくれて、ありがとう」
さすがに、障子戸が倒れたことで気まずそうにしたジェドだったが、俺はそんなことはどうでも良かった。とにかく、今はカイトを診てもらいたかった。
「状況は?」
そう問いかけたジェドに、ルティアスは首を横に振る。
「診る」
「頼む」
すぐに、ルティアスと場所を交代したジェドは、またあの黒い触手を出してカイトの状態を調べる。
「……恐らく、心のダメージが深刻」
ルティアスと同じ結論。そして、教えてもらった対処法も同じで、俺は、これから長い戦いになることを覚悟する。
「ライナード、あまり根を詰めすぎるのは……」
ルティアスが言いかけて、ジェドがそれを手で制する。
「今は、思う存分、カイト嬢の側に居ると良い」
「あぁ、忙しいのに、来てくれてありがとう」
そうお礼を言えば、二人は同時に、痛ましいものを見るような目で俺を見る。
(今、一番辛いのはカイトなのに、な)
なぜ、そんな目をするのか分からないまま、後はドム爺がルティアス達への対応を引き受けるとの言葉に、二人に申し訳ないと思いつつも任せる。
「カイト……」
何も見ていないその瞳に、俺は胸が締め付けられる。
「ずっと、側に居るからな」
カイトを一人になんかさせない。その決意の元、俺はそっとカイトの手を取って、真剣に、カイトの心の傷が癒えてくれるのを神に祈るのだった。
あぁっ、シリアスさんが高笑いをして居座ってますっ。
コメディさん、カムバーック!
……コメディさんは、しばらく戻って来られない模様。
しっかりとシリアスさんとお付き合いするしかなさそうです。
それでは、また!




