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俺、異世界で置き去りにされました!?  作者: 星宮歌
第一章 囚われの身
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第三話 医務室

ブックマークや感想をありがとうございます。


さぁさぁ、今回は、また今まで登場していた人物が登場しますよ。


それでは、どうぞ!

(えっ? これ、俺、どうなるの?)



 ライナードと呼ばれた男に、ヒョイッと抱き上げられた俺は、そのまま硬直する。ちなみに、お姫様抱っこだ。



「ライナード?」


「申し訳ありません。カイトを医務室へ連れて行ってもよろしいでしょうか?」


「あ、あぁ……今はユーカも俺達と一緒に居ることだし、許可しよう」



 どうにも戸惑った様子の魔王の声に、俺の混乱はさらに酷くなる。



(医務室? えっ? 俺、手当てされるような怪我とかしてないけど? 何? 何で医務室?)


「少し、我慢しろ」



 俺に向けたライナードの言葉は、あまりにも硬く、到底好感を抱いてもらっているとは思えない。医務室はもしかしたら隠語で、拷問部屋だったりするんじゃないだろうかということに思い至った俺は、ライナードの腕の中で情けなくも震えてしまう。



「む……走るぞ」


「へっ?」



 と、次の瞬間、ゆっくりと流れていた景色が高速になり、風を切って進む。



(なになになになに!?)



 もう、すでに泣きたい。拷問なんてしなくても、何でも話すから、怖いのも痛いのも止めてほしい。



(えーっと、えーっと、拷問の時に好ましい性格……んなもんあるかっ! どうしようっ、演技で乗り切れる自信が小指の先ほども存在しないぞ!?)



 この世界に召喚されて、俺は少しだけ身長が伸びて、百七十くらいの身長だと思われる。しかし、この世界の人間は……いや、魔族もだが、軒並みデカイ。ライナードなんて、二メートルを超えているであろう身長だ。そんな大男に襲われでもすれば、俺は一堪りもないだろう。



「うぅ」


「っ!?」



 あまりの恐怖に泣きそうになっていると、ふいに、ライナードが走る速度が増す。



(いーやーっ!! 何で速くなるんだよっ!!)



 体に受ける風の勢いが強くなり、ピューピューと風を切る音が聞こえる。こんな状態では、暴れたとしても、落ちたらただではすまないだろう。俺にできることは、ただただ身を縮めて祈ることだけだった。



(どうかっ、どうかっ、拷問部屋じゃありませんようにっ!)



 帰れないことへの絶望よりも、今は拷問を受けるかもしれない恐怖の方が圧倒的だ。そうしていると、目的地に着いたのか、ライナードは速度を落とし、足で扉を蹴り開ける。



「うわっ、ちょっと、ライナード!? なに、ご、と……?」



 あれだけ走ったにもかかわらず、一切息を乱した様子のないライナードは、声をかけてきた男性らしい人物を無視して、ズンズンと進む。



「カイトを、診てくれ」



 そういって、ようやく椅子の上に下ろされた俺は、もう、完全にガチガチに固まっていて、体が上手く動かないような状態だった。



「ライナードが、女の子を誘拐してる!?」


「違う。許可はもらった」


「許可!? 誰に?」


「陛下から」


「陛下!? えっ? 陛下が女の子の誘拐を許可したの!?」



 背後で聞こえるよく分からない会話に、俺は少し心を落ち着けて周りを見てみることにする。



(……白い、部屋? 薬品……消毒液の、匂い?)



 そこには、危惧していたような拷問道具の数々、というわけではなく、本当に医務室らしい部屋だった。そして、背後で言い合っていた男性は、これまた魔族で、アクアマリンの髪に黄金の瞳、白い角を持った魔族だった。



「落ち着け、ルティアス。彼女は、奴らと一緒に居た聖女だ」


「聖女……? あぁ、報告にあった……でも、何でその聖女がここに居るの?」


「他の奴らは、カイトを置いて転移魔法の魔法具で帰ったらしい」


「はぁっ!?」


「どこか痛めてないか心配だ。早く診てくれ」


「えっ? あ、うん」



 何やら混乱しながらも、俺は本当に、怪我がないか確かめるためにここへ連れてこられたらしい。



「僕は、リリス以外の女の子は診たくないんだけどなぁ……」



 そうブツブツ言いながらも、ルティアスと呼ばれた彼は俺に痛いところはないかと尋ねてくる。



(そういえば、魔法の鎖で捕まった時、膝をぶつけたかも?)



 そう思って意識してみれば、確かに痛みがある。それを伝えれば、服の上から治癒魔法を展開してくれる。



「他は?」


「多分、もう大丈夫だと思います」


「多分ではダメだ。本当に、他はないのか?」



 曖昧な表現でルティアスに返事をすれば、ライナードがギロリとこちらを睨んで厳しく言う。



「そ、その……」


「ダメだよ。そんな脅すようなことをしたら。後から痛みが出ることもあるだろうから、今日のところは様子を見ると良いよ」


「む、分かった。なら、そうしよう」



 ルティアスの言葉で、引いてくれたライナードは、再び俺をヒョイッと抱き上げる。



「ライナード?」


「では、また」



 そう言って、今度は普通に歩き出したライナードは、その後、俺が何度自分で歩きたいと訴えても離してはくれなかったのだった。

あっ、ちなみに、時系列は『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』の後のお話です。


どうしてこんなことになっているのかは、そのうち書いていきますね。


それでは、また!

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