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第二十九話 お片付け

ブックマークや感想をありがとうございます。


今回は、書庫の片付け回です。


それでは、どうぞ!

 ライナードが書庫に突撃してきた事件から二日。俺は、着々と書庫の中を片付けていた。



(やっぱり、恋愛ものが多いなぁ)



 ジャンル順、そして、多分こうだろうと思われる言語順に、少しずつ並べていく中、今のところ、九割が恋愛もので埋まっている。その様子は、さすがに壮観と言わざるを得なかった。



「カイトお嬢様。あちらの山も崩し終えました」


「あっ、ありがとう」



 ちなみに、もう俺の口調は取り繕う必要などないと言われたため、使用人であるノーラやリュシリー、ドム爺の前では普段の口調だ。

 今日は、リュシリーが手伝いに来ており、やはり凄まじい跳躍力で上の方に積み上がっていた本を少しずつ崩してくれていた。



(……あれが、魔本の封印か……)



 そんな中、俺はライナードに言われていた魔本の封印場所が見えるようになったことに、少しばかり心臓をドキリとさせる。



(真実を映す、魔本……)



 魔本とは、開いた存在に害を与える魔法がこもった本のことで、その特性は様々だという。真実を映す魔本が、どのような害を与えるのかまでは知らないが、十中八九、開けるべきではないものなのだろう。しかし……。



(それでも、可能性があるなら……)



 もしかしたら、その魔本は、俺が知りたいと思っている帰る手段を映し出してくれるかもしれない。そう思えば、どうしても気になって仕方がなかった。



(ダメだ。ライナードと約束したんだから)



 あの魔本は、若い女性を好むものらしく、いくら封印してあるとはいえ、不用意に近づかないよう言いつけられている。俺自身も、せっかくライナードから信頼されているのに、それを裏切るような真似はしたくない。



(この本の中に、帰る手段が書かれてるものがないとも限らないし、な)



 一応は、そんな理由づけをしながら、俺は本を一冊一冊手に取って、分類していく。



(恋愛、これも恋愛、これも恋愛…………あっ、領政に関しての本だ)



 珍しく領の政治に関する本を見つけた俺は、数少ない恋愛以外の本が並ぶ本棚へとそれを突っ込む。



「……よく見てみれば、魔国語と現代魔国語の本は、全部恋愛以外なんだな」



 魔国語と呼ばれるのは、過去に使われていた言語らしく、俺からすればバリバリの日本語だ。そして、現代魔国語は漢字の文化がなくなり、平仮名をさらに変化させた文章で作られたものらしく、こちらは翻訳機能がなければ読めなかっただろうと思えた。ちなみに、本の割合としては現代魔国語のものが魔国語のものより少し多いくらいだ。



(魔国語は、今でもたまに使われてるみたいだし、全く読めないものにはなってないんだろうな)



 事実、この屋敷にある大浴場には、『男湯』『女湯』という言葉が魔国語で書かれている。何でも、魔国語は教養の高い魔族が勉強する言葉ではあるものの、片翼に関係することはほとんどないため、覚える魔族は少ないのだとか。



「カイトお嬢様。そろそろ休憩になさいませんか?」


「えっ? もうそんな時間?」



 黙々と恋愛小説を片付けていると、リュシリーがそう声をかけてくる。ここには時計がないから分からないが、リュシリーの肯定の言葉に、もうお昼時なのだと自覚する。



「……そういえば、お腹減ったかも」



 自覚してしまえば、空腹が際立つ。今にも鳴り出しそうなお腹を押さえて、俺は邪魔な本を隅に寄せながらゆっくりと歩く。

 結局、医者を呼ばれることはなかったものの、俺がちょっとつまづいただけであれだけの騒ぎになるのだ。気をつけるに越したことはない。



「先に行ってて。俺、もう少ししたら行くから」


「……かしこまりました。くれぐれも、くれぐれも、お気をつけて」


「あ、あぁ」



 じっと無表情ながらも迫力のある剣幕で念を押されて、俺は後退りそうになりながらうなずく。

 そうしてリュシリーが書庫から姿を消し、お昼の準備をしにいったところで、俺はゆっくり本を退けながら道を確保していく。



「よしっ、出られた!」



 ようやく書庫の出入口に辿り着いたその時、背後でカタリと小さな音がする。しかし、俺はそれに気づくことなく、今日のお昼は何だろうかと呑気に考えながら自分の部屋へと向かうのだった。

あれ?


最後に不穏な音?


と、いうわけで、次回は事件ですっ。


それでは、また!

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