表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/121

第二十七話 お仕事

ブックマークや感想をありがとうございます。


今回は、カイトちゃんのお仕事ゲットなお話。


それでは、どうぞ!

 昼食を一緒に摂ろうとのライナードからの誘いを受けた俺は、ひとまず本とのにらめっこをやめて、そちらに向かうことにする。今日はしっかり本の整理に精を出していたせいか、いつもよりお腹が減っていた。



「カイト、来たか」



 庭の中にある小さな屋根とテーブルが置かれたその場所で、ライナードはフワリと微笑んで俺を出迎えてくれる。



「はい、えっと、お招きいただき、ありがとうございます?」


「む、他人行儀はやめてほしい」



 丁寧に対応したつもりが、どうやらそれは、ライナードのお気に召さなかったらしい。眉を完全に下げて悲しそうにするライナードを前に、俺はすぐに言い直す。



「誘ってくれてありがとうっ」


「む」



 そう言えば、満足そうにうなずくライナード。そして、よくよく見てみると、そのライナードの手には、大きなバスケットがあった。



「今日は、サンドイッチ」


「サンドイッチ!」



 具は何だろうか? と、一気に期待が高まる俺に、ライナードは席に座るよう勧めてくれ、いそいそと準備を始める。



「レタスとハムのサンドイッチ、照り焼きチキンのサンドイッチ、玉子のサンドイッチ、ベーコンとチーズのサンドイッチだ」



 バスケットの中を見せられ、それぞれの説明を受ける俺は、もう、すでに好物へと目をつけている。



「どれを取る?」


「照り焼きチキンっ」



 キャベツと一緒に挟んであるらしい照り焼きチキンサンドは、日本に居た頃から、わりと好物だった。ライナードが片手で渡してくれたそれを、俺は両手で持ちながら、ライナードもレタスとハムのサンドイッチを手に取る様子を眺める。



「食べよう」


「あぁっ!」



 飲み物は何やら香りの良い紅茶が置かれている中で、俺は一気にそれへとかぶりつく。



「んーっ、おいひいっ」


「そうか」



 蕩けるような笑顔を浮かべるライナードに、俺は一瞬ドキリとしながら、照り焼きチキンのサンドイッチを堪能する。



(って、そうだっ、話があるんだった)


「ライナード」


「む?」



 俺がちょこちょこ食べる中、ライナードは大きな口でもう半分以上を平らげている。それを横目に、俺はようやく、この前から言いたかったことを言う。



「仕事がしたい」


「仕事?」



 キョトンとした様子のライナードに、俺はこの屋敷にお世話になり続けるのも悪いからという建前で、必死にライナードへ仕事をしたい旨を告げる。



「その、私、ずっと屋敷に何もせずに居るのは申し訳なくて、少しでも働いて恩返しがしたいんだ」


「気にする必要はないが……むぅ。カイトは、働きたいのだな?」


「あぁっ」



 すぐに否定されることもなく、考えてくれる様子のライナードに、俺は目を輝かせる。働いて、給料がもらえるようになれば、日本に帰る方法を見つける旅に出られるかもしれない。



「しかし、カイトのような可憐な女性が働くとなると……どこかの事務か?」


「それでも良い」


「恐れながらライナード様。カイトお嬢様は人間でございます。魔族の女性と同等に考えては危険かと」


「む? そういうものか?」


「はい」



 ノーラの言うように、魔族の女性と同じように考えると、何が危険なのだろうかと、首をかしげるものの、その説明は残念ながらない。



「むぅ……」


「もう一つ、発言をよろしいでしょうか?」


「む」



 悩むライナードに、ノーラが発言を求めて、ライナードが許可を出す。そうして、続けられた言葉に、俺は驚くこととなる。



「カイトお嬢様には、この屋敷の書庫の整理、及び管理をお任せになってはいかがでしょうか?」


(えっ? それって、仕事、なのか?)



 自分のやっていたことが仕事という感覚がなかった俺は、一瞬驚いて、ライナードを見る。



「……あそこは、様々な言語の書物がある。さすがに読めないだろう」


「いや、読めるけど」



 そう言った途端、ライナードは奇妙なことに、その動きを停止させる。



「確か……『これで片翼を見つけられるっ。旅の実践集』とか、『恋花の舞』とか『君に捧ぐ愛の歌』とか」



 そう言って、それぞれの覚えている限りのタイトルを挙げていけば、ライナードはタラタラと汗をかき始める。



「……ライナード様、恋愛ものの本がお好きなのですね」


「ち、違うっ! これは……そうっ、片翼が見つかったら良いなと思うと、いつの間にか買っていただけだっ」


「ちなみに、『小動物な彼女』の主人公名は?」


「リアナ……はっ!」


「ガッツリ読んでおられるようですね」



 どうやら、恋愛小説はライナードの趣味だったらしい。



(こういうのは、確か……)


「オトメンか」


「『おとめん』?」



 ノーラが聞き返すのを、何でもないと首を振って、俺はもう一度話を本題に戻す。



「それで、私は働ける?」


「……あ、あぁ……」



 ダメージが大きいのか、顔全体を両手で覆うライナード。それを可愛いと思いながらも、俺は思わぬ形で就職口をゲットしたことに、内心、喜ぶのだった。

ライナード、どんどん乙女な部分が暴露されていきます。


もはや、ライフはゼロ!


それでは、また!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ