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第二十四話 禁断の部屋

ブックマークや感想をありがとうございます。


今回は、イチャイチャ……には残念ながらならないんだよなぁと思いながらも、二人の距離が(物理的に)近いです。


それでは、どうぞ!

「結局、言いそびれた……」



 リド姉とのお茶会に疲れた俺は、結局その後、ライナードと会うこともなく、夜を迎える。本来なら、仕事に関しての話がしたかったのに、残念だ。



「はぁ……」



 スマホもパソコンもテレビもない中では、どうにも手持ち無沙汰になってしまい、俺はついついため息を溢す。



「カイトお嬢様?」



 すると、それを聞き咎めたリュシリーが無表情なまま問いかけてきて、俺はどうにか『何でもないです』と返す。



「……ライナード様なら、先ほどお帰りになられました。会いにいかれますか?」



 しかし、なぜかは知らないが、俺の内心は透けていたらしい。リュシリーの言葉に、俺は頬を引きつらせないようにしながら、どうにかうなずく。



「その、迷惑でなければ……」


「迷惑など、あるはずがありません。万が一そのようなことをライナード様が言った場合には……」


「場合には?」


「絞め落とします」


「ひっ」



 キランと目を光らせて告げたリュシリーは、多分、本気だ。自分に向けられた言葉ではないものの、何だか背筋に冷たいものを感じる。



「もちろん、そのようなことがあるはずはございませんが……さぁ、それでは支度をしてしまいましょう」


「えっ? 支度?」


「……カイトお嬢様は、そのお姿で向かわれるおつもりですか?」



 そう言われて、俺は自分の姿を見下ろしてみる。今は、夕食も入浴も終えて、後は寝るだけの状態だったため、透け感のあるネグリジェ姿だ。



(うん、目に毒だな)



 男の視点で見てしまえば、その姿は確かに可愛いが、襲ってくださいと言っているようなものだった。



「着替えますっ」


「では、簡単なワンピースに致しましょう」



 そう言われて、俺はリュシリーに全て剥かれて、ワンピースに着替える。伸縮性のある生地に、黒いリボンを腰に付けた白いワンピースを着て、上からはこれまた黒いカーディガンを羽織る。



「では、参りましょう」


「はい」



 そうして、俺はライナードの元に向かう。まさか、あんなことになるとは思わず……。








 ライナードは自室ではなく、別の部屋に居るというので、俺は一人では迷いそうな道を、魔力で灯るランプを携えたリュシリーに導かれるままに歩く。そうして訪れた部屋は、和室の一つだった。



「ライナード様、リュシリーです」


「……入れ」



 障子越しに声をかけるリュシリーに、ライナードは少しの間を置いて、入室の許可を出す。



「それでは、頑張ってきてくださいませ。カイトお嬢様」



 『何を?』と問いかける間もなく、リュシリーはさっと身を翻してその場を立ち去る。



(……まぁ、いっか)



 良くは分からないが、ライナードを相手に頑張るようなことなどないだろうと、俺はさっさと障子を開けてしまう。……そう、そこが禁断の場所だなんて知らずに、開けてしまったのだ。


 リュシリーが置いていったランプを手に持ったまま、俺はその部屋を覗いて絶句する。

 そこにあったのは……ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ……とにかく大量のぬいぐるみ達だった。しかも、結構可愛い。



「む……水……」



 そんなぬいぐるみに囲まれた部屋の安楽椅子で、ライナードは熊のぬいぐるみらしきものを抱き締めたまま、唸るようにそう告げる。



「……」



 声をかけて良いものかも分からなかった俺は、とりあえず、近くのテーブルに置かれた水差しからコップに水を注いで目を閉じた状態のライナードに渡してみる。



「む……」



 そして、近くに寄ってみると分かったのだが……ライナードは随分と酒臭かった。



(酔ってる?)



 目を閉じた状態にもかかわらず、しっかりと水を受け取ったライナードは、水を呷る。そして、そこでようやく、ライナードは目を開けた。



「カイ、ト……」


「う、うん」



 ぼんやりとしたライナードは、いつもよりその表情が柔らかく、ともすれば、妖艶さも備えているように見える。



「カイト……」



 にへっと笑ったライナードは、抱き締めていた熊のぬいぐるみを投げ捨てて、俺をギュウゥッと抱き締めてくる。



「ラ、ライナード!?」


「カイト、可愛い。大好き、愛してる」



 酔った勢いなのか何なのか、一気に思いの丈を告げてくるライナードに、俺はアワアワするしかない。



(酔っぱらいの対処方法なんて知らないぞ!?)



 残念ながら、俺はまだ大人じゃない。酔っぱらいの看病というか何というかをした経験はこれっぽっちもない。



「カイト、カイト」



 抱き締めるだけで、それ以上何かをしてくる様子がないことだけは救いだが、どうして良いのか分からずに途方に暮れる。



「えーっと……そうだっ、水っ、水を飲んで!」


「む……」



 抱き締められたまま、どうにかテーブルの上の水差しを指差す。



「カイト」


(っ、何で抱き締める力が強くなるんだよ!?)



 どこかすがるような声で、俺を抱き締める腕に力を込めるライナード。しかし、別に苦しいわけではないので、力ずくで逃れようという気は起きない。いや、そもそもライナード相手に、力ずくで逃げられるわけもないのだが……。



「カイト、側に居てくれ。居なくならないでくれ」



 切なく懇願するようなライナードに、俺はとにかくここから離れたい一心で叫ぶ。



「分かったっ。分かったから離してくれっ!」


「本当に?」


「本当だからっ!」


「……良かった……」



 そうして、その言葉を最後に、急にライナードの力が抜ける。



「わっ」



 ライナードが倒れることはなかったものの、中身がなくなって、ライナードに握られていたままだったコップはコロコロと畳の上を転がっていく。



「えーっと……」



 時間は、恐らく深夜。周りに人気はなく、このままだとライナードは身体中を痛めそうな体勢だ。



「……人、捜そう」



 ライナードの逞しすぎる体を持ち上げる力などない俺は、とにかく助けを呼ぶべく、屋敷の中をさまようのだった。

これ、ライナードが覚えていれば、言質を取ったことになりそうですが……覚えていたら覚えていたで、あの部屋を見られてしまった、とショックを受けるかも?


それでは、また!

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