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第二十一話 相談(ライナード視点)

ブックマークや感想をありがとうございます。


今回は……第一作目を読んでいた方々にとっては、懐かしのあの人が登場!(何気に、二作目の最後にも登場してましたが)


それでは、どうぞ!

「……帰りたい」



 その言葉が聞こえたのは、偶然だった。一度はカイトに従って部屋を出た俺は、作り置きのクッキーがあったことを思い出して、それをカイトに渡すべく、部屋の前まで来ていたのだ。障子を前に、カイトの切ない声を聞いて、俺は胸が締め付けられる。



(カイト……すまない)



 旧レイリン王国へカイトを送り届けることは、時間がかかるものの簡単なことだ。しかし、同僚であり友人のルティアスにカイトの身の上調査を頼んだところ、情報が出てこないという答えが返ってきて、今なお調査中なのだ。分かったことといえば、カイトがあの勇者一行に随分と虐げられてきたということくらいで……それを知った時には、思わずそいつらを殺しに向かおうとしてしまったくらいだ。



(カイトの住む場所を特定して、想い人を確認してから送り届けたいが……カイトの気持ちを思うと、もう、行動に移した方が良いのか?)



 カイトの故郷は、カイトに直接尋ねれば済む話だ。この国の言葉が分かることから、カイト自身は上流階級の人間だろうことが分かる。だから、もうすぐ特定されるはずだった。


 クッキーを片手にスゴスゴと自室に戻った俺は、近いうちに訪れるであろうカイトとの別れに、泣きそうになる。



(行ってほしくない……)



 拒絶された以上、そんな我が儘は言えない。しかし、それこそがまごうことなき本音だった。



(だが、カイトには幸せになってほしい……)



 できることなら、それは自分の手で行いたいところではあるものの、カイトの話を聞く以上、カイトの想い人は優秀な人間らしかった。戦闘能力はなさそうだとは聞かされたものの、人間はそこまで戦闘能力を重視しないこともある。カイトも、きっとそういった人間なのだろう。



(……少し、出てくるか)



 今日は、ルティアスとはまた別の友人と待ち合わせをしている。

 重い腰を上げ、屋敷を出て、八本足の馬、スレイプニルが引く馬車に乗り込むと、待ち合わせの喫茶店へと向かう。

 黒と白をベースにした、シックな建物。そこに入れば、すぐに、その友人は俺に気づいて手を挙げる。



「こっちよ、ライナード」



 低い声で呼ばれてそちらに視線を向けると、そこに居たのは、真っ赤なロングヘアーに真っ赤な瞳、真っ赤なドレスを身に纏った……オネェと呼ばれる人種だった。



「リドル。すまない」


「良いのよ。ワタシ、恋愛相談の達人だから」



 席に着いた直後、謝罪をした俺は、改めて目の前の人物を眺める。どこか遠い目をする彼……いや、彼女(?)の名前はリドル・テイカー。この国で唯一爵位で呼ばれる公爵家の三男坊だ。



「……本当に、すまない」



 リドルは、かつて、俺の主であるジークフリート陛下と、今の魔王妃であらせられるユーカ様を結ぶために奔走した立役者だ。本人は『ヘタレを矯正しただけよ』と言うが、その実績は計り知れない。



「それで? やっと片翼を見つけたと思ったら……何が問題なの?」



 そう尋ねるリドルに、俺は単刀直入に告げる。



「フラれた」


「そう、フラれ……た? えっ? その顔が怖いからとか?」



 改めて口に出すと、かなりダメージが大きい。しかし、事実として、俺はカイトにフラれている。



「いや、想い人が居るらしい」


「想い人……それは、また難しいわね」



 思いっきり眉根を寄せるリドルに、俺はうなだれることしかできない。

 店員が近くを通ったのを確認したリドルが、コーヒーを二つ頼んだのを聞きながら、俺はカイトのことを想う。



(カイトは、泣いていないだろうか?)



 『帰りたい』と言った声は、あまりにも切なかった。一人になりたいだろうと思って、そして、自分もリドルに相談したいと思って出てきたが、もしかしたら間違いだっただろうか。



「……あんたもそんな顔ができるのね」


「む?」



 突然、わけの分からないことを言われて戸惑うと、リドルはゆっくり首を振る。



「いえ、何でもないわ。それより、状況を詳しく教えなさい」



 そう言われて、俺はカイトとの出会いと、今までの関わりで分かったことを全て打ち明けるのだった。

リドルは相談相手として引っ張りだこですね。


それでは、また!

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