第百十九話 告白
ブックマークや感想をありがとうございます。
さんざん引き延ばしましたが……さぁっ、海斗ちゃんっ!
いけーっ!
と、いうことで、どうぞ!
ライナードに振り回されてばかりの本日。俺は、どうにかライナードの腕から解放されて、ジュースを飲み干し、街へと繰り出していた。手袋もマフラーもしっかりと装備して、準備万端……だったのだが……やはり、ライナードはどこか甘い。
「カイト、次はどこに行きたい?」
「え、えっと……雑貨店、とか?」
「む。分かった。……カイト、抱き上げてみても良いか?」
「ダ、ダメッ」
「……そうか……」
ライナードは先程から、なぜか俺に触れたがる。手を繋ぐのはもちろんのこと、ことあるごとに抱き締めてくるし、頭も撫でてくる。街を歩けば、少しはマシになるなんて、あり得なかったのだと思い知ることになる。
「ライナード……あの……」
「む? どうした? カイト?」
さすがに様子がおかしい。俺は、それを指摘しようとライナードを見上げるのだが、甘く甘く蕩けるような笑みを直視してしまうはめになり……心臓がドクリと跳ねる。全身の血流が速くなり、顔がどんどん赤くなり、頭がボゥッとする。だから……。
「……好き……」
その言葉を告げたのは、無自覚だった。
「っ、カイト、今っ」
「……はっ、ち、違う! そうじゃ、なくて、だな」
思わず本音がポロリと漏れた俺は、目を大きく見開くライナードを前に必死に誤魔化そうとして……しゅんと悲しそうな顔になったライナードに、言葉を詰まらせる。
「あ、その……」
(もう、良いんじゃないか?)
酷く残念そうな様子のライナードを見ていると、そんな考えが頭の中に浮かぶ。
「えっと……」
(もう、否定なんて、できないだろう?)
そう、否定はできない。俺は、もう、どうしようもなくライナードに惹かれている。
「ライ、ナード……」
(迷う意味なんてあるのか?)
頼もしくて、優しくて、暖かいライナード。きっと、好きだと伝えたら、そういう関係になる。しかし、それは本当に恐れることなのか、今はよく分からない。
「お、れは……」
(いつまで、ライナードを待たせるつもりだ?)
そう、このまま何も言わなければ、きっといつまでもライナードを待たせてしまう。そして、その間にまたライナードが言い寄られたりでもすれば……。
(ライナードを、とられたくない)
幼稚な独占欲。しかし、胸に重くのしかかるそれは、決して無視できない。
ライナードに嫌われたくない。ライナードに愛想を尽かされたくない。でも、ライナードが他の女性と一緒に居るところなんて見たくない。
「ライナード、好き」
グチャグチャな心が、一つの答えを導き出して、それを告げさせる。
「カイ、ト……」
「……は、ははっ……俺、ライナードのこと、いつの間にか好きになってたみたいだ」
呆然とするライナードに、俺は、少しだけ軽くなった口を動かして、冗談めかして告げてみる。
(どうしよう。想いが、溢れて止まらない……)
自分の意思で、言葉に出した瞬間、その想いはどんどん溢れてくる。ライナードが好き。ライナードを愛している。そんな甘く、激しく、強い感情が、全身を駆け抜ける。
「……カイト。俺も、カイトを愛している」
「う、ん……」
(あぁ……想いを返してもらえるって、こんなに幸せなんだ……)
甘く甘く、何もかもが蕩けてしまいそうな感覚に、俺はしばし酔いしれる。
返事をした途端、俺はライナードにギュウッと抱き締められる。そして……フワリと、唇に感じた温もりに、俺はハッと我に返る。
(い、い、今っ、キ、キ、キ、キ……キス!?)
口づけを、いわゆる、ファーストキスを、今、現在進行形でしているという事実に、俺は大混乱に陥る。
「カイト……」
長い、長い、キス。いや、恐らくは数秒くらいのものだったのだろうが、体感時間はその何倍も長く感じられたキスが終わると、ライナードは壮絶な色気を纏って妖艷に微笑む。
(あっ、これ、ダメなやつ)
その直後、俺はあまりの色気に当てられて、意識を失うのだった。
いやぁ、前回の嫉妬はかなり堪えた模様です。
海斗ちゃん、ようやくの告白です。
次回は、エピローグになる、かなぁ?
それでは、また!