第九十九話 手を繋いで(ライナード視点)
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回は、デートのライナード視点です。
さぁ、ライナードの心境やいかに?
それでは、どうぞ!
半ば事故のような形ではあったものの、カイトをデートに誘うことには成功した。そして、デート当日……。
(くっ、目を、合わせられないっ)
カイトは、とても可愛い装いで、俺の前に現れてくれた。しかも、その色は俺の色で、俺のものだと主張しているような姿だった。そのおかげで、今、俺は自分の中の悶える心と葛藤中だ。
(い、いや、ダメだ。ちゃんと感想を言わなければっ)
懸命に声を絞り出して、素直な感想をちょこっとだけ、告げることに成功する。
「とても、似合ってる」
「あ、ありがとう」
はにかむカイトの姿に、俺は思わず硬直する。
(は、犯罪的な可愛さ……これは、外に出して良いのだろうか? 拐われたりなどは……いや、そんなこと、俺がさせないが、それでも、邪な目で見られたりするんじゃないだろうか?)
そうして悶々としていると、ノーラから開演の時間があるから早く出るように諭され、ぎこちない動きながらもとりあえず動く。
馬車の中では、お互いに沈黙が長く続き、やはり褒める言葉が足りなかったと思い返して懸命に言葉を紡げば、カイトは恥ずかしそうに視線を逸らす。
(カイトが可愛過ぎて、つらい……)
赤い顔をしたカイトは、堪らなく可愛くて、抱き締めたい想いをどうにか我慢する。
(少しずつ、ゆっくりだ。ここで焦って、カイトに嫌われたくない)
馬車から降りる時にカイトの手を取れば、その手の小ささに良く分からない感動が押し寄せる。
(こんなに、小さいもの、なのか……)
か弱いカイト。体のパーツがどこもかしこも男の俺と比べると随分小さなカイト。そんなカイトが、愛しくて愛しくて堪らない。
優しくて、元々男で、運がとても良くて、ニナにべた惚れなのが少し悔しいが、母性に溢れていて、料理や裁縫が苦手で、苺大福が大好物で、オムライスやハンバーグもその次くらいに好きなカイト。まだまだ、色々なことを知りたい。カイトのことなら何だって、知りたい。
雪祭りの話になって、どうにも興味深そうに話を聞いていたカイトに、俺は明後日のデートの約束を、平静を装って取り付ける。内心は、心臓がバックバクで、断られないかが心配で仕方なかった。
「っ!?」
『デート』という言葉を改めて出してしまったことで、警戒でもしたのか、カイトは顔を赤くして固まる。しかし……。
「ぅ、ん」
小さな小さな声ではあったが、了承を得られた瞬間、俺の心は天に舞い上がるような心地になる。
(俺は、今日、死ぬのか?)
事故のように告げたデートの約束ではなく、はっきりと告げた約束にうなずいてもらえた俺は、しばし現実感を失いかける。
「ライナード、あの……劇場に、行かないのか?」
「っ、そ、そうだな。ただ、まだ早いから、軽く朝食を食べよう。お薦めの店がある」
不安そうに見上げられて、俺はようやく我に返って反応する。
(ま、まだ、デートは始まったばかりだ。今、死ぬわけにはいかないっ)
たとえ、目の前に死神が現れようとも、俺はそいつを斬り捨ててみせる。そんな意気込みとともに、俺は、軽食を提供している、サンドイッチが絶品なお店へとカイトをエスコートするのだった。
初ですねぇ。
可愛いですねぇ。
いやぁ、しっかりエスコートしてますよ、ライナード。
デートの約束も、しっかり取り付けられましたしねっ。
次回は、海斗ちゃん視点に戻る予定。
それでは、また!




