鼻血
人差し指と中指が
長方形の箱の中心から
頼りなさげに漂うちり紙を挟む
ふわりと持ち上げた勢いで顔を覆い
紙を挟んでいた指で鼻をつまむ
こんな悠長な行為をしている間にも
私の右の鼻の
きっと右側面にできた傷から
止めどなく流れ出るものがある
ちり紙が間に合わず溢れた血は
上唇に滴り口内に入り込む
「血は鉄の味」とはよく言うが
血は血の味だとしか思えない
そもそも鉄の味をよく知らない
みんなそんなに
鉄を食ったことがあるのか
もうそのまま流れ出れば良い
そんなやけな気持ちとは裏腹に
手元はこよりの準備万端
血の味鉄の味ももうここまで
さよなら鼻血
口を拭う