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隣ノ世界ノワタシ  作者: ヴィンディア


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第20話 ひとまずの別れ

前話スキップした方に補足です。

幸せな夢だけでなくつらい現実となる可能性があることを示唆した悪夢を見たというお話でした。

 日付は10月27日。あと一日でリミットとなるこの日、部屋に彩と翔太を呼んでいた。こちらの世界では最後になる可能性もあり、話しておきたかったのだ。


「お誕生日会は明日よ?」


 それはもちろんわかっている。


「なんでわざわざ前日に呼び出されたんだ?」


 その意見もごもっともだ。


「最後になるかもしれないから…」


 その一言で二人とも敏感に察してくれたようだった。


「そうか、もうそんなに経つか。で、結論は出てるんだろ?」


「うん、わたしとしてはね」


「場合によっては、明日には元のゆうきが戻ってきてるかもしれないって事よね?」


 黙って頷く。妙に彩の表情が硬い。


「う~ん、正直どっちのゆうきともお別れしたくないな、俺は」


「実を言うと、あたしはあんまり別人とは思えてないのよね」


 二人で、オレの捕らえ方に違いがあるようだ。

 翔太はオレという存在を元のユウキとは別と捉えて、改めて交友関係を築いてきたという認識なのだろう。勿論根底に似たようなものを感じていたからこその今の関係ということもあるだろう。

 それに対して彩は根底が同じで少し感じが変わったが元のゆうきと別人とは思っていない。

 つまるところ


「あたしはドライな言い方かもしれないけど、どっちもゆうきにしか見えないからしんみりすることもないわ」


「俺は今のゆうきも前のゆうきも会えなくなると思うと寂しいな」


 こうなるわけだ。

 両親はどちらかというと彩に近い感覚のようだ。

 むしろ、最後になるかもしれないから話しておきたいと思ったのはオレの方。


「二人とも思うところはあるかもしれないけど、どういう結果になるにしてもわたしが最後に話しておきたかったんだ」


「大げさよ。向こうの世界にだってあたし達いるんでしょ?」


「いるけど、やっぱりこっちの二人とはちょっと違うよ」


 オレ自身の男女差というのももちろんあるが、それ以外にも違いはある。例えば翔太がオレと彩二人に対して過保護だったり、彩が元の世界の彩以上にお節介だったりといったところだ。


「そんな事言って明日しれっと今のお前だったら笑うぞ?」


「そうね、『昨日の仰々しかったのは何?』ってなるわね」


 茶化してくる翔太に、それに乗る彩。これでも真面目な話しようと思ってるのに台無しだ。


「あのねぇ…真面目な話しようとしてるんだから茶化さないでよ。話戻すよ」


「いや!!!」


 唐突に彩が大声を出した事にオレも翔太も驚く。


「どうした?急に」


「本当は強がってただけなの…その話の続き聞いたらどっちかのゆうきとはもうお別れなんでしょ?」


 さっきはどっちでも変わらないと言ってたのは精一杯の虚勢を張っていたという事なのか、彩も結局はオレと元のユウキを同一とは思い切れていなかったという事だ。

 彩の言葉に黙って頷く。


「面倒見の良いフリして、実は最初の頃は早く元のゆうきに戻ってきてほしかった…。でも付き合ってるうちにちょっと違うけど、やっぱりあんたもゆうきで、元のゆうきが戻ってきたら今のゆうきはいなくなるって思ったらそれも悲しくって…」


 最後は言葉が続かずに涙を流し始める。

 最初の頃は親友のポジションに居座った知らない奴だったが、付き合ってる内に友人という意識が芽生えてきたのかもしれない。そして最終的にどちらか片方を失うのだ。


「なんだよ、結局彩も俺と同じだったんじゃんかよ」


「そうよ!悪い!?」


「い、いや、悪くないけど」


 たじたじになる翔太が可笑しくて吹き出してしまう。


「何がおかしいんだよ…」


「ごめんごめん、どっちの世界でも翔太は翔太だなぁと思ってさ」


 元の世界でも、小学校の頃は彩に怒られてたじたじになる翔太をよく見たものだ。


「なんだよソレ。向こうでも俺ってそういうポジションなわけ?」


「うん、よく彩に怒られてあたふたしてたよ」


 そして泣き続ける彩にも声をかける。


「ねぇ、彩」


「なによ…」


「オレはね、オレも元のユウキも幸せになれそうな選択をしようと思ってるんだ」


 彩も翔太も黙って聞いているので続いて話す。


「だから、その選択を尊重して欲しいんだ。どちらかを忘れてとは言わないけど、向こうの世界にいる方は幸せになってるんだって思って、その分こっちにいる方と仲良くして欲しい」


 オレとしてもどちらかの世界の人達とはお別れなのだ。寂しくないわけがない。しかし本来はどちらかしか存在できないわけで、二人共というのは贅沢というものだ。


「そんな事わかってたわよ!でも…でも…」


 頭では割り切れていても、心はどうしようもない。そういう事なのだろう。

 彩の頭を抱いてオレの肩にのせてあげる。するとしがみついてきて、また泣き始めた。

 翔太の方を改めてみると、目が赤い。つられて泣かないだけえらいなと思うところもあるが、無理しなくてもいいのにとも思う。恐らく、男としてのプライドがおいそれと涙を見せる事をよしとしないのだろう。


「ちょっとトイレ」


 翔太がそう言って部屋を出て行った。我慢の限界だったのかもしれない。


 本来は誰にも頼ることなく、怪しいと思われても白を切り通しているべきだったのだ。そうれば、この二人と両親にも悲しい思いをさせなくてすんだかもしれない。

 しかし、そうするとオレの精神がもたなかったかもしれない。いやもたなかっただろう。そうなると結局周りを悲しませる事になったかもしれない。はたまた、もっと早い段階で元のユウキがこちらに戻ってきていたかもしれない。どちらが良かったかは今ではもうわからない。だから現時点での最善と思う道を選んでいくしかない。

 時間にすれば10分かそこらかもしれない。しかしそれぞれが気持ちを整理するには十分な時間だった。


「プレパーティしよっか」


 唐突に彩が提案をしてくる。「なんの?」というのもバカらしい。


「そうだね、やろうか」


 そこで翔太も戻ってくる。


「トイレ長かったわね」


「うぐ、腹の調子悪くてさ」


 言い訳なのは彩もわかっているようで悪戯っぽい笑みを浮かべている。


「な、なんだよ」


「べっつに~」


 先ほどの仕返しとばかりにわざとらしい言い方をするが、翔太は恥ずかしそうな悔しそうな顔をしているだけで言い返せないようだ。


 その後はジュースやらお菓子やらを持ち寄り、本当にちょっとしたパーティのように雑談して騒いで過ごした。弟の楓がお菓子目当てで乱入してきたりもあったが、概ね湿っぽい空気はなく、明るい雰囲気で時間が流れていった。

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