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隣ノ世界ノワタシ  作者: ヴィンディア


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12/30

第11話 これまでとこれから

 間もなく年が明ける。2005年が終わって2006年に切り替わるまであと数分を残すのみとなっていた。

 元の世界では高校卒業した後は友人達や彼女と過ごす事が多かったが、今は中学生だ。大人しく家族全員で炬燵に入ってテレビを眺めている。

 父親は酔い潰れていびきをかきながらうたた寝しており、弟の楓はゴロンと腹這いになりながら携帯ゲーム機で遊んでいる。実質テレビを見てるのはオレと母親だけだ。そんなオレもテレビを見ている風だが実際は今年起きたことを思い出していた。


 思い起こせば、誕生日近辺以降の生活はドタバタ続きだった。

 その最たる出来事は、やはりこちらの世界に来てしまった事だろう。当然の事ながらこちらに来てしまった経緯や原因はわからず、その帰結として帰る方法など雲を掴むような話だ。


 こちらの世界に来た直後のバタバタを除いて大きなイベントと言えば、11月にあった定期試験だ。

 実際試験もさして勉強せずとも問題は無かったのだが、翔太に勉強を教えると言う名目で彩も含めた三人で勉強会を毎日開いた。発案者は彩だ。

 あくまでぎこちない翔太との関係を和らげたい一心で開いてみたのだが、これが思いの外上手くいった。オレと二人だと未だにぎこちない翔太だが、彩が入って三人だと自然に振舞う。また二人でも自然に振舞って欲しいとは思うが、今は大きな一歩だと納得させる事にした。

 この時期に起きた事で、もう一つ大きな事があった。

 彩が三人で東高を目指そうと言い出したのだ。向こうの世界ではオレと翔太が無理で南高に行ってるので既にこの時点で向こうの世界とは違う歩みを始めている。更に驚いた事に翔太がこれに乗り本気で勉強を始めたのだ。テニスに勉強にとオーバーワークにならなければいいと心配しているが、極力効率が良くなるよう彩と二人で協力して翔太の勉強のフォローをしている。

 テストの結果は良好だった。彩は1位だったし翔太も47位と前回の95位から大躍進だ。

 誤算だったのはオレだ。元々大学まで出ているので本気で勉強すればその当時より成績が上がるのは当然の事だという事を失念していたのだ。

 結果は2位。これでも彩に負けているあたり、彼女は本当に天性のものを持っているのかもしれない。しかし問題はそこではない。前回30位のオレが急に2位になれば当然注目を集めてしまう。良くも悪くもそこかしこで噂をされている事は認識していたが、やってしまったものは仕方ないと諦めている。

 余談ではあるが、沙希は15位だった。イメージではお世辞にも頭が良いようには見えないが勉強はできるようだ。おぼろげながら元の世界での事を思い出すと、確かに当時もそこそこの成績を取っていたような気がする。


 見るともなく眺めていたテレビの向こうではお笑い芸人数人がカウントダウンを始めていた。


『3、2、1、… ハッピーニューイヤー!!』


 新しい年が来た。奇妙な言い方だが2回目の2006年だ。


「あけましておめでとう」


 母親がオレと楓に向かって、早速新年の挨拶をする。


「ん、おめでとー」


「あけましておめでとう、今年もよろしく」


 父親はまだうたた寝しているので無視だ。代わりに母親が起こす。


「お父さん!年明けたわよ!寝るなら部屋行ってよ」


「うご…ん~?そうか?それじゃ寝るわ、おやすみ」


 半分寝ぼけながら、もそもそと起き出して寝室に移動していった。そんな姿を「うたた寝するならさっさと寝ればいいのに」と少しあきれた気味に見送っていると携帯電話が鳴動する。鳴動時間が短かった事からメールだろう。


 送信者:彩


 タイトル:おけおめ!

 

 内容:ことよろ!

    今年は受験生!3人揃って東高合格できるよう頑張ろうね!


 そんな簡素なメールだった。

 元の世界では携帯メールは廃れていてSNSのメッセージでやり取りしていたが、この時期はまだメールだったなと思い出す。年が明けた直後はメールや電話が飛び交う事から携帯キャリア会社から極力使わないよう案内が出ていたのだった。


 彩に返事を打ってしばらくすると再び携帯が短く鳴動する。


 送信者:翔太


 タイトル:あけおめ


 内容:ことよろ


(みじかっ!たったそれだけ!?)


 思わず突っ込んでしまうほど短い定型メールだった。一言くらいコメント入れようよとも思いつつも返事は返しておく。

 人数は少ないが、同じようなやり取りを数人と交わして一息つくと時間は1時に差し掛かるところだった。いつもはあまり夜更かしをしない事もあって、さすがにかなり眠くなってきつつある。

 そんな時にまた携帯が鳴る。


 送信者:彩


 タイトル:初詣行かない?


 内容:明日午後あたりどうかな?

    都合悪ければ明後日でもいいけど。


 少し考えているところで再びメールが入ってくる


 送信者:翔太


 タイトル:Re:初詣行かない?


 内容:いいぞ。


(みじかっ!翔太メールだと愛想無さ過ぎ)


 少し笑ってしまう。オレの方からもOKの返事を入れてすぐにまた返事が返ってくる。


 送信者:彩


 タイトル:Re:初詣行かない?


 内容:それじゃ、13時にゆうきと翔太のマンションエントランス入口集合ね

    さすがにあたし限界だから寝るね、おやすみ~


 彩のメールは女の子らしくデコデコしている。ハートやら表情やらの絵文字が大量に踊っている。見た目も内容もシンプルすぎる翔太とは正反対で可笑しくなる。

 明日の事を考え少し気分が高揚してくるが、さすがに時間が遅くなってきて睡魔に抗いがたくなってきた事を自覚して、そそくさと母親に「おやすみ」と挨拶してから部屋のベッドに潜り込む。横になった後はあっという間に眠りの世界に旅立っていくのだった。






 その日は夢を見た。


 翔太がいて彩がいて、そして男のオレがいた。

 いつぞやの夢とは世界が逆のようだ。


 オレと向かい合った彩が頬を赤く染めて微笑んでいる。その様子を満足そうに少し離れた場所からみている翔太。

 場所はどこかの公園だろうか。木々は既に葉を枯らし来る冬を耐え忍び、その後訪れる春を待ちわびる、そんな季節のようだ。

 装いはすっかり冬模様で、厚手のコートを着込み、首にはマフラーが巻かれている。


 どういった状況かさっぱりわからないが、オレがいた頃には想像も出来ないような、それでいて微笑ましくて羨ましい、そんな光景だった。


 そういえばこちらの世界に来る直前にこんな夢を見たなと思い出す。という事は戻れる前兆なのだろうか。戻れるものなら戻りたい。その思いは今も変わらない。

 しかし、それと同時にこちらの世界にも少なからず未練を感じ始めている事も自覚していた。

 二者択一だったらどちらを取るのだろう。そんな少し前であれば思いもしない事をつらつらと考えてしまう、そんな夢。

 その夢も終わりが近い事を感じる。

 次に目を開けた時、それはどちらの世界にいるのだろう。そんな事を思いながら、少しづつ意識を現実世界へと戻していくのだった。

ここで前半は終了になります。

次回からはストーリーが一気に動きます。


PVが伸びてるのにユニークとBMは伸びない。

さすがに自分の力不足を痛感してます。


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