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異世界で歩むけものみち ~魔獣保護機構設立物語~  作者: Rom-t
禍根の道 ~序章~ 〈共和国入国編〉
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第七十三歩 【森の集落】

約一年ぶりの投稿!

大変ながらくお待たせいたしました!

これからもしっかり連載していきます!

 森の木々を抜けてパッと視界が開けた。

 龍神族の里とはまた雰囲気が違う木々に囲まれたログハウスが立ち並んでいる。


「よくおいでなさった、お客人よ」

 

 村の入り口で老人……いや、老エルフが俺たちを出迎えてくれた。

 先ほどの騎士たちとは違い、柔らかい物腰に少し安心する。


「初めまして、沢渡 類と申します。共和国議会より親書を預かって参りました」


「僕はルイさんと一緒に旅をしているコタロウと言います!」 


 俺とコタロウは挨拶を済ますと書状と共に渡されていた親書を手渡す。

「これはご丁寧に、私はエルフの長老:イーリアス・ナント。ふむ……確かに共和国議会の使者として来られたと。こんな所で立ち話するのは失礼ですな。こちらへどうぞ」


 家の中に通された俺たちは長老と騎士団の数人が掛ける円卓に座った。

 出されたお茶を一口飲むと、昔に恵さんが淹れてくれたドクダミ茶を思い出した。


「して、エルピー平原を人間の居住区にしたいという話でしたかな?」


「はい、共和国議会はリエス大森林を傷付けないように計画を立てています。お許し頂けないでしょうか?」


 書状を眺める長老に俺は頭を下げるが、エルフたちの顏は渋いままだ。


「はて……困ったことです。今、森はあなた方人間の侵入を拒む状況にあります。エルピー平原は森の入り口と面しておりますのでね。この村だけでなく他の集落も警戒する事でしょうし、介入してくる者もいるでしょう」


「今、と言うと……何かあったのですか?」


 コタロウがそこに話題を向けるとエルフたちは苦々しい顔をする。


「あなた方は奴隷市場を知っておりますかな?」


 俺はその言葉を聞いて戦慄した――


「まさか……」


「えぇ、今までは奴隷商人が森の民を攫う事はありませんでした。しかし、ほんの一か月前程から人間が森の民を攫って行くようになってきたのです。それも略奪まがいの事まで――」


 ここに来る前にレイラさんから奴隷市場の話は聞いていた。

 奴隷制度はかなり昔に廃止されたが、今でも裏社会での市場はなかなか縮小しないらしい。

 しかし、他種族の領域までその手が伸びているとは――


「故に今、森の周辺に人間が出入りすることは危険と存じます。我々は実力を持ってどうこうしようなどは考えませぬが、他のエルフの集落には頭に血が上った若者も多くいると聞いております。皆様の安全の為にもどうかお引き取り願えませんか?」


 長老は溜め息を吐きながらそう告げる。

 俺は事情をおおよそ理解できたことで少し思案した。


「他の集落はいくつくらいあるんですか?」


「私ども以外の集落ですと、他に三つほどですが……」


「不躾なお願いではありますが、他の集落へ案内をお願いできないでしょうか?」


 俺の申し出にエルフたちは驚いたように顔を見合わせる。


「先の話を聞いていなかったのか貴様! 我々は長の意思を尊重し人族を傷付けぬと誓っておるが、他の集落のやつらはそうはいかぬのだぞ! それこそ命の危険とて――」


 後ろに控えていた隊長エルフが憤慨しているが、俺は構わず続ける。


「承知しています。ですが、私としても皆の生活を預かっているので、簡単に諦めるわけにはいかないのです。それにここで見て見ぬふりをしたら自分の道に嘘をつくことになる!」


「道?」


「私の進んでいる道は魔獣や異種族、異界人がこの世界の人間と共生して行ける場所を作ること! だから、ここで起きてる問題を見過ごすことはできません!」


 俺は立ち上がり啖呵を切った。

 以前に奴隷市場の話を聞いたときははらわたが煮えくり返る様な思いだったし、それが目の前で俺の道を塞ぐというのなら立ち向かうしかない。


「馬鹿な! そんな夢物語を――」


 隊長エルフが言葉を発したがそれは長老の腕の一振りで制止させられる。

 静まり返った部屋の中で長老が少し微笑んだ気がした。


「私が他の集落への親書をお書きしましょう。実際に自分の眼で、耳でこの森がどのような想いを抱えているか見てごらんなさい。そこであなた様が何を感じ、どう動くか私どもに示して頂きましょう」


 長老はそう言うと小柄なエルフを傍に呼び、何かを耳打ちした。

 それが終わると同時に小柄なエルフは外へ飛び出していく。


「明日の朝には親書を書き終えることができるでしょう。それまではこの村でごゆるりと過ごされませ」


 長老が俺たちに会釈をすると老エルフたちを連れ、部屋を出て行った


「お前たちはこっちだ。変な行動をとらぬよう、私が監視に付く」


 俺たちは隊長エルフの案内で離れの一室に入った。


「ありがとうございます……えっと――」


「人間に名乗る名は持ち合わせていない。食事は時間になれば給仕させる故、大人しくしていろ」


 そっけない態度をとったまま隊長は部屋を出ていく。

 理由が理由なだけに俺たちへの信頼は全くしていない感じだな。


「長老様がルイさんの話を聞いてくれてよかったですね! 僕もなんて話そうか必死に考えてはいたんですが……」


「そうだな。でも、本当に大変なのは明日からだ。ここの集落のエルフたちは他よりも早く動いて警告をすることで人間とエルフが直接的に傷つけあう事を避けてくれていたみたいだ……その努力を無駄にしない様に頑張らなくちゃ」


「そうですね! 僕も頑張っちゃいますよ!」


 瞳をキラキラさせながら尻尾を振るコタロウ。

 正直言い出し難いんだが、ここは――


「な、なぁコタロウ。実はな……」




―― 翌日 早朝 ――


 霧に煙る森林に反射する朝日。

 凛と澄んだ空気が俺の身を引き締める。

 後は――


「うワァァァン! ルイさぁん! やっぱり僕も連れて行ってくださぁぁぁい! ルイさんを一人にして何かあったらぁ!」


 静かなはずの朝の森に響き渡る一匹の遠吠え。

 昨夜、俺はエルフの集落には一人で赴くことに決めた。

 その方が本当の意味で俺自身の事をエルフ経つに信じて貰えると思ったからだ。

 それに残してきたリンたちに事情を伝えて、先に情報収集を始めて貰おうとも考えたのでその伝令役としてもコタロウが最適だった。


 その事をコタロウ伝えたらこの有り様……

 昨日から散々話したのに結局、コタロウを納得させることができなかった。

 龍の里で魔法が得意になってからだとは思うが、コタロウの心配症に拍車がかかった様な気がする。

 まるで買い物に置いて行かれるときの犬状態になってしまっている訳だが……


「大丈夫だって! それよりお前は先にリンたちと合流してしっかりと森の状況を伝えてくれよ!」


 俺はコタロウの頭を撫でて落ち着かせると隊長と一緒に馬に跨る。


「振り落とされるのが嫌ならしっかりと掴まっておけ!」


 隊長は俺を一瞥すると手綱を振り、森の奥へと馬を走らせたのだった。

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