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異世界で歩むけものみち ~魔獣保護機構設立物語~  作者: Rom-t
けものみち 6本目 見極めの道
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第五十九歩 【共和国の魔法使い 後編】

この魔法使いは……

 俺たち……と言ってもフェルたちなんだが。

 残りのワームを片付け、呆然としているローブを着た若い男性の方を見る。


「あの、大丈夫でしたか?」


 俺が声をかけると男性は俺の後方を凝視したまま固まってしまう。


「どうやら俺たちの事を見て驚いているようだな」


 メガロとフェルは身体を縮め、男の前に進み出る。


「面倒だ! コタロウ、こやつにも〝共有〟をかけて話せるようにしてくれ!」


「は、はい分かりました!」


 フェルに促された、コタロウはしばらく唸ると男に向けて目を見開いた。


「おい、聞こえてるか?」


 フェルが話しかけると男は目を丸くして後ろに飛び退く。


「う、うわぁ! 魔物が喋った!」


「魔物ではない! 魔獣だ!」


 怒って噛み付きそうになっているフェルをバーンが押さえる。


「ルイたち以外の人間にとってはどっちも一緒だってぇの! いい加減、慣れたまえって!」


 その一連の流れを見ていた男は、少し呆然とした後に服装を直しながら立ち上がった。


「と、とりあえず……助けてくれてありがとうございました」


「いえいえ、こちらが取り逃がしてしまったモンスターだったので……お怪我はありませんか?」


 男は頷くと再度、魔獣勢を凝視する。


「あなたはテイマーなんですか? だとしても喋る魔物――いや魔獣なんて聞いたことありませんが……しかも、こんなに一杯!」


 男が首を傾げながら聞いてくる。

 魔物と言いかけた時にフェルの耳がピクリと動いたが、言い直したことで事なきを得たようだ。


「そういうわけではないんですが……俺のスキルで話せているんですよ! 俺もテイマーなんかじゃなく、彼らは俺の仲間なんです!」


 男はとても信じられないという様な顔をしていたが、俺たちの様子を見てひとまず納得してくれた様だ。


「ところで、お兄さんはこんなとこで何をしていたんすか?」


 シュウスケの質問に男は笑顔で答える。


「これから共和国の中枢都市であるエキンドゥに向かっている所なんです!」


「共和国!? 実は僕たちも行くところなんですよ!」


 コタロウが尻尾を振りながら男に告げる。

 すると男は少し不安な表情を浮かべた。


「あなたたちは共和国には何をしに行くのですか?」


 まぁ、魔獣を従えて国に入ろうなんて不審がられても仕方ないか……ここは正直に答えておいた方が良さそうだな。


「実は俺とシュウスケ(こいつ)は異界人なんですよ。それで、共和国では異界人がちゃんと扱われているって聞いて、見に行こうと思ったんです!」


 俺は男に今までの経緯を話してみた。

 もちろん王国と龍の里に件を伏せてだが……


「なるほど、ご苦労されたようですね。あなたが異界人であることは理解できました。ここで会えたのも何かの縁ですし、私が共和国までご案内させていただいてもよろしいでしょうか?」


 俺たちの話を聞くと納得したように頷き、こんな提案をしてきた。


「案内って……あなたは共和国に詳しいの?」


 リンが怪訝な顔をして男の素性を訪ねた。


「えぇ、私は共和国で少し名の知れた魔術師をしております、フィリタス・レイナルドと申します。転送魔法が得意なので、数回の施行ですぐに共和国に到着できるかと思いますよ!」


 俺たちが話している側からフェルが俺の裾をぐいぐいと引っ張る。


「なんだよフェル?」


「おい、まさかあいつの誘いに乗ろうと思っているわけではあるまいな! 明らかに胡散臭いぞ!」


「うん、確かに疑わしくはある。ここは上手く断った方が良さそうだな!」


 俺とフェルは示し合わせ、にこやかに振り返るが――


「何やってるんです? 早く行きましょう!」


 そこには魔法陣の上に立っている一行の姿。

 それを見た瞬間、俺とフェルは口を開けて固まってしまった。


「おい、ちょっと……」


「貴様らぁ! ルイの様に他人をホイホイ信じおってぇ! 今回に至ってはお人好しバカのルイですら怪しんでおるというのに!」


 あれ? 俺さりげなくディスられてない?

 でも確かに、俺ですら怪しいと思っているのに……どうしてコタロウたちは怪しまないんだ?


「大丈夫だと思いますよ」


 コタロウが俺たちに声をかける。


「だって、この人からは異界人の匂いがするんですもん!」


 俺たちはその言葉を聞いてキョトンとしてしまった。

 そんな俺たちにフェリタスが苦笑いしながら肯定してくれた。


「確かに私の言い方は怪しかったですね。すみませんでした。私も異界人って訳ではないんですが、異界人と深い関りがあるため、お手伝いをと思った次第です!」


 俺とフェルはまた顔を見合わせたが、結局その場の雰囲気には逆らえず、その魔法使いに付いて行くことになってしまった。

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