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異世界で歩むけものみち ~魔獣保護機構設立物語~  作者: Rom-t
けものみち 5本目 決意の道
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第四十五歩 【ルイの努力】

ルイ、読み漁る‼

 自分で言うのもなんだが俺は昔(今じゃ転生前からかな?)から子供と動物には好かれるタイプであった……はずなんだがなぁ。

 ドレイシア一族と囲んだテーブルには次々と料理が運ばれてくる。

 何でも昨日できなかった歓迎会を昼食と一緒にやろうという事なのだそうだ。


「さぁ、遠慮せず食べてくださいね! 鍛錬で疲れたでしょう?」


 優しい声と笑顔で俺たちに料理を振舞ってくれたのはリンの母であるファニル・ドレイシアさん。

 リンやレヴィのお母さんだけあって超ド級の美人でスタイルも抜群。

 更に一口食べれば頬が落ちそうになるほど絶品の料理を作る腕。

 非の打ち所がない……

 だが、そんな料理でもなかなか箸が進まない理由があった。

 テーブルの向こう側からこれでもかという程の殺気と視線が俺に突き刺さっているからだ。


「おい、異界人! 飯を食ったら俺と勝負しやがれ‼ ギタギタにしてやる!」


 修練場の一件で醜態を晒した事で何故か俺への敵意がオーバーフローしてしまっている様だ。


「いい加減にしなさい‼ 失礼にもほどがあるぞ‼」


 父に一喝され、そっぽを向いてご飯を掻き込むニーズ。

 子供に恐ろしいくらい敵視されている俺を仲間たちが怪訝な目で見ているのが分かる。


「おしゃべりボーイ、こんな子供に何したんだよぉ。

 大人げないにもほどがあるんじゃないかい?」


「ルイの事だ。

 大きなお世話な事をやらかして怒らせたんだろう」


「こうなった子供は話を聞かないっすからねぇ。

 トコトン付き合ってあげてくださいね」


 チクショウ、何も知らないからって好き放題に言いよってからにぃ。

 子供みたいなナリだけど一応、龍人族最強の戦士らしいんだぞ!

 まぁ、バルファさんの鉄拳で沈められているから、最強はバルファさんなんだろうけど……

 俺はニーズの視線が自分から外れている隙に料理を堪能しようと矢継ぎ早に口に放り込んでいく。

 その後の食事会は無言のニーズを覗いて、非常に和やかなまま終わったのだった。

 

 

 昼食後、俺とコタロウはリンに頼んで資料館にやって来ていた。

 というのも、そこは俺のスキルが最大限に活かせる場所だったからだ。


「ここにある書物は全部読んでいいのか?」


「えぇ、重要な機密資料は龍の里の方にあるからここの書物はどれを見ても自由よ。

 魔導書とかもあるから勉強になると思うけど、龍人族の文字で書いてある物がほとんどなのよ。

 読めるの?」


 俺はこれこそ見せ場だとばかりに胸を張った。

「俺の能力忘れてないか?

〝言語理解〟は文字にも適用されるんだ。

 どんな難解な本も読破して見せるって‼」


 そう息巻いたのが二時間前の事だったかな?

 キャパシティオーバーで煙が出ている頭を抱えながら項垂れている俺の横では黒い毛玉があらゆるジャンルの本を読み漁っている。


「いやぁ、本なんて初めて読みましたけど本当に面白いものですねぇ!」


「そ、そうですか……コタロウさんはスゴイですね」


 俺は二時間前から読み始め、まだ10ページも進んでいない魔導書にもたれかかる。

 一方、コタロウはなんと魔導書三冊目!

 好奇心の差がいかんともし難いという事か……純粋に俺がアホなのか……

 そもそも、魔導書には大前提として適正が云々と書かれてしまっている訳で……


「う~ん、攻撃魔法の適正が無い以上、魔導書は効率的じゃないのかなぁ? ん?これは?」


 俺が魔導書の中から見つけたのは「魔道具作成術」と書かれた本だった。

 何ともストレートなタイトルだと感じるかもしれないが、異国語を俺に分かりやすいように変換するとこういう表現になってしまうのは仕方が無いと思っている。

 その本には他の魔導書と違い、魔道具を媒介にした魔法行使について書かれていた。

 魔道具を使えば、適正に捉われずに魔法が行使できるとの事。


「魔道具か……そういった道具系はあの人に聞くのが一番なんだが、何とかして連絡が取れないだろうか?」


 俺は左腕に着けている腕輪に触れる。


『呼んだかねぇ?』


 急に大声が響き、俺は椅子ごと後ろに倒れ込む。


「な、なんだぁ? しかも、この声って‼」


 その声の主こそ俺が今、頭の中で思い描いた人物。


〝魔技工師〟ランズ・ベア・イシュメール‼


「一体どういうことですか? 何で腕輪から声が?」


『いやのぉ、お前達の事が気になったんで念話ができる機能を組み込んでおいたんじゃよぉ!

 お主がワシと連絡を取りたいと思ってくれるのを待っとったんじゃが……いやぁ、長かったのぉ‼』


 この爺さんは何を言っているのかとも思ったが、こちらとしても願ったり叶ったりであることに変わりはない。


「ランズさん、ちょうど相談があったんですよ‼」


 俺はランズさんに読んだ魔導書の事と今の俺の現状について話した。


「なるほどのぉ。

 このままじゃ何をするのにも足手まといだから自分が戦える術を確立したいわけじゃな」


 ハッキリ言いやがるなコノヤロウ‼

 でも、全く間違っていないからここは我慢。


「そ、そうなんです。

 城の一件でも俺ってなにもできなかったし、これ以上仲間を頼る訳には……」


「うむぅ、いいじゃろう。

 協力してやらんでもないぞ! その代わり条件はあるがな!」


「条件?」


「そうじゃとも。

 お主、これからも色々な場所に赴くつもりじゃろ?」


「……多分、そうなりますね」


「その先にある色んな物資をワシに送ってはくれぬかの?


 城に閉じこもっていると良い素材集めにも苦労するのじゃ。それを担ってくれるならワシの制作した魔道具を代金として渡そうじゃないか! 悪い話ではなかろ?」

 そうだな。

 この提案は全く悪い話ではないし、ランズさんほどの腕ならば俺でもなんとか戦えるレベルの魔道具を作ってくれるはずだ。


「もちろんお願いします! 何か素材になりそうなものがあれば送りますね!

 でも、どうすればいいんです?」


 ランズさんの話では念話を繋いだまま意思を込めれば術式が発動し、転送が可能なのだそうだ。


「では、試作品に取り掛かるとしようかの! 連絡待っとるぞ!」


 話がまとまり、念話が終了する。

 俺はようやく見え始めた光明に心を躍らせつつ、また魔導書のページをめくっていった。

ランズ再登場‼

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