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けものの寄り道 ~燻ぶる火種~

閑話 王都編

 音を立てて崩れ落ちる塔の上から一人の老婆が優雅に舞い降りる。

 しかし、余裕のある行動とは裏腹にその表情は苦々しい。


「リフ殿、奴らは?」


 下で待機していたミレイがリフに問う。

 リフと三勢力は塔が崩壊する段階で別の作戦に切り替えていた。

 ルイ達をリフの魔法で撃墜し、三勢力で一気に押さえ込む作戦。

 しかし、その作戦は本来実行されないはずの作戦であったのだ。

 何故なら――


「しかしのぉ・・・・・・ネルの予見が外れる事などいつぶりの事かのう?」


 リフは白髪を掻きながらゼノスの後ろに控える騎士を見る。

 ネルと呼ばれた騎士は甲冑の上から麻のマントを羽織っており、フードで顔のほとんどを隠している。

 ネルはリフの言葉を聞くとかろうじて見える口元を開いた。


「外れてはいないよ、彼らはちゃんとこの塔に来たじゃないか。僕ができるのは予見だ。それ以上の事を望まれても困る」


 甲高い声でそう言い切ったネルはリフに背中を向けるとゼノスの傍を離れようとする。


「ネル、どこへ行く?」

「僕の予見にはたくさんの睡眠が必要なのは知ってるでしょう? 奴らの追跡の為にも僕は先に休ませて頂くよ」


 ネルが再び歩き出そうとした時、王宮の方からハイトとファイザが走ってきた。

 二人はルイを捕縛した経緯の報告も兼ねてバルミエ王の護衛に就いていたのだ。


「お前たち、王の護衛はどうした?」


「王命により、応援に来た次第でございますわ。と言っても、間に合わなかったようですが・・・・・・」


 ファイザが状況を看破しながら、ギリアムの質問に答える

 その横ではハイトが驚愕と憤怒が入り混じった表情を浮かべていた。


「そ、そんな・・・・・・王国の最大勢力が・・・・・・逃亡を許すなんて・・・・・・」


 そんな事はお構いなしといった態度でハイトの横を通り抜けようとするネルにハイトが掴みかかった。


「ネル‼ お前の予見が間違ってたんじゃないのか‼ そうでなければこの作戦が失敗するはずがない‼ 俺だってこの作戦が失敗するはずが無いと考えて王の護衛番を受け入れたというのに‼」


 ハイトがマントの首元を掴み、揺さぶるとフードの中から一纏めに結った青くしなやかな紙と幼げながらも不思議な美しさを秘めた顔立ちがこぼれ出た。


「離しなよ。君が彼らに私怨を持つのは勝手だけど、八つ当たりする相手は選んだ方が良いよ」


 ネルはそう言うと騎士とは思えないほど白く、華奢な腕で屈強なハイトの腕をいとも簡単に払いのける。


「まだ警戒態勢は解かれていない。勝手な行動は慎め」


 ゼノスが諫めると二人は無言のままゼノスの後ろへ付く。


「終わったかね? では、頭が痛いところだが王に事の顛末を報告に行くとするかねぇ」


 リフは騒ぎが落ち着いたのを見計らうとゼノス、ミレイ、ギリアムを引き連れその場を離れていった。

 残った幹部や騎士たちには待機が言い渡されたが、ネルはゼノスの姿が見えなくなるとさっさと姿を消してしまう。

そんなネルを騎士団同格の幹部として疎ましく思いつつ、ハイトはルイ達が飛び去った空を見上げる。


(次に会った時は確実に俺がお前を捕らえてやるぞ。 そしてゼノス様にも王にも認められ、俺はこの王国で最強の騎士になってやる‼ そうなれば、誰も俺の事を蔑む者などいなくなる‼)


 ハイトが胸の内で燻ぶらせている火種はハイトが持っていたスキル〝鑑定眼〟を変容させる。

 その事実は周囲も、ハイト本人すら気付くことなく時は流れていくのだった。

ハイトはどこまで墜ちていくのでしょうねぇ?

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