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異世界で歩むけものみち ~魔獣保護機構設立物語~  作者: Rom-t
けものみち4本目 目覚めの道
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第三十五歩 【因縁と捕縛】

 ゼノス率いる王権騎士団幹部たちとの戦闘が始まった。

 戦況は明らかにこちらに不利・・・というか、すでに勝敗は決しているようなものであった。

 俺たちの方で戦力と言えばフェル、メガロ、バーン。

 しかし、フェルたちが一斉に攻撃を仕掛けてもゼノスに一撃も与えられずにいる。

 一方、ゼノスはと言えば剣を悠然と構え、フェルたちが仕掛ける怒涛の攻撃にも表情一つ変えずに対応して見せている。


「クソっ! 化け物みてぇな奴だな。俺たちが可愛く見えてくるぜ!」


 メガロが冷汗を垂らすのも無理はない。

 この一連の攻防を見る限り、実力の差は明白。

 ゼノスは何かを考えているらしいが、恐らくはゼノスが攻撃に転じれば一瞬で片が付くだろう。


「実力の差は理解できたか? 王により、お前たちは生きて捕らえよと命じられている。無様を晒したくなければ大人しく我らとともに来い」


 ゼノスが構えを解き、口を開いた。

 構えを解いてもフェルたちが攻撃を再開しないのはゼノスが言っている実力差が歴然であることを物語っている。


「つ、付いて行ったら・・・また、操り人形にするつもりなんすよね?」


 シュウスケの弱気な問いに、ゼノスの後ろで控えていたハイトが噛みつく。


「当たり前だろ‼ お前ら異界人は王の下でこの王国のために貢献することこそ唯一生き残る道なんだよ! それを拒否するようならただ殺されるだけだ‼」


 それ以上の言葉に言葉を発しようとするハイトをゼノスは手で遮る。

 急いで口を閉ざすハイトを一瞥したゼノスは再び俺たちに視線を向けた。


「どちらにせよお前たちは逃げられん。何が目的でここに侵入して来たかは知らないが、無駄なことだ」


 気迫に押され、さっきから身体が固まったかのように動かない俺、シュウスケ、コタロウに加え、フェルたちまで打開策を見つけられずにいる。

 何とか隙を作らなければ逃げることなどできないとその場にいる誰もが理解していた。


「あらぁ、やっと見つけましたわぁ!」


 緊張が張り詰める場に響く声。

 その声と共に周囲を取り囲む兵たちの中から姿を現したのは〝グラブ〟捜索統括の女騎士、ファイザだった。


「まさか王権騎士団長様直々のお出ましとは恐れ入りますわぁ! でもぉ、この案件は私たち〝グラブ〟のものでしてよ。ここは任せてお引き取り願えないかしらぁ?」


ファイザは剣を抜くとゼノスの前まで進み出る。


「ファイザ、貴様‼ ゼノス団長に対して無礼だぞ‼ しかも、奴らを譲れだと⁉ 身勝手も大概にしろよ‼」


「貴方こそぉ、副騎士団長などと分不相応な役職に就いて日が浅いと言うのに私を呼び捨てにした挙句、意見を述べるなんて・・・ゼノス様の教育がよろしく無いんじゃなくて?」


 ファイザの乱入により、現場は一触即発のムードとなった。

 しかし、それが俺たちにとっては千載一遇の好機となったのだ。


「今しかねぇ‼」「バラバラでも良い! とにかく逃げたまえよ‼」


 メガロとバーンは思い切り、身を翻すと水流と煙幕で辺りを覆う。

 その瞬間に俺たちは思い思いの方向に走り出す。

 しかし――


「うぎゃあ‼」


 甲高い声が俺に耳に届き、俺は足を止める。


「ウフフ! 一匹は捕まえましたわ‼」


 ファイザの笑い声が聞こえ、俺は思わずその方向に駆け出していた。


「や、やめろ‼ 放せぇ‼」


 煙幕の中に見えたのはファイザに捕まれもがくコタロウの姿。

 それを視界にとらえた瞬間、俺の身体は思考を置き去りに動く。


ドカッ‼


 俺とファイザの身体が鈍い音を立てて地面に転がった。


「グッ! このガキ‼ いつも間に‼」


「コタロウ‼ 逃げろ、早く‼」


 俺はファイザを必死に抑えながらコタロウに叫ぶが、コタロウは固まって動かない。

 そうこうしている間にも筋力と体力で勝るファイザは俺の身体を跳ね除けようとする。

 ファイザが俺を引き剥がしたその時、巨大化したフェルの顔が煙幕の中から現れ、コタロウを持ち去った。


「フェル・・・よし俺も、逃げなきゃ!」


 煙幕はまだ辺りに充満しており、水流で足をすくわれた騎士たちも大半は動けずにいる。このまま煙幕に紛れて身を隠せば何とかやり過ごせるはずだ。

 俺がファイザの視界から外れ、動き出そうとしたその時だった。


「貴様とは前もこうだったな!」


 俺は頭部へ重い衝撃を受け、地面に倒れこむ。

 朦朧とする意識の中で上を見上げると、そこにはハイトの姿があった。


「また魔獣を助けて自分の身を危険にさらすとは、学習しない馬鹿だなお前は。俺は二度と失敗はしない。今回は絶対に逃がさないからな‼」


 ハイトの憎しみに満ちた声を聴きながら俺は意識を失った。


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