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噛みあわない心

かなり短いですorz

 「怖いですか? 僕が―― 」


 その問いに、 はい―― と言えるほどの根性は無かったのだけれど…… 私が、 すっと視線を逸らせると継直さまが大きな溜息を吐きました。

 拘束が緩んだので、 これ幸いにと立ちあがろうとしたのだけれど、 強い力で引きもどされる。

 今度は継直さまの膝の上で、 後ろから抱きしめられるような形になってしまった。


 「逃がさないと言ったでしょう? 所で、 その怖い―― はどっちの怖いなんですかね」

 「―― どっち――? 」

 「男として怖いのか、 人として怖いのか―― 前者なら、 まぁ男に免疫が無い事だから良いとして、 後者なのなら―― 夫としては落ち込みたい所です」


 ――で、 どちらですか? と耳元で囁かれて私は固まる事しか出来なかった。 どっちも何も無い。 いや、 人間として怖い人だとは思って無いけれど、 何か怖いのだ。


 「え? まさか人として怖いとか―― 言う気ですか? 僕は大分頑張って紳士になるように務めてるんですが…… 」


 物凄く落ち込んだような口調で言われてしまったので、 慌てて首を振る。 

 そこから質問が始まった。 

 ―― 何故、 僕が怖いのか ……―― 分からないです。 怖いです―― 

 ―― 今、 一番怖いのは何か ……―― 逃げられなさそうな雰囲気が怖いです―― 

 ―― 何故、 逃げたいのか ……―― 分からないです――

 自分自身答えていても、 答えになっていない自覚はあった。 けれども、 どうにも「そう」 としか言えないのだ。 流石に申し訳無い気持ちになって落ち込んだ。


 「堂々巡りだね―― まぁ、 予想は着くけれど―― 君が恐れてるのは、 多分、 僕の欲だ」

 「欲―― ですか? 」

 「はっきり言うなら、 僕は君の事を気に入っている。 けれど、 恋愛感情と言うものでは多分無い―― 残念ながらね? 僕は…… 代替わりをして、 継護を持ち―― 妖と戦う者になりました。 それ自体に不満は無いんですけどね…… 」


 継直さまはそう言うと少し言い難そうに口を噤んだ。


 「継護をついで…… 通常ではありえない程長い間―― 僕は、 ゆらら―― 君を得られなかった。 四龍院家の継ぎの男児はね? 本能が強いんです。 生存本能―― それから、 子孫を残そうとする本能」


 後ろで苦笑する気配がする。 それから、 本当に申し訳なさそうに継直さまは私に言葉を続けた。


 「蒼龍院家ウチで言えば、 継護をつげる男児を―― 本能的に激しく求めます。 結果はまぁ、 予想できますよね?? 今、 僕がそれを押さえて居られるのは、 反面教師と言うか―― 正直に言うのなら、 自分の父親のようになりたく無いと言う反骨精神が強く出ているからに過ぎません。 それと、 無理を通せば、 貴女が心を閉ざす恐れがあるから―― ですかね。 それでも、 僕の中にそれは居る」


 囁くように耳元で告げられる言葉―― 継直さまの熱い吐息が耳にかかる。 チロリと炎のような幻を見た。 蒼く―― 小さな炎。 ゾワリと背中が粟立つ。 私の中で逃げたいと言う気持ちが強くなった。


 「ほらね? 」


 継直さまはそう言うと、 私を拘束していた腕を解く……。 その瞬間、 思わず私は立ちあがってしまっていた。 


 「少しだけ、 欲を滲ませただけなんですが…… そんなに怖がらなくても、 無体な事はしませんよ。 貴女が心を許してくれるまでは我慢します。 だから、 もう少し僕の腕の中でも安心して貰えるといいんですが…… 」

 『今のやり取りで、 安心できる要素が無いのだけれど…… 傍からみれば、 怖がらせてるだけじゃあないの…… 』


 溜息交じりの朱依さまの言葉に、 継直さまが目を瞬かせた。 その上更に『そもそも、 今まで苛めすぎなのよ』 と呆れた声で詰られて継直さまが苦笑する。


 「これでも、 優しく説明したつもりなんですがね…… 正面切って目を合わせて話すと、 我慢している分…… 威圧してしまいそうだったもので」

 『まぁ、 我としては継直の気持ちも理解は出来るが。 どちらにしても朱依が言ったように、 からかってばかりいたのだから自業自得だ』

 「からかって遊ぶと可愛らしいので」


 楽しそうに言う継直さまを見れば、 今後も過剰な遊びと言う名の…… 私にとっては嫌がらせなのだけれど―― は続きそうだ。 ぜひ、 これを機会に止めて頂きたいものだけれど。

 継直さまはス―― と立ち上がると私の傍に来て、 私の手を取った。


 「貴女は無理を通せば動揺するでしょう。 そうすれば、 石を扱えなくなる。 そんな精神状態では子もできるかどうか怪しい…… からかうのは―― まぁ、 楽しいからと言うのもあるけれど、 そういった触れ合いを持つ事で僕に慣れて欲しいからです」


 その言葉に少しだけ悲しくなる。 先程の言葉もそうだ…… 「貴女が心を許してくれるまでは…… 」 と継直さまは言った。 でも継直さまは? 私に心を許してくれる気は少しでもあるのだろうかと……。 

 それに、 石を扱えなくなる事を心配する事―― 理解はできる…… 重要な事だもの。 それなのに、 私には「晶の巫女」 という道具を案じているかのように思えてしまった。 

 気に入ってはいるけれど、 恋愛感情は無い。 当然だ。 会ったばかりなのだもの。 けど、 これから先、 夫婦としてやっていく中で私は継直さまに恋がしたかった。 継直さまを愛せるようになりたかった。 

 我儘な話だって分かっている。 今の時代、 恋愛結婚の方が少ないのだし、 愛や恋等では無い絆の結び方もあるのだと理解はしている…… けれど、 見合いで出会った両親の間にはちゃんと愛情があった。

 母は、 「お見合いした後に恋をしたのよ」 と話してくれて、 私は漠然んと自分もいつか―― 結婚する時にそれがお見合いであったとしても相手に恋をするのだと信じて疑わなかった。

 それを、 売られた事で諦めて。

 偶然か、 必然か―― 継直さまに嫁いで、 諦めていたその気持ちが膨らんだ。 もしかしたら、 恋ができるのではないかと―― 愛情のある夫婦めおととなれるのではないかと。


 ―― けれど…… 


 私が、 継直さまに恋をする事になったら、 それは片恋のままで終わるのではないだろうか。

 そんな風に感じてしまう位には、 私は傷ついていた。 そうして、 傷つく位には継直さまに好意的なのだろうと思う。 何故なら、 どうでも良い相手の言葉に傷ついたりしないと思うから……。

 


 ※※※


 そう話した一瞬―― ゆららの目が曇った。 本当にたった一瞬の事ではあったのだけれど……。

ゆららを安心させたくて言った言葉の筈なのに、 どうして彼女がそんな目をしたのかが理解できない。

 男女の恋愛―― という感情はまだ無い。 けれどもゆららの事は「晶の巫女」 である以前に大切にしたい…… そう伝えたつもりなんですが……。


 ―― 話してくれれば簡単なんですけどね?


 一瞬問い質そうかとも思ったけれど、 あまり追い詰めるのも良く無いだろうと思い留まった。

 婦女子は恋愛ごとに憧れるとも聞きますし―― 気に入ってるけれど、 恋愛感情は無いと言い切ったのが良く無かったですかね……。 けれど、 それは事実だ。 

 ゆららに対する執着は、 継護の担い手として現れている反射的な衝動に過ぎない。 それを、 「愛している」 等と伝えて、 ゆららを騙す様な真似はしたくなかったからだ。

 彼女の居場所を奪ったと言う自覚はあるのだし、 せめて夫婦として誠実であろうと思ったからなんですが。 もう少し、 直接的じゃ無い言い方にしたほうが良かったのかもしれない。 失敗しましたかね。


 「兎に角、 僕は貴女にとってすこぶる安心安全な生き物である事を誓いますから、 もう少し怖がらないでもらいたいものですね」

 「からかうのは止めない癖にですか? 」

 「それ以上はしませんよ」


 ゆららの顔が少しだけ泣きそうに見えて、 僕は慌ててそう告げた。 まったく僕はどうにも彼女の涙に弱いらしい。

 涙一つで翻弄しようなんて、 『僕のゆらら』 はとても性質タチが悪い。

 泣いて欲しくなくて、 ゆららを引きよせる。 そしてそのまま柔らかい唇を吸った。 驚いて真っ赤になるゆららが可愛い。 『僕のゆらら』 可愛いゆらら。

 いつかの先の話――  僕がゆららに愛情が持てていると良い―― もしも恋愛感情を持てなかったとしても、 ゆららが相手なら家族の絆と情は持てるような気がした。

 そして、 ゆららも僕にそんな思いを持ってくれればとても嬉しいように思えた。

 

 ―― この時―― ゆららが目を曇らせた理由と、 泣きそうな顔をした理由を話し合わなかった事を後々、 物凄く後悔するのだけれど、 この時の僕は気が付かなかった。


 後悔した時、 思わず父上に混乱した気持ちを零した。 本能は本能でしかなく、 次代を残そうとする衝動で―― 愛とか恋とか言う気持ちは関係が無いと。 

 そうしたら、 父上に鼻で笑われる事になる。

 更に憐れむような目で見られて溜息を吐かれた。 『馬鹿だなお前。 本能的に求める位に愛してるって事だろう? 』 と。 呆れた顔をした父上にそう言い切られた時、 本気で死にたい気持ちになった事は誰にも言えない。 

 さっさと追いかけろと言われて、 産まれて初めて父上に感謝した。 口が裂けても「ありがとうございます」 なんて事は言わないけれど。


短い上に遅くて申し訳ありません;

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