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「……」


「どうしたの? まだ自由に動けない?」


 僕は期待を込めて尋ねる。


 だけど残念ながら、大和君は僕を睨みつけたまま口を開いた。


「いいや……動けるよ。なんか面倒かけたみたいでごめんな?」


 謝罪の言葉に僕は思わず照れ臭くなって手を振った。


「いいよいいよ! 僕にはこんなことくらいしかできないし!」


 このまま戦いは終わってほしいと思っていた僕だったが、やはり大和君は剣を下すことはない。


 僕は嫌な予感がしたが、大和君の言葉を待った。


「それで、すまないんだが。このまま戦ってくれないか?」


「へ? いやそれは色々まずいんじゃ……」


「俺はお前と戦ってみたいんだ……俺の全力、受け止めてくれないか?」


「……」


 僕は言葉に詰まる。


 友人が、真剣に頼み込んでいるのが痛いほどわかったからだ。


 やりたくはないけど断れない。


 こんなことは初めてだ。


 だから混乱した僕は尋ねていた。


「……ホントにやるの?」


「ああ。頼む。手加減しないでくれ」


「でも……さっきくらいの力が切り札だと。僕には勝てないよ?」


 そして混乱していたからこそ嫌味に聞こえるかもしれないセリフを思わず口に出してしまった。


 だがこれは切実な願いでもあった。


 僕にとってはさっきの蛇ですらシャボン玉とあんまり変わらない。


 なでれば壊れるのだ。あれを取り込んだところであまり変わらないどころか次に壊れるのが大和君になる確率がぐっと上がっただけである。


 だが僕の言葉を聞いたはずの大和君は妙に楽しそうに笑っていて、何でそんな表情をするのか僕にはまるで分らない。


「だからこそ挑ませてくれ……。だからこそ意味があるんだ」


 大和君は問答無用と、とびかかってきた。


 踏み込みは速く、剣筋は鋭い。


 僕は反射的に身構える。


 大雑把な攻めでなくなった以上、ここからが手加減の本番だった。


 前に大和君が戦うところは見ている。


 あの蛇の力が上乗せしたところで増すのは霊的な力くらいだろう。


 今度は手加減をしくじらないようにしないと本当に危ない。


 僕はこの一瞬そんなことを考え、実行に移す。


 だが大和君の打ち込みは綺麗に僕の予想を裏切った。


「―――えっ?」


 吸い込まれるように剣の刃が僕の腕をすり抜けて、吹き飛ばされる。


 何が起こったのかよくわからずに僕は体を触ると、僕の制服は刀に斬られて裂けていた。


「?????」


 頭には疑問符が躍る。


 僕は地面に転がったまま、刀を構えた大和君をぽかんと眺めていた。


「まずは一太刀だ。やるぞ公平!」


「う、うん!」


 思わず大声で頷いて、言われるがままに立ち上がった。


 今僕は腕でその剣を受けようとしたはずだった。


 だが相手の動きが予想以上に速く、刃に腕が間に合わず体に直撃した。


 普通の人間の動きくらいだったら、それでもおつりがくるくらいのタイミングだったはず。


 だがそうすると、あの瞬間の大和君の動きは人間の限界を超えていたことになる。


 そして彼の動きに近い動きを僕は見たことがあった。


 早乙女さんみたいな動きだ……。


 僕はブルブルと頭を振った。


 ミスしたものはしょうがない。幸い大和君が致命傷を負うことがないようなミスで喜ぶべきだ。


 次は動きがどんなに速くてもそれに合わせればいい。


 おあつらえ向きに、大和君は僕に飛び掛かる。


 やはり確かに速いが、今度こそ見事な手加減をしてみせる。


 拳をやめて剣を手のひらでつかもう。


 そのまま押さえつけたり出来ればと手を伸ばすが、今度も僕の手は空を切った。


「!」


 大和君の体は一瞬だが確実に浮いていたのだ。


 さらに一太刀。


「……!」


 だけどもう食らわない。ぎりぎりで避け、もう一度掴もうとした手は地面が盛り上がり、阻まれた。


「また! なんだこれ!」


 大和君にこんな能力があったなんて僕は知らない。


 だけどこの能力自体は確かに知っている。


 戸惑っていた僕の足が止まったのは何かに足を掴まれたからだった。


「……う?」


 そこには人ならざる者の手ががっちりと僕の足を掴んでいて、気を取られた瞬間、胴体を横なぎに剣の一撃が捕らえる。


「……!」


 確かな衝撃。


「これで二本目!」


 声を弾ませる大和君に僕は心底驚いていて、そして形容しづらい感情が心の奥でざわめいた気がした。


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