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大和君達を追ってやってきたのは第一演習場である。
ずるずると引きずられてゆく大和君は、もう入り口にたどり着く頃にはぐったりしたまま演習場の中に消えた。
僕ら、大和 学を探し隊(僕命名)はしばらく探し回っていると、オリンピックでも開けそうな広い演習場の真ん中に真っ白な剣道着のような衣装で現れた二人を発見した。
僕らはやたら広い観客席に身を潜めて、その様子をばれないように見張っている。
「……一体こんなところで何をするつもり?」
早乙女さんは非常に厳しい目つきで礼先生を観察していた。
身を隠してさえいなければ、まぁ間抜けには見えなかったかもしれないが、姿勢を低くし、見えづらい位置から二人を覗き見ようとしてみれば、一見りっぱな不審者のそれだった。
「あの人、怪しい怪しいとは思っていたけど……」
「いや、話の流れからして、怪しくはないと思うんだけど」
大和君の名誉のために、主張を頑張ってみたのだが早乙女さんとリオンさんからものすごい形相で睨まれた。
「違うわ! 寮にいればわかるのよ! あのお姉さんは距離感がなんかおかしい!」
「そうよね! 私もそう思ったの! あの通じ合ってる感は違うわよね!」
「でしょ!」
そして頷きあう早乙女さんとリオンさんは、めちゃくちゃ仲が悪いと思っていたが、実際は結構気が合うのかもしれない。
しかし異を唱えるのはマリーベルさんだ。
「……それは早合点が過ぎると思う。彼の家の事情を考えると、むしろ仲は悪いはず」
「そうなの?」
特訓の成果が出てきたのか意思表明がはっきりしているマリーベルさんは僕の質問にわかりやすく頷いて肯定した。
「そう……大和家の現当主は彼女。 大和 礼。つまり、学は彼女から当主の座を奪われた」
「当主って、大和君の家の?」
「そう」
なんかこう……すごい家っぽいのはわかるのだが、それ以上が想像できない。
だがそう思っているのは僕だけのようで、全員からぎょっとした視線が向けられてしまった。
僕とはあまり話さないリオンさんすら信じられないと詰め寄ってきた。
「知らないの? 大和家を? マー君の家は日本の妖怪バスターの元締なのよ?」
「そうそう。私たちも小さなころ挨拶に行ったことがあってさ。しばらくお世話になったことがあるのよね」
「……わたしも」
「私は家にお邪魔する機会はなかったのですが、大和家のお話はよく耳にしますわよ。特に現当主の大和 礼さんは歴代最強と名高く、業界で知らない方はいないかと」
「……なんかごめんなさい」
女子全員から口々に言われたプレッシャーに負けてなんか謝ってしまった。
リオンさんは妖怪バスターなんて聞きなれない単語を出してきたが、僕にわかりやすくするための言い回しであるようだ。
シーラさんは礼先生に憧れていたことを思い出す。
そういえばちょくちょくそんな話も出ていた気がした。
人間以外の敵と戦う人たちの一番偉い人が大和君の家で早乙女さん、リオンさん、マリーベルさんは、子供の時から大和君の家と繋がりがあると。
直接繋がりがなかったシーラさんが知っているということはその名は広く海外まで轟いているほどということか。
「し、知らなかった……」
実際それはとんでもなくセレブなのではないだろうか?
ちょっと緊張してしまった自分に友として猛省である。
そして早乙女さんはしかし当主の座を取られた話も含めて首を捻っていた。
「私もその話は知ってるけど……なんか仲が悪いとは感じないのよね」
そんな言葉にシーラさんも頷く。
「それは私も感じます……どちらかと言えば厳しい中にも時折包みこむような優しさを感じるといいますか……ダメです! 違います!」
シーラさんはやたら具体的なことを言っていたが何を根拠に言っているのかはよくわからない。
「……見て」
その時マリーベルさんが鋭くささやき、全員が黙る。
彼女達の視線は、僕から一瞬で離れて今まさに演習場に出てきた大和君達に注がれていた。




