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「え?」
店長の提案に僕は意表を突かれる。
僕自身が大和君と戦うということを、今まであまり考えたことがなかったからだ。
大和君もそうだと思ったのだが、彼はなぜか真剣な表情で頷いていて、僕はぎょっとした。
「はい。俺も試合を頼もうと思っていたんです。最初に会った日から公平の力は俺の理想なんです!」
「大和君……?」
友人の、僕にはもったいないくらいの高評価に正直てれた。
どうやら僕はとても大きな期待をされているみたいである。
しかしどうしたものか? 僕はかなり戸惑っていた。
僕にとって戦いは敵とするものであって、決して友達とするべきものじゃない。
言ってしまえば、どうすればいいのかわからない。
僕は完全に答えに困って固まっていると、僕の代わりにこの話を止めたのは、新しい声だった。
「竜王寺校長……勝手に話を進めないでもらえないだろうか?」
彼女は駄菓子屋には似合わないスーツ姿で扉から入ってくる。
カッカッとヒールで歩いているのになお小柄な女の子は、ものすごく堂々と身の丈2メートルは超えていそうな店長におっかないほど鋭い視線を向けて意見した。
「やぁ。礼君じゃないか! 君がこんなところにやってくるなんて珍しいな!」
「ええ……不本意ですが。道楽で妙な施設を作るのはやめてもらいたいものですね」
やれやれと腕を組むスーツ姿の幼女は、大和 礼さん。
彼女は僕達の先生であり、ここにいる大和 学君のお姉さんでもある女傑である。
あまりにもいきなりなお姉さんの訪問に、大和君は面食らっていた。
「ね、姉さん、なんで?」
だが震える声の質問に帰ってきたのは、視線だけで頸動脈が切れそうな鋭すぎる眼光だった。
「……なんで? それは私がここに来たことか? それとも そこの山田君との戦闘行為を止めたことか?」
「と、止めたことの方だよ! なんで手合わせを止めるんだ!」
だが自分の提案を却下されたのが気に食わなかった大和君はひるみつつも言い返す。
確かにそこまで強制されるのもおかしな話だとは思ったが、礼先生の返答はにべもない。
「……簡単なことだ。お前では勝負にならない」
「なんで! やってみなくちゃわからないだろ! それにたとえ負けたって得るものは必ずあるはずだ!」
「ない。他の男子も危険極まりないが、その山田公平とだけは戦ってはいけない。私はお前が片っ端から稽古を頼んでいると聞いて止めに来たんだぞ」
「だからなんでだよ!」
さすがに黙っていられずに声を荒げる大和君は真剣である。
ただ……続く言葉にショックを受けたのはたぶん僕の方だった、
「山田公平と戦うということは、生き残るか死ぬかしかないからだ」
そんなことないですよ! ……自信はありませんけれども。
僕は一人そんなことないよ? 的に手を動かしていたが、別段誰も気に留めてくれなかった。
驚いている大和君も今は驚くことに忙しいみたいだった。
「……!」
「そうでしょう? 竜王寺校長? この子の戦闘能力は常軌を逸している」
そして、これまたひねりもないどストライクな指摘をされた。
店長はなぜかそっぽを向いてとぼけた。
「何を言うのかね? 戦闘の能力が突出しているのはこの学園にいる生徒すべてに言えることだよ。山田君だけが特別ではない」
「いいえ。貴方もわかっているのになぜ煽るような真似をするのです?」
「当然、生徒たちの成長を促すためだよ。それがすべてだ」
竜王寺先生は堂々と頷き、礼先生は厳しい目つきでそれを睨む。
どちらも態度こそ違うが一歩も引くつもりがないのが僕にも分かった。
とても殺伐とした雰囲気で、僕と大和君は当事者だったわけだが、話に加われる気がしなかった。
そしてもう一つ気になることがある。
そう……店長と礼先生の話も気になるが、それ以外のところからすさまじい視線を感じたのだ。
「……」
誰もかれもが美少女であるが、おそらく覗き見している真剣な顔の女の子達はいろんな意味で台無しだった。
上からリオンさん早乙女さんシーラさんマリーベルさん。
僕は駄菓子屋の入り口に並ぶ4つの頭が気になって仕方がなかった。




