78
「はい。これで採血は終わり、お疲れ様」
学園では定期的に検査はある。いつもの光景と言えばいつもの光景だった。
簡単な人間ドックのようなものだが、最近の小学校や中学校でも似たような検査は行われている。
ただし、クラスメイトが先生というのは中々にレアな体験である。
「……」
僕の前に座った薊さんは非常に手慣れた手つきで注射器に僕の血をしっかりと吸い上げていた。
そして採血ともなればずいぶん至近距離に彼女は座っているわけだ。
こんなに近くで見たこととはなかったが、薊さんは美人である。
それに同年代とは思えないほど大人びて見えた。
他のクラスメイト達のように珍しい髪の色というわけではないが、それでも真っ黒でつやのある髪は十分印象的だった。
「それにしても不思議だ。君が戦っている時はその肌は刀だって簡単に弾いてしまうのに、こうして注射器の針は簡単に通してしまう」
僕はあまりにじろじろ見すぎている自分に気が付いて慌てて姿勢を正した。
「ああうん……昔は弾いたこともあったけど、必要だと思ったらなんとなく大丈夫になったんだ」
「へぇ……なるほどな」
ああまずい、薊さんの目が点になってる。
ここは一つ話題を変えようと慌てて僕は言った。
「薊さんって……お医者さんもできるんだね」
「これでもそれなりに器用でね。君達の体調管理も私の大事な仕事だよ。君達のデータは私が有効に活用しているから安心してくれていい。まぁ人類の進歩のために貢献するのが私の夢だからね」
優しくそう言ってくれる薊さんはまさに白衣の天使だった。
それにしても本当に薊さんは何でもできる。
そのすべてが努力の成果というのだから、本当に尊敬することしかできない。
「本当に……夢のために頑張るってすごいと思うよ!」
僕のように、自分で何ができるのかもよくわからないふわふわしている人間には、とてもまぶしい。
なんというか背骨があってしっかりして見えるそんな感じである。
「そうだといいな。私には私にできることしかできない」
薊さんは全く変わらない笑みを浮かべたまま僕の言葉に相槌を打った。




